毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

映画1年締めくくり-良作映画10選

1.ヴィオレット-ある作家の肖像

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記事書いてました。良作です。フランス思想・文化・音楽好きな人にはわりとおすすめ

 

 

2.マジカル・ガール

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くっらい映画です・・・!が、よい。わりと耽美です。

 

 

3.リップヴァンヴィンクルの花嫁

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岩井監督の映画ですね。

結構主人公がアホというかまああまりおつむがよろしくない感じのイマドキ女性というていで出てくるんですけど、見続けていると感じ入るものがあってそして何よりCoccoが出ているっつうんで観てしまいましたよね。よかった。

 

 

4.氷の火花 山口小夜子

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たまに山口小夜子に似てるって言われたので気になって。ファッションというかモードが好きなので観てきました。

そして結構晩年はパフォーマンス系に傾倒していたと知って読書でも『肉体のアナーキズム』とか読んだりと、わりと思考に影響した気がします。

 

 

 

5.6.光のノスタルジア/真珠のボタン

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文化人類学言語学が好きな人におすすめ映画・・・

あとゲームだったらICOが好きな人にはぜひ。

 

 

7.或る終焉

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暗いけどよい。

全体的に静かな映画です。

 

 

8.ズートピア

ズートピアだけ実は感想ブログを書いていないんですけど、あれは自分は都市論の話として観ました。すごく楽しかったです・・・このサブカルっぽいラインの中にこれ突っ込むのちょっと恐縮ですけど。

 

9.リリーのすべて

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10.君の名は。

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結局『感想文を書きたくなる映画』についての紹介ページみたいになってしまった。すんませんすんません。

100冊読破 2周目(11-20)

1.蘇える変態(星野源) 

蘇える変態

蘇える変態

 

多芸な人やなあと思って気にかけてはいたのですがたまたま本屋に立ち寄ったらあったのでぱらぱらめくっていたらそのまま最後まで読んでしまった。

やっぱり終盤になって出てくる脳動脈瘤の破裂と再発・再手術のくだりが個人的にはいちばんこたえたのですが、それ以外にもこうやって創造的な仕事をしている人間の孤独というか葛藤というか色々垣間見ることができてよかったです。彼の死生観はわりと好きかもしれない。

 

 

2.行為と合理性(ジョン・R・サール)

行為と合理性 (ジャン・ニコ講義セレクション 3)

行為と合理性 (ジャン・ニコ講義セレクション 3)

 

 哲学のジャンルなのか論理学のジャンルなのかちょっとわかりにくいところがあるけれども真面目な本ではあった。結構面白いのが、合理的であるかどうかについてはそれそのものの倫理的観点は問われないというもので、つまり『いい』『悪い』という観点や『善』の定義を取っ払ったとき、AゆえにBであるという考え方は非常にシンプルで納得いくものなのですね。

いつも思っていたことではあるのですが、感情というものは決して合理性のないものではないなあと思わされたのでした。先に読んだ『情念・感情・顔』の続きみたいな本。

 

 

3.真理と実存(J-P.サルトル

真理と実存

真理と実存

 

サルトルいつ読んでもわかりにくいなと思いながら読みました。

とはいえ2冊目なのでまだ何もわからなくてまあ当たり前といえばそうなのかも知れないのですが、実存を扱っているとしていながら現象も入っているような気がする。かといって現象に対する知覚や認知というよりはどちらかというと表象の理解に関することがテーマっぽいなと思ったり思わなかったり。つまり読んだ後もまだよくわからないです。

ドゥルーズでもメルロ=ポンティでもないしなんというかサルトルの位置づけをまだつかみあぐねているような気がします

 

 

4.都市のエージェントはだれなのか(北山恒

都市のエージェントはだれなのか (TOTO建築叢書)

都市のエージェントはだれなのか (TOTO建築叢書)

 

多分この本だったと思うんですけど、後半にシェアハウスをしていながら共有スペースに出てくると他人の生活が見えるみたいな構想があって面白かったです。東京について考えたくて読んだのですが東京についての話は意外と出てこなかった・・・

 

 

5.なめらかな社会とその敵鈴木健

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

 

政治哲学系の本がぽろぽろ本棚に並んでいたので面白そう!と思って読みました。面白かったです。基本的には数学的な構造の設立についてなのでひじょうに実験的ですし実現可能性があるとしても色々難航しそうな事例ばっかりやったんですけど発想として本当に納得できるものばっかりで、なんにせよイノベーションってハード面とソフト面があるとしたらこれはわりとソフト面についての本でした。

攻殻機動隊とかPSYCO-PASSとか好きな人にめっちゃおすすめしたい。

 

 

 6.スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。-未来を思索するためにデザインができること(アンソニーダン

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること

 

悪い意味でタイトルだなと思って読んだのですが悪い意味で引っかかった内容でした。

私はあまりデザインの風呂敷を広げることが好きではないので本書もそういった意味でなんら実際的でないというか実用的でもないわりに思想として優れておらず悶々とした気持ちを抱えつつ読むことになりました。

 

 

 

 7.ポストモダンの50人-思想家からアーティスト、建築家まで(スチュアート・シム)

ポストモダンの50人 -思想家からアーティスト、建築家まで

ポストモダンの50人 -思想家からアーティスト、建築家まで

 

現代思想に至るに1900年代中盤くらいの思想について触れたかったので読みました。

デリダドゥルーズ&ガタリレム・コールハースウンベルト・エーコフーコー、サイードのあたりを読みたくて読んだのですが他にも惹かれるものは色々ありましたです。学問で区切るというより思想・風潮・時代背景で区切った方が面白いものが得られそう。が、通読するにはちょっとしんどかったです。勿論これを読んで興味をもった人もいたのですが

 

 

8.「聴く」ことの力―臨床哲学試論 

「聴く」ことの力―臨床哲学試論

「聴く」ことの力―臨床哲学試論

 

鷲田清一氏とても好きなので読みました。相変わらず文体としては平易なのですが、言葉にしづらくかゆいところを解消してくれる実に良い本です。

こればかりは、対人援助職におすすめしたい。

 

 

9.一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル(東浩紀

これの前に『なめらかな社会とその敵』を読んでしまったからかどうしても片手落ちに見えてしまった。そもそも自分はそんなにSNSそれそのものを歓迎していないので、こういう観点からのものの見方ってあまり得意ではないんですよね。

けど近代のメディアの在り方から大きく変容したことについて流れはわかりやすく書かれていますし、考え方の一端としては悪くなかったです。何より読みやすいのがいい。

 

 

10.シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ(ジャクリーヌ・シェニウー=ジャンドロン)

シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ

シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ

 

タイトルからして意味がわからなかったのですが内容もさっぱりわかりませんでした。そもそもこれ自体がシュルレアリスムに関する論文集という形式をとっているので余計に難しいのかもしれませんが。

ポストモダンの50人』みたいに、その時代におこったムーブメントを理解するのって難しいのでこういう本を時々流し読みすると大体そこに起こった事件や政治的な転換点と照らし合わせてなんとなく気運を理解することができるようになるんですよね。まあ理解したなんてまだ言えへんのですけど。シュルレアリスムという思想・芸術作品にそんなにたくさん触れたわけではないんですけど、ダリ展にいって面白かったんで読んでみたんです。

100冊読破 2周目(1-10)

1.こころの処方箋(河合隼雄) 

こころの処方箋 (新潮文庫)

こころの処方箋 (新潮文庫)

 

古本屋で買ってそのままになっていたもの。物事の捉え方、処理の仕方について色々書かれているけど、自己啓発系の本と違うところはそこに『こうすると、こうなる』という利益がないことだと思う。利益じゃなくて、そこに語られたりすることによる深い癒しのようなものがあって、この人の本を読むといつもとても安心する。

 

 

2.ことり(小川洋子

ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)

 

久々の小川洋子作品。今回もよかったです。

彼女の作品は、悲しいとか、愛おしいとか、切ないとか、それそのものの言葉で決して語られないし、涙も流さないし、大笑いもしない。でもそこに激しい情緒があって、読んでいる人の内側にあるものと共振する。

 

 

 

3.リノベーションプラス 拡張する建築家の職能(松村秀一、馬場正尊、大島芳彦)  

リノベーションプラス 拡張する建築家の職能

リノベーションプラス 拡張する建築家の職能

 

写真が豊富で建築の外装内装ともに大好きな自分にはカタログとしても楽しめるような本でした。

部屋・建物の内装とか、その提示・展示の仕方とかリノベーションというかデザインの効果の面白さという感じで読みましたです

 

 

 

4.デザインのデザイン(原研哉

デザインのデザイン

デザインのデザイン

 

無印良品の話がむっちゃ楽しかった。原研哉氏の本初めて読んだのですが、読みやすいのに書いてある内容はしっかりしていて本当に驚かされます。こうも易く、硬い話題を理解させられるものなんだなあと思って。

特に愛知万博のくだりは面白かったです。『誰のためのデザイン?』はノーマンの本ですが、副題をつけるなら『なんのためのデザイン?』という感じです。コミュニケーションデザインからプロダクトデザインまでを網羅的に扱っている本。おすすめ。

 

 

 

5.エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ(馬場正尊)

エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ

エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ

 

この人の本をいっときいくつか読んだのですが、これもなかなか血湧き肉踊る話でした。表現がおかしいか。でも興奮します。特に、地域再生のカテゴリにおいては。

偶然にも自分はこの本に出てくる福岡県の小倉と広島県尾道に行ったことがあるのですが、あれら地方都市の魅力は抗し難いものがあむて不思議に思ったものです。

特に尾道についてはちょうどそのリノベーションの結果である空き家を補修した家に宿泊したので余計に。地域の特性を読んで、文脈を崩さずにそこを集客力にするための具体的な実践の軌跡の本。おもしろいです。写真もいっぱいある。

 

 

 

6.PUBLIC DESIGN 新しい公共空間の作り方(馬場正尊) 

PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

  • 作者: 馬場正尊,Open A,木下斉,松本理寿輝,古田秘馬,小松真実,田中陽明,樋渡啓祐
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
 

これ結構好きでした。ただ実験的側面も大きいなーと思います。武雄市図書館のTSUTAYA導入とかも後の方に出てきます。

公共スペースの新しい使い方にあたって、どういう手法を使ってどういう役割の人間がいて…という、これも実践の軌跡を書いた本。構想から実現まで。

 

これよりはRE PUBLICという、先の100冊読破中に読んだ本の方が易しいかも知れません。

刺激的。

 

 

 

7.網状言論F改-ポストモダン・オタク・セクシュアリティ東浩紀) 

ものはためしにと思って読んだのですがものはためし程度でした。なんというか、場に居合わせなければ意味がない対話。後から読んでもちょっと興醒め感はありました。

そもそもオタク文化についての語り口がちょっと甘いかなあというところにオタクのセクシュアリティという接続不能なものを接続してしまっているので取り扱えないものについて語ってしまった感がある。読み物としてはまあ軽くてよいです。

 

 

8.情念・感情・顔 コミュニケーションのメタヒストリー(遠藤知己) 

情念・感情・顔 「コミュニケーション」のメタヒストリー

情念・感情・顔 「コミュニケーション」のメタヒストリー

 

予想外の中身でびっくりしながら読みました。最早読んだとはいえん。

『コミュニケーションに至る前夜』という感じです。中世におけるコミュニケーション論から始まるので宮廷論がどうこういう話から始まってもう完全に目が点になって300ページくらい放心状態で読んだのですが、後半300ページ余は美学や観相学によるものとその批判だったので少しは読めました。めっちゃ難しいです、未消化感半端ではない。

 

 

 

9.京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史(中川理)

京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史

京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史

 

気になる本は大体鹿島出版会

 

以下ツイート引用です

 

『京都 影の権力者たち』という本を以前読んだのですが、あれと併せて読みたい本でした。『京都と近代』自体は近代都市政策・建築・土木からのアプローチなんですが『影の権力者たち』は文化圏からのアプローチなんですよね。で、今回の本に関しては20世紀前半のことについてがメインなんですが、実際京都には洋風の建物っていっぱいあって、その多くがアールヌーヴォーの様式に則っているのです。モダンへのなめらかな移行がポスト・モダンへの入り口やったんかなという気もしますし。住んでいると今でも京都という都市の代謝を感じることができて気分がよいです

 

 

 

10.公共性の構造転換-市民社会の一カテゴリーについての探求(ユルゲン・ハーバーマス) 

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

 

公共空間のリノベーションとか読んでいて気になったので読みました。めちゃくちゃ真面目な本でした。中世の終わりから近代にかけての思想の転換、神学から倫理学への禅譲が最初に書かれていて、そもそも公共をかたちづくる大衆のあり様についても真面目に説明されていて実に良かったです。そんなに消化できとはいえんのですが、都市論における教科書的存在になりそう。

 

100冊読破の中から超絶コアなオススメ10選

すごく人に勧めたい、或いは自分はとても感銘を受けたけれども、とてもじゃないが万人にはオススメできない10選。

 

1.システムのレジリエンス さまざまな擾乱からの回復力(
情報・システム研究機構新領域融合センターシステムズ・レジリエンスプロジェクト)

 『レジリエンス』について考えていたときに検索したらひっかかって、なんとなく買ったのですが確実に求めていたレジリエンスとは違った。

ただ、めちゃくちゃ面白かったです。

副題にある「擾乱からの回復力」、とても自分にはこたえる話でした。いっぱいいっぱい(この場合組織なので予算や組織的な体力)で迎える災害・伝染病を含むあらゆるリスクには確かに脆弱にならざるをえない。じゃあ靭性・弾力のある組織ってなんだ?というとき、正直自分にとってドラッカーの『マネジメント』と同じくらい参考になった本です。そんなに高くないし、ぺらいですが内容は濃厚です。

新型インフルエンザ、3.11の話とかも出てくるのでご興味ある方はぜひ。

 

 

2.ブラックホールを見つけた男

ブラックホールを見つけた男

ブラックホールを見つけた男

 

ブラックホールの存在について天体物理学的に証明した(観測したのは別のひと)、インド人の研究者チャンドラセカールの伝記(?)です。

数学・物理学が全然できないので読めるかなあと心配ではあったんですが無理ではなかった。ただ全編通してめちゃくちゃ暗いというか業界のYAMIを垣間見るどころか全面に押し出されているので、研究室でイタい目に遭った人にはおすすめできません。 

 

 

 

3.知覚の現象学(モーリス・メルロ=ポンティ

知覚の現象学 〈改装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

知覚の現象学 〈改装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

 

フッサールの『現象学の理念』を読んでさっぱりわからなかったので読んでみました。

読んでみました、というにはあまりにも重い、あまりにも高い。重さ1kg、値段8000円・・・。

が、中に書いてあることは本当に素晴らしくて、まず近くに関する神経学的・生理的考察からはじまり皮膚感覚や五感に話は及びます。自分は、自分と同じ業種の人ならたぶんわかってもらえる話ばかり書かれていると思うんですが如何せん敷居が高すぎる。 

 

 

4.波紋と螺旋とフィボナッチ(近藤滋)

波紋と螺旋とフィボナッチ

波紋と螺旋とフィボナッチ

 

分子生物学の本です。ただめっちゃ読みやすい。

もともと違う研究をしていた著者が、魚や動物の「しま模様」の発現の規則性と変容について発見するという話。ブログに連載されていたものを書籍にまとめたものです。

アラン・チューリングとか寺田寅彦出てくるのに最終的に答えを授けてくれるのは大阪のおばちゃん・・・いや何を言っているのかわからないと思いますが、実際に熱帯魚を家で飼うことになるんですよね。たぶん今回挙げた本のなかで一番読みやすいと思います。そして面白い。科学とか数学が苦手な人にこそ読んでほしいです。

 

 

 

5.ジェントリフィケーションと報復都市(ニール・スミス)

ジェントリフィケーションと報復都市: 新たなる都市のフロンティア

ジェントリフィケーションと報復都市: 新たなる都市のフロンティア

 

これはほんっっっっっとうに誰にもオススメできないんですけど、自分の中ではとても大事な本です。 誰得っていうか俺得。

デザインだけでなくて社会そのものというか都市そのものについて印象を持ち始めていたので、とにかく都市論について読んでみたかったんです。TSUTAYAにあったものを図書館で借りました。買うと5000円くらいした気がする。

東京や京都という街を構成する要素を考えるにあたって何が必要かを得るためにこれを読んだのだけど、土地自体は1960-80年代にかけてのアメリカのごく一部地域についてなので想像するのは難しい。ただ、報復都市;都市はかつてみた繁栄の夢を見ること、ジェントリフィケーション;ある固定の階級による締め出し行為が起こること、についてはかなり考えることができる良書でした。実際東京でも、京都でも起こっていることだし。都市の新陳代謝については後述に紹介する本で。

 

 

 

6.正義論(ジョン・ロールズ

正義論

正義論

 

これも本としてはめちゃくちゃ分厚いです。本当に重かった。なんでこんなの読んだかな。多分ほかの哲学関係の、特に法律が出てくる本だと必ずロールズの名前が出てくるのでいっぺんいっとかなあかんかな、と思ったんですよ。

実際に読んで何がよかったかというと、社会制度というか法学に興味を持てたことかもしれません。もともとなかったわけではないのですが、難しさというか法における正義をあまり信じていなかったんですよね。功利主義的な人間なので、むしろどちらかというと経済活動にそれを見出していました。だからタイトルのこともあって『利己的な遺伝子』も読んだのですが。

ところがそれだけでは社会活動って説明がつかなくてやきもきしてしまって、社会契約説の中でも源流のわりにはロックとかよりは読みやすそうなこちらにしたのです。

オススメはできないけど、好きな本です。ロールズの真摯さというか、人間存在(とくに集団)における均等と平等がよくあらわされています。

 

 

 

7.インフォメーション-情報技術の人類史(ジェイムズ・グリック)

インフォメーション―情報技術の人類史

インフォメーション―情報技術の人類史

 

これはむしろ勢いあまって万人におすすめするところでした。

めっちゃ分厚いです。というかまず、話がアフリカのトークンドラムから始まるのめちゃ面白いです(トークンドラムは言語学的にも結構重要視されている)。言語学記号学・情報通信の分野に興味があったので読みました。まァ攻殻機動隊好きですから。

通信革命というか電気通信が始まる直前くらいの話もかなり面白いですし、大戦中の暗号機の発明・解読に関するやりとりはめっちゃ面白い。

ちょうど映画で『シチズンフォー』、本では『虐殺器官』を読む前後だったのでたいへん面白かったです。情報を制するものは世界を制す。

 

 

 

8.音楽する身体―“わたし”へと広がる響き(山田陽一)

音楽する身体―“わたし”へと広がる響き

音楽する身体―“わたし”へと広がる響き

 

オススメではないのですが自分の中で大事な一冊。

音楽を続けるにあたって、「なんで『自分が弾く』のか?」というのは常に問いとして自分の中にあるんですよね。楽しむだけなら、聴くだけのほうがよほど楽なのに。なぜ弦楽器を、ひとと弾くものを、ずっと続けるのか。勿論答えは昔から持っているんですけど、この本で裏付けしておいて、そしてそれ以上のこの本なかなか攻めたことまで述べているんですよ。まあ詳しくは中を読んだ人とだけ共有したい。あるいは飲み屋で語らいたい。

 

 

 

9.殺戮の世界史:人類が犯した100の大罪(マシュー・ホワイト

殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪

殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪

 

これもオススメできない本筆頭。本当はスティーヴン・ピンカーの『暴力の人類史』をお勧めできたらよかったのですが、残念ながらまだ下巻を読めていないのです。

『銃・病原菌・鉄』なんかを読んでいると、人類は本当に戦ってばかりなんですよね。敵意、害意、暴力、虐殺、殺戮、権力ってなんだ?っていう問いが自分の中にあるので、つまり平和的解決を望むとかそういうこと以前に「それはなんだ?なぜあるのか?どのように行われ、どのように頽廃したか?」ということを問いたいわけです。この本も、全編通して女性への暴力(つまり強姦)なんかも本当に悲惨なものがあえて「数」として定量化されているわけです。人権を語ったり人名を語るのであれば、それが蔑ろにされる様式についても知っておきたいなーと思って読みました。結構面白いです。ただ電車の中とかで読んでいたのでドン引きされていることうけあいです。そしてこれもとても分厚い。

 

 

 

10.RePUBLIC 公共空間のリノベーション(馬場正尊)

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

 

 ジャレド・ダイアモンドの『昨日までの世界』と迷ったのですが、あれは『正義論』と『殺戮の世界史』を足して二で割ったような部分がなきにしもあらずなのでこちらにしました。たぶん、10冊の中で2番目に読みやすく、そしてデザインに興味がある方ならもっとも読みやすい本だと思われます。

都市デザインに関する本です。が、結構まじめでエリアリノベーションに関して阻害因子になる法律・要素を図式化したりと読みやすくまとめられています。わたしゃアホなので視認性のいいものに弱いのです。

実際中に述べられているものは実に先進的で、この少子化時代に学校の一部を開放することで空間をシェアするとか、オフィス街の公園に店を出すとか、そういった都市におけるジェントリフィケーションの逆が行われていくわけですよ。それがとても面白いというか、再生するにしても再生の仕方は都市の性格に合わせて行われるべきだと思っているので読んでいて実に痛快なのです。これは日本の本なので、日本の都市で実際に行われたことが書かれています。

 

 

 

番外:裸性(ジョルジョ・アガンベン

裸性 (イタリア現代思想)

裸性 (イタリア現代思想)

 

これは・・・まあ・・・私のことをご存知の方ならばよくおわかりいただけると思うのですが、是が非でも読まねばならないと思って読みました。

実際自分がどうして身体パフォーマンスにこだわるのかよくわからないというか、むしろただのテロル的パフォーマンスは嫌いな方なのですが(嫌いすぎて『肉体のアナーキズム』とか読みました)、美学ってどこにあるんだろうと思って戸惑いがあったので。つまり実践先行型だったんですよね。

児童向けの哲学の本である『ソフィーの世界』を読んでいると、いちばんはじめの手紙が『あなたはだれ?』『世界はどこからきた?』から始まるのですが、この『あなたはだれ?』にこたえうるものが身体パフォーマンスなんだとなんとなく自分は思っています。

まあこのあたりの話は喋り出すともう一本記事が書けてしまうのでやめておきます。

ジョルジョ・アガンベンいいですよ!

次は『ホモ・サケル』という本を読もうと思っています。

 

 

 

というわけで、この本の羅列だけ見たらこいつの頭はどうかしているとしか思ってもらえなさそうですが、どちらかといえばどうかしていることにほとほと本人も困り果てているからこういう本を読みたくなるんです。

次の100冊もガンガン読むやで。

100冊読破の中からオススメ10選

これ選ぶの結構大変でした。

「なぜ読んだか」「どういう人におすすめか」「100冊読んだあとの自分にとってはどういうものか」というのも付け加えておこうかなと思います。なお読んだ順に1から並べるので、順位とかはありません。

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100冊読破(91-100)

1.現象学的心理学(アーネスト・キーン)

現象学的心理学

現象学的心理学

 

本当はダラン・レングドリッジの本を読むつもりだったんですが図書館になくてこっちを読みました。

知覚の現象学をより実際的に解釈した本、という感じ。子どもを前に出すとわかりやすいなと思いました。なぜ『今まで平気だったのに突然泣き出す』のか、そこで彼女の心の中に何が起こったか。解釈がどう作用するか。

心理学って統計的というか、まさに意識の表層である行動を問題としている感じがあったですが行動から心のふるまいを予測したのが本書かなという気がします なかなかよかったです。

 

 

2.氷河期以降(上)-紀元前2万年からはじまる人類史(スティーブン・ミズン)

氷河期以後 (上) -紀元前二万年からはじまる人類史-

氷河期以後 (上) -紀元前二万年からはじまる人類史-

 

土台がないのでめっちゃ難しく感じましたがこの本のよかったところはある人物を固定の主人公として据えることで身体感覚に訴える表現がなされていたことです。

学校の授業だと4大文明以前はほとんど語られないので、そもそも狩猟採集民族と農耕民族についての対比が少ないんですよね。宗教の発生についてなんかも書かれていてよろしかったです。まだ下巻があります

 

 

 

3.言葉と建築(エイドリアン・フォーティー)

言葉と建築

言葉と建築

 

人類学の本を読むと言語学的解釈がよく出てくるけどこの本はわりと真面目に身体性と構造物の表現の話をしていてよかったです。

建築物の解釈はほとんどその時期の社会や土地の解釈に繋がると思うんですけど、建築を語る言葉はその土地や時代の翻訳に近いんですよね。

パルテノン神殿における神性の表現とかケルン大聖堂の構造様式とかまあ確かにうんという感じ。けど『メディアとしてのコンクリート』を読んだからこそうなずける話であってこれだけ読んでもなかなか難しいものはあるかなと思いました。

 

 

4.新訳ベルクソン全集2 物質と記憶 身体と精神の関係についての試論(アンリ・ベルクソン

全集のうち1巻を借り損ねてしまったのですが、結局これが一番いいところらしくつまみ読みをすることになってしまいました。

以前に『物質と意識』というポール・チャーチランドの本を読んだのですがそれよりもむしろ読みやすかったです。これを読んだところで何をわかったといえるわけでもないのですが確かにドゥルーズスピノザに続いてベルクソンについて言及したのもわからないでもない、というか時代としてこのことを述べられるのがたぶんすごいんやろうなという感じ。

神経科学的な測定ができなかったときに心身二元論を離れるのって非常に難しい気がするんですが記憶というコンテンツを通すことで哲学を具象に落とし込む感覚です何をいっているかわからなくなってきたぞ

 

 

5.RePUBLIC 公共空間のリノベーション(馬場正尊)

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

 

何がよかったって書いてある内容はむちゃくちゃ難しいというか高度なこと書いてあるのに、デザイン性が非常に高くてシンプルなことです。たぶん文字だけにしたらものすごく難しく書けると思う。

法律と法律の隙間、モノとヒトの隙間、モノとモノの隙間、ヒトとヒトの隙間を埋めるための技術ってなかなかええもんですね。

 

 

6.トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト(トラフ建築設計事務所

トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト

トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト

 

 写真いっぱいで見ていて楽しいです!

中身については結構読んだとき自分は厳しい印象をいだきました 先に公共空間のリノベーションを読んでいたからかも知れませんが。アート性やメッセージ性のあるものは住みにくい。使いにくい。利用者を選ぶ。それは果たして『建築』といえるのかなー、というのはたまに思うんですよね。

本としてはめっちゃおもしろいです。

 

 

7.動きすぎてはいけない:ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学(千葉雅也)

動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学
 

もうちょっとやわめの本かと思いきやガチ哲学本でした(博論の加筆修正らしいです)。

ドゥルーズのバックグラウンド全く知らないままにドゥルーズ読んでいたので、こういう解釈本もええかなと思って読んでみました。

過剰接続について考えるきっかけになった本。耐えねば。

 

 

8.透層する建築(伊東豊雄) 

 

透層する建築

透層する建築

 

これの中で好きやったのは最後の方になって建築物と身体感覚についての章が出てきたあたりですかね。それまでは章立てして色んな建築に関する論考が並ぶんですけど建築の中に生身の人間がはいったとき、皮膚の感覚の延長として建築あるでって話が出てきたらなんか嬉しいですよね。

老人ホームのデザインとかはトラフのインサイドアウトでは出てこないであろう話ですしとても面白い。

 

 

 

9.反アート入門(椹木 野衣) 

反アート入門

反アート入門

 

 余談ですけどこの表紙について、たしか『デザインの骨格』かなにかで触れられていたような気がする。いや、デザインの骨格でなくて、『x-Design』だったかな・・・。

むかし読んだ本に『反社会学入門』というのがあるんですけど(パオロ・マッツァリーノ著)いずれも面白かった。クサいものに蓋をするというより自分はクサいものはとりあえず臭ってみる、即座にフレーメン反応するみたいな。

最後近くになって接続過剰、さきほどの『動きすぎてはいけない』で出てきたようなくだりがあるんですよね。アーティストたちの異様な界隈、といいますか。あつまり。私はそれが、『作品が人間自身を超えられない間に求める有機的なつながり』なのかなあと思ったんです。

ヒューマニズムに依拠した作品はなんであれチンケだと思っています。優れた作品を残す人間が人間として優れている必要は一切ない。勿論犯罪なんかは裁かれるべきですが。作品と人間とは切っても切れないものですが、いつしか人間個人の手を離れて作品が独り歩きをはじめたとき、人格がついてくるようでは作品として与格されないと思うのですよ。これ本の感想じゃないな。結構面白い本でした。アーティスト気取りの人にこそ読ませたいぞ。

 

 

10.人工地獄 現代アートと観客の政治学(クレア・ビショップ)

人工地獄 現代アートと観客の政治学

人工地獄 現代アートと観客の政治学

 

副題あまり読んでいなかったのでアートアートした本かな~~~~サブカルメンヘラが火を噴くで~~~~~って思って読んだらもんどりうってこけた感じがします。

近現代の、特に参与型作品(いわゆるパフォーマンスについて)政治的文脈を概説しながらその周縁について述べた文章。けっこう分厚いです。そして参考文献と脚注が本の1/5くらいある。リアル。

肉体的なパフォーマンスについては『肉体のアナーキズム』を読んでいたのですが、確かに時代背景を理解しないと特にパフォーマンスについてはその意味や位置づけがわからないんですよね。自分はあまり社会に訴えかける型のものが好きではないのですが、だからこそ読んだという感じです。装丁がきれいで、ずっと読もうと思って読めずにいたのでうれしい。

100冊読了記

4月から読んだ本が、100冊になった。

実は、100冊読破という試みは私が始めたものではない。Twitterをしていて、知り合いの知り合いがたまたまそんなことを話していて、「おっ面白そうだな」と思ったからやり始めた。確か、『読了に明確な期限は設けない』『いいと思った本を紹介しあえる』ことが前提で、それですごく気軽に始めたんだった。

特に期限を定めなかったから、何年かかることやらと思っていた。実際には1年とかからなかったのだけど。

 

本を読めないからはじめた

家族がわりとみな読書家で、自分はむしろ本を読まないほうだった。

というか、読めないのだった。勿論読むのが遅いというのもあるけど、気に入らない本はびたいち読みたくないというたちで、家にたくさん本はあるけれども年間10冊、多い時でも30冊を超えるか超えないかというくらいだった。ほとんど小説。浅田次郎とか、小川洋子とか、梨木果歩とか。ときどき国内外問わず純文学を読んだくらい。

 

それがあるときを境に、ほとんど小説を読まなくなった。

というより、小説を読むペースはそれほど変わらないけど、あまりにもたくさんのそれ以外の本を読むようになった。多分それがはじまったのが、専門学校に入りなおしたときくらいから。

 

好き嫌いせずに本を読むのは難しい。そして、今回読んだ100冊のうち内容がどれくらい理解できているかといえばわずか数パーセントに過ぎないと思う。哲学の類いを含むからだけれども、誰かが終生の研究対象にするような本をわずか数日で読むのだから、当たり前といえば当たり前だ。ただ、誰かがどこかでいっていたんだけれども「読書するといえるのは再読以降」いうのを自分は信じていて、初回の通読というのはいわば「出会い」に過ぎない。

だから、初回の印象や、「これにまつわるなにかにもっと出会いたい」みたいなふわっとした読書でいいのではないかなと思って肩肘はらずに読み始めたのが今回だった。

パラ読みよりはずっと読み込んだけれど、精読というにはあまりにも拙い。文字通り『通読』くらいの意味しか、それぞれの本には与えられていない。

 

ただ、無学な自分が学問と「とりあえず出会う」にはこれくらいしかしようがなかった。出会いが出会いを呼んでくれるのは、どの本を読んでいても思ったことだ。

 

 

 

なんとなく決めていた自分ルール

・自分が生業としている職業に関する専門書・雑誌は入れない

・過去に読んだ本も入れない

そういったわけで、「25歳の自分がインタラクトしたいと思ったもの」が基本に挙がる。図鑑も、必要に応じて入れた。雑誌は今後入れる可能性があるのかもしれないけれど、おそらく入れないと思う。

オススメの本は、また後程紹介したい。

けれど、読書体験が次の読書体験を欲しがるものなので、「これ一冊」というものはとても難しいのだ。「あれとこれとこれが気に入った人にはこれもオススメ」というのはできるけれども。

 

 

 

読書体験がもたらすもの

小説以外の読書体験は、読書しながら頭の中に対話がいつも飛び交っている。目で字面を追いながら自分の中に問いが立つ。問いに対する答えが返ってきて(それは目の前の文字からであったり自分自身からであったりするのだけど)、ひとりで本を読んでいるのに誰かと喋っているときのような充実感がある。

おそらく、25歳の自分はとても孤独だったのだと思う。

というか今までずっと孤独だったのではないだろうか。いやこれからも恐らく孤独は感じ続けることになるけれども、『感覚の孤独』がいつも自分を包んでいて、感覚が共有されないことに関してとても苦しいと思っている。

それが、読書の間は、文字を通して感覚のやりとりを行うことができる。それも、話し相手は毎回選ぶことができ、気に入った話し相手に関してはほかの著書を選ぶこともできる。生身の人間相手にこれができるだろうか?

読書体験はコミュニケーションとして贅沢なものだった。実に贅沢だった。

 

 

 

本との出会い方

実は本の半分以上は、自分で購入していない。この100冊読破をはじめたとき、これもルールのひとつとして「1か月に1万円まで、専門書でもなんでも好きな本を買っていい」というものを定めた。というか、1か月1万円本をはじめたついでに100冊読破をはじめたのだ。

けれど、気になる本を購入すると1万円はすぐに突破してしまうことに気が付いた。実際、メルロ=ポンティの『知覚の現象学』なんか8000円するし、買おうものならほかの本が買えなくなってしまうのだ。

というわけで、大学図書館をはじめとする近隣の図書館、スターバックス併設のTSUTAYAで本を眺めて、気になるものを手に取るというのを繰り返した。ちなみにスターバックスでコーヒーを飲んでいる間に未購入にしろ購入済みにしろTSUTAYAの本を読んでいいようだ。まんまと戦略にハマっているけど、家で本を読むのが苦手だったのでそれでも構わなかった。おかげで、近場のスターバックスの店員さんほぼ全員に顔を覚えられ、「いつもありがとうございます」とか、髪を切るたびに「よくお似合いですね」と声をかけられるなど、大変恥ずかしい思いをした。

 

 

 

100冊読破を始める前と後で変わったこと

最後なので好き勝手書いておきたい。以降に関しては自分自身の感覚だから、100冊読破をしたらこれが得られるとは絶対に保証しない。ふつう、100冊読んだところで共有できるものは謎の達成感と共に時間が過ぎたことの自覚だけだ。

 

自分は頭がよくない。

本を読んでいても内容をそれほど理解していない点において、これは自明だと思う。勿論読んだ本について検討する機会がないからというのもあるけれど、100冊程度読んだところではこれはまったく変わらなかった。

 

では変わったこととはなんだろう。

変わったというか、取り戻したものがある。それは空想だ。

空想することを、いっとき自分に禁じていたように思う。夢想したり空想することは、現実的でなく、実現可能性のあることしか考えてはいけないと自分に強いていた。逃げることを許さなかった。そんなことをするのは、夢想のすえに計画することが大抵荒唐無稽だからで、なおかつその計画の頓挫に苦しんだ過去があるからなのだけども。

考えることは自由だ。計画するしないにかかわらず、もっといろんなものを関わりたいと願うことも自由だ。自分の専門領域をある程度確立することで、そこを中心として探索行動を行うのは幼児の行動範囲の拡大にも似ている。怖くなったり、離れすぎたと思ったら、また中心に帰ってこればいい。

というわけで、多分100冊読破を始める前にはそこまで興味をもっていなかった構造物について(写真を撮るのは好きだったけど)もっと好きになったし、音楽や身体知覚についても少し言語化できるようになった。言語化するのはいい。言葉にもできず体の中に鬱滞すると、それ自体が悩みや不安の原因になる。

 

もうひとつ、取り戻しかけているものがある。それは怒り。

怒りは恐らく自分がずっともっているのに抑圧しているもので、抑圧してきたがゆえにたくさんのものを失ってきた。失ってなお、抑圧せざるを得ず、今も自分が感じているたくさんの怒りをきちんと処理できない。

それを、ひとつひとつの本の感情のない様々なシーンで、様々な文脈の違う言葉で語られることで、不満と怒りについて感情を伴わずに説明できるようになった気がする。それは怒りを正確にとらえているとは決していえないだろうけど、元に戻ることが正常とは限らないように、いちど怒りを壊してしまったら違う形で与え直すしかないのかも知れない。

結局は読書体験を通して、自分は自分と向き合い続けているだけなんだろう。

 

 

2週目を迎えるにあたって

1年を俟たずに1週目を終えてしまったので、2週目を迎えるにも自分はまだ25歳のままだ。ただ、色々負担の多かった社会人2年目に100冊読破をやろうと思えたのは結構自分にとってはメリットだったんじゃないか。このままどんどんやっていこう。30歳までに1000冊読めたら楽しいかもしれない。

そんな抱負はごく限られた個人史の文脈でしかないし、これ以上気負うつもりもないのだけど、まあ、100冊読破はいいぞ。少なくとも、悪くはない。

 

101冊目をはやく読みたい。