毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

100冊読破 7週目(81-90)

1.ルポ 貧困大国アメリカ(堤未果

結構昔の本なので、今どうなってんのかなとは思います。今も貧困エリアだと給食の内容がめちゃくちゃお粗末みたいなのは聞いたことあるんですが。

そう思うとやっぱ日本の給食すごい恵まれてますね…

あとは社会インフラ削るとどんなことが起こったよ、みたいな反省と、貧困層がいかにして軍隊にリクルートされていくかというプロセスが端的に書かれていてわかりやすいです。

軍に入れば大学に行く資金を担保してくれるとか、なんだか日本でもそのうち起こりそうな話ですけれどね。

 

 

 

2.敗者が変えた世界史(上: ハンニバルからクレオパトラジャンヌ・ダルク)(ジャン=クリストフ・ビュイッソン エマニュエル・エシュト)

ハンニバルの敗戦のあとの転地転戦面白かったです。あとアステカの滅亡で王様がまあまあ愚かな選択をし続けてしまったというくだりも、「凡人が国を背負うこと」の重みがよくわかる一例といいますか。下巻は未読です。

 

 

 

3.「きめ方」の論理——社会的決定理論への正体(佐伯胖

ずっと前からKindle積読していた本。多分合意形成理論読書会くらいからです。アローの不可能性定理から、そのほか意思決定理論の紹介と厚生経済学と正義論のまとめ。

数弱は各理論にある程度背景知識ないと詰みます。私も例によって例の如く詰んだわけですが、背景になる議論や展開を知っているので読まんでも知ってたなみたいなのがちらほら。

もちろん丁寧に解説はされていますが、式読んであーなるほどこういう優先順位ねと納得するのを各章やり通してたらこれ1冊で大学の講義2単位分くらいになりそうです。

元の本は30年前に作られたそうで、褪せない名著。索引がちゃんとついていていいなと思いました。文庫には珍しいですが、ちくま学芸ならふつうかも。

 

 

 

4.サルトル実存主義とは何か』(海老坂武)

サルトルの思想をなぞると共に、どういう社会状況や個人的な生活の中でそれを書いていたのかといった背景の解説も同じくらい紙幅が割かれていたのが理解のためによかったのではないかと思います。

教科書よりももっととっつきやすいのが魅力ですね。

 

 

5.ハイデガー 世界内存在を生きる(高井ゆと里)

実存主義」と呼ばれる思想の礎をつくった(本人が名づけたわけではないのがミソ)といわれているハイデガーの解説本。

難解な『存在と時間』の解釈は微に入り細に入り学術的立場があろうかと思いますが、本書はあくまで哲学そのものを専門として学習する人ではなくむしろそのような思想に興味をもつ一般人向けに開かれています。

初読ではそれでもまだ難しく感じるかもしれませんが、後半にいくにつれ解釈が「ひと」についてに寄っていくのでむしろ身近に感じられると思います。

 

 

 

6.「やりがいのある仕事」という幻想(森博嗣

相変わらずこの「身も蓋もない」感じがめっちゃ好き。森博嗣の新書はこれだからやめられねえ。

日銭を稼ぐための仕事に変に入れ上げて燃え尽きんなよ、っていう隠れたメッセージもあって良いなと思います。新年度も始まりましたし是非新社会人の皆様に。

 

 

 

7.ケアの倫理(森村修)

ケアの倫理

ケアの倫理

Amazon

欲しいものリストからいただいていた積ん読

 

身近なところから学ぶケアの倫理、という感じです。最初の方は具体例、「悲しむ」とはどういうことか?みたいなケースワークから始まります。学生向けだけど、倫理全般知らない!でも医療や福祉関連で学ぶ必要があって…という方にとってはかなり手にとっていただきやすい本かも。初版が古いので時事ネタはやや色褪せていますが、内容は褪せることはないので十分今でも入門書として通じると思います。

コールバーグに対するギリガンの反論も丁寧ですし、ケアの倫理が抱える理論的問題点にも触れられています。

最終的に、「ケアする人のセルフケアという倫理」にも触れられていたのが個人的にはとてもよかったです。

 

 

8.アーバン・スタディーズ――都市論の臨界点(田中純他)

7年くらい積ん読していた本。多分ジャケ買いというかタイトル買い。そもそも1990年代の雑誌を古本でわざわざ買った過去の自分、いったいなんなんだ。これに関しては都市論というより深掘りしすぎて記号論とかそういう話が出てきてぶっちゃけあんまり面白くないです(その時代の人が小難しいことを考えて投稿していたという事実は面白い)。

 

9. 東京新論(内田隆三他)

タイトル買い積ん読シリーズ2。こちらは東京にテーマを絞ってます。森山大道の写真が良い。

 

10.10+1 都市プロジェクト・スタディ中谷礼仁

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これも上2冊と同様の積ん読だけれど、7年も経ってからまさか今住んでいる場所の街並みや都市計画を論じた箇所があると思わなんだ。

個人的にはつくば学園都市の事情と特殊性が面白かったです。それでも20年前の特集なので、今はどうなっていることでしょうね。答え合わせができますが内情は知らず。

 

おわりに

前回からまた4ヶ月以上が経過しました。長くかかりました。

前回から今回までにあったことといえば、第二子を妊娠したことで、つわりを乗り越えて今は6ヶ月の半ばです。あとは学会発表をしたくらいか。あ、4月1日の記事ですが嘘ではありません。

 

次の10冊が終わると700冊で、すでに前回の100冊区切りから4年近くが経過しているわけですが、その間に1人目の妊娠出産と2人目の妊娠を迎えて院進と修了を挟んだことを思うと人生のイベントがてんこ盛りだったことがよくわかります。

未だに満足のいく学術的成果などは出せていないのですが、その裏でまたひっそり読書の蓄えは弛まず続けていけたら良いなと思ってはいます。思っているだけですがね。

 

能動的な趣味は維持できていないけれど、読書が維持できていればまあ大体自分は生きていけるのだなとしみじみ実感しています。次は出産までに10冊読めたら御の字ですが、自宅の積読はどれもヘビーなものばかり残っていて消化できる気がしません。ぼちぼちやっていくしかないのでしょう。

*1:10+1 No.7/ LIXIL出版

*2:10+1 No.7/ LIXIL出版

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*7:10+1 No.30/ LIXIL出版

*8:10+1 No.30/ LIXIL出版

*9:10+1 No.30/ LIXIL出版