毒素感傷文

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君の名は。映画感想

かくも有名となってしまった新海誠最新作品、『君の名は。』を観てきました。

ストーリーについてやメインキャラクターについてはほとんど触れないようにしようと思います。自分はそもそもあまり新海誠作品の、ストーリーやキャラクターには興味がなく、結構辛辣なコメントをしそうになってしまうことがよくあるのです。なのでそのあたりには一切触れないでいることにします(褒めたつもりで褒めていなかったら申し訳ないし)

 

折角ですから、もう観た人とまだ観ていない人と、劇場の臨場感を共有したいなと思いまして。

 

 

 

1.カメラワーク

ここはオタクらしく語っていこうかと思います。自分もカメラを持つものの端くれ、カメラの撮影視点はよく意識します。

そして君の名は。のカメラワークは、とてもよかった。限りなく映画に近づけてあったと思います。それも、動画としての映画、静画としての写真にも。実写に近い、『実撮影』に限りなく近い作品にしたかったのかなという意志を感じました。

 

シーンで分かりやすいのは、神社での舞のシーン。カメラがぐるりを取り巻く、それもスピードに緩急をつけるのは結構最近の撮影技法やと思います。手持ちカメラではできない技術ですね。

あとはタイムラプス。定点撮影で時間経過、四季の移ろいを示すのは実写映画ではよくあることですが、そのまま使っていました。アニメーター殺しですね。

 

 

 

2.実写に近いけど実写ではない都市

都市の美しさは凄まじいというか妄執すら感じる勢いでした。写真でも動画でもないのに、それを明らかに意識した絵の数々。かの攻殻機動隊をアニメ化したproduction I.G.が作画ときいて、あれも原画展は素晴らしかったなあと思い出しました(オタクめ)

 

新宿の都市としての美しさを描くのに、新海誠は本当に秀でているなあと思います。鳥瞰、俯瞰、接写(そういえば作画の中で遠景の玉ボケなんかも作っていました)、どんな視点からみてもあの都市が美しく、魅力的に見えるようにできているなと。工事中の三角コーンの煌めきひとつにも、都市としてのごみごみした乱雑な様子を愛おしく思っているように見えました。

 

 

まあ全部私がそれなりに東京という都市圏を気に入っているがゆえでしょうけれど。

 

 

3.総合芸術としての音楽

RAD別に好きとちゃうし、大音量で流す意味もそんなあるかなあという感じはあったんですが、途中でなんとなく観る意図が変わってきました。

あの映画、結構セリフ少ない気がするんですよね。いや、秒速5センチメートルとか言の葉の庭はもっと少ないのかも知れませんけど。コミュニケーションをとる場面と、そうでなくひとりでいる場面がはっきりわかれています。そしてそのひとりの場面には、大抵歌が流れている。そして本当に大切なシーンはひとりの時に訪れる。決意も、諦念も、驚きも全部。

 

舞台芸術では、ひとりのときの心境は『心の声』としてセリフをいうしかありません。それが、君の名は。にはありませんでした。心情は、顔か、独り言としてのつぶやきしかない。本当に思っている心のうちは、本人しかわからない。でも音楽は流れる。恐らくその場に適したものが。

これはよく考えたら『秒速5センチメートル』にはなかったことのような気がします。わたくしあまりあの作品が好きになれなかったのですが(絵の綺麗さは実によかったです)、それはほとんどが主人公の独白しかなく、そして勝手な思い込みで結論まで出してしまうからなんですけど、それが君の名は。にはなかったんですよね。ちゃんとコミュニケーションを取るんですよ。

 

そういうわけで、音楽はただのBGMではなくむしろセリフの一部、なんならミュージカルの要素が含まれていたのではないかとさえ思います

 

というわけでまともな映画感想からはちょっと外れますがメモ書きでした。忘れてしまわないうちに。