途中からネタバレを含みますがそれまではちゃんと紹介します。
映画『マジカル・ガール』公式サイト -- Introduction --
うんまぁ・・・配給会社bitters endって時点で大体わかりますね。
暗いです。とっても。
というかスペイン映画基本的に報われないものが多い気がします...少なくとも私がほかに観た『マルティナは海』『蝶の舌』はどちらもそうでしたね。
そして社会派というか、お金が絡むお話が多い印象があります。
紹介文なんかは公式イントロダクションをお読みいただくとして、私からはこのあふれ出るスペイン風味のどこが魅力かを是非お伝えしていきたい。
大丈夫です、ネタバレはまだです。
①音楽がよい
フラメンコギターは好きかァーーー!!!ってくらい入ってます。
途中で、ラジオからバッハの無伴奏チェロ組曲第一番プレリュードのギター演奏が流れてくるシーンがあったり。あとは音楽を聴きながら悲嘆に暮れるシーンがあるのですけど、そこもスペインの暗い情熱みたいなものを感じて好きです。
あとアニメ曲の『春はさらさら』の歌謡曲感もたまらん。エンドロールまで最高でしたがそこまでくるとネタバレか。まあいいや。
②日本のサブカルとスペインの文化の親和性、まあまあないで。あるか?
映画館情報では、監督ご本人が日本大好きで1年のうち4ヶ月は東京に滞在されるのだとか。
アニメの設定もどことなくありがちというか世相を反映しているんですよね。昔、コスチュームなんてたぶん日本円で1万円も出せば買えたろうに、今はそもそもサブカルチャー全体がめちゃくちゃお金をかける層によって随分価値を引き延ばされた気がします。それだけ制作側も手間とお金をかけるようになったのでしょうけれども。
日本人の目で見る、①のような文化に溶け込むサブカルチャーは物凄く違和感あります。ただその違和感はむしろ感じてもらいたいものでもあると思うのですよね。
違和感はあるけれどもナンセンスではない。
あと決定的だった発言が(原文ママではありませんが)『北欧は理性で物事を決めるが、我々は激情(本能だったかな)に理性が勝てないことを知っている。常に鬩ぎあいだ』みたいなことをいうシーン。
なんとなく、文化というか文脈の違いを感じてよかったですねえ。
▼ここからネタバレトーク
ここからはネタバレというか、映画を既に観られた方と話を共有したい一心で書いておりますご容赦ください。
トカゲ部屋ね、あれなんですかね?最高ですね。
いやもートカゲ部屋に入る前も後も、なんなら映画終わった後もずっと考えてました。
演出もよいですよね。
初回はいた助手がいないのは、紙に書かれている内容をそもそも覚える必要がないから。訊く相手もいないから。
ソコ氏が結局何者なのかもわからず、ソコ氏については誰もふれず、トカゲ部屋についても誰も触れない。終わった後も。
そこで何が行われたかが一切語られないのは、チープかも知れないけれどもいいですよね。
ほんで、つい考えてしまうんですよ。
帰ってきたときに座位はとれている(意識はある)、しかし運ばれてきたときに頸椎カラーはしている。手はきれい。袖口は汚れている。顔は髪で見えないが、めくったときに一目で彼が重傷と救急隊に連絡を入れる程度のなにか(皮膚症状?)がある。
いやまあ重傷感出すためにぐるぐる巻いているだけなんでしょうけど....
服は着られるし火傷ではない。輸液もされておらず体液減少ではない...
なんとなく何かの薬物中毒を連想させる感じですな。
で、あの言葉がちらっと蘇るのです。『本能と理性の鬩ぎあいに打ち克てば怪我をすることはない』みたいなの。
そして、普通のお部屋(それでさえ普通に行われていたことがなんなのかは結局明らかにされない)では無傷で帰ってきた。
なんとなくバルバラの元の職業が高級娼婦であることは想像つくんですが、トカゲ部屋は結局一種の拷問部屋みたいなものなんですかね。
普通だと、キーワードを覚えていればやめられるが、やめられなかった場合はソコの満足がいくまでということになると。
しかし2万ユーロ、つまり300万円弱であの重傷、代償が大きすぎやしませんか。
いやちょっとね考えたかっただけなんですよ。
あとダミアンの出発シーンめちゃくちゃ格好良かったですね・・・・!
勿論ルイスがアリシアのために、生活費にしようかどうか悩んでた本をいきなり全部担いでいくシーンもなかなかよかったです。
物語全体は、『だって最初から持ってないから』という言葉に縛られて最初から最後まで終わりますが、私には『本能と理性』『文学(ルイス)と数学(ダミアン)』の戦いに見えました、なんとなく。
そして勝利したのは『本能』そして『数学』に見えるんですよねぇ・・・
楽しかったです。めっっっちゃ暗すぎて終演後に変な笑いが出そうになるくらいには。