1.現象学的心理学(アーネスト・キーン)
本当はダラン・レングドリッジの本を読むつもりだったんですが図書館になくてこっちを読みました。
知覚の現象学をより実際的に解釈した本、という感じ。子どもを前に出すとわかりやすいなと思いました。なぜ『今まで平気だったのに突然泣き出す』のか、そこで彼女の心の中に何が起こったか。解釈がどう作用するか。
心理学って統計的というか、まさに意識の表層である行動を問題としている感じがあったですが行動から心のふるまいを予測したのが本書かなという気がします なかなかよかったです。
2.氷河期以降(上)-紀元前2万年からはじまる人類史(スティーブン・ミズン)
土台がないのでめっちゃ難しく感じましたがこの本のよかったところはある人物を固定の主人公として据えることで身体感覚に訴える表現がなされていたことです。
学校の授業だと4大文明以前はほとんど語られないので、そもそも狩猟採集民族と農耕民族についての対比が少ないんですよね。宗教の発生についてなんかも書かれていてよろしかったです。まだ下巻があります
3.言葉と建築(エイドリアン・フォーティー)
人類学の本を読むと言語学的解釈がよく出てくるけどこの本はわりと真面目に身体性と構造物の表現の話をしていてよかったです。
建築物の解釈はほとんどその時期の社会や土地の解釈に繋がると思うんですけど、建築を語る言葉はその土地や時代の翻訳に近いんですよね。
パルテノン神殿における神性の表現とかケルン大聖堂の構造様式とかまあ確かにうんという感じ。けど『メディアとしてのコンクリート』を読んだからこそうなずける話であってこれだけ読んでもなかなか難しいものはあるかなと思いました。
4.新訳ベルクソン全集2 物質と記憶 身体と精神の関係についての試論(アンリ・ベルクソン)
新訳ベルクソン全集2 物質と記憶 身体と精神の関係についての試論
- 作者: アンリ・ベルクソン
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2014/10/30
- メディア: Kindle版
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全集のうち1巻を借り損ねてしまったのですが、結局これが一番いいところらしくつまみ読みをすることになってしまいました。
以前に『物質と意識』というポール・チャーチランドの本を読んだのですがそれよりもむしろ読みやすかったです。これを読んだところで何をわかったといえるわけでもないのですが確かにドゥルーズがスピノザに続いてベルクソンについて言及したのもわからないでもない、というか時代としてこのことを述べられるのがたぶんすごいんやろうなという感じ。
神経科学的な測定ができなかったときに心身二元論を離れるのって非常に難しい気がするんですが記憶というコンテンツを通すことで哲学を具象に落とし込む感覚です何をいっているかわからなくなってきたぞ
5.RePUBLIC 公共空間のリノベーション(馬場正尊)
何がよかったって書いてある内容はむちゃくちゃ難しいというか高度なこと書いてあるのに、デザイン性が非常に高くてシンプルなことです。たぶん文字だけにしたらものすごく難しく書けると思う。
法律と法律の隙間、モノとヒトの隙間、モノとモノの隙間、ヒトとヒトの隙間を埋めるための技術ってなかなかええもんですね。
6.トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト(トラフ建築設計事務所)
写真いっぱいで見ていて楽しいです!
中身については結構読んだとき自分は厳しい印象をいだきました 先に公共空間のリノベーションを読んでいたからかも知れませんが。アート性やメッセージ性のあるものは住みにくい。使いにくい。利用者を選ぶ。それは果たして『建築』といえるのかなー、というのはたまに思うんですよね。
本としてはめっちゃおもしろいです。
7.動きすぎてはいけない:ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学(千葉雅也)
もうちょっとやわめの本かと思いきやガチ哲学本でした(博論の加筆修正らしいです)。
ドゥルーズのバックグラウンド全く知らないままにドゥルーズ読んでいたので、こういう解釈本もええかなと思って読んでみました。
過剰接続について考えるきっかけになった本。耐えねば。
8.透層する建築(伊東豊雄)
これの中で好きやったのは最後の方になって建築物と身体感覚についての章が出てきたあたりですかね。それまでは章立てして色んな建築に関する論考が並ぶんですけど建築の中に生身の人間がはいったとき、皮膚の感覚の延長として建築あるでって話が出てきたらなんか嬉しいですよね。
老人ホームのデザインとかはトラフのインサイドアウトでは出てこないであろう話ですしとても面白い。
9.反アート入門(椹木 野衣)
余談ですけどこの表紙について、たしか『デザインの骨格』かなにかで触れられていたような気がする。いや、デザインの骨格でなくて、『x-Design』だったかな・・・。
むかし読んだ本に『反社会学入門』というのがあるんですけど(パオロ・マッツァリーノ著)いずれも面白かった。クサいものに蓋をするというより自分はクサいものはとりあえず臭ってみる、即座にフレーメン反応するみたいな。
最後近くになって接続過剰、さきほどの『動きすぎてはいけない』で出てきたようなくだりがあるんですよね。アーティストたちの異様な界隈、といいますか。あつまり。私はそれが、『作品が人間自身を超えられない間に求める有機的なつながり』なのかなあと思ったんです。
ヒューマニズムに依拠した作品はなんであれチンケだと思っています。優れた作品を残す人間が人間として優れている必要は一切ない。勿論犯罪なんかは裁かれるべきですが。作品と人間とは切っても切れないものですが、いつしか人間個人の手を離れて作品が独り歩きをはじめたとき、人格がついてくるようでは作品として与格されないと思うのですよ。これ本の感想じゃないな。結構面白い本でした。アーティスト気取りの人にこそ読ませたいぞ。
10.人工地獄 現代アートと観客の政治学(クレア・ビショップ)
副題あまり読んでいなかったのでアートアートした本かな~~~~サブカルメンヘラが火を噴くで~~~~~って思って読んだらもんどりうってこけた感じがします。
近現代の、特に参与型作品(いわゆるパフォーマンスについて)政治的文脈を概説しながらその周縁について述べた文章。けっこう分厚いです。そして参考文献と脚注が本の1/5くらいある。リアル。
肉体的なパフォーマンスについては『肉体のアナーキズム』を読んでいたのですが、確かに時代背景を理解しないと特にパフォーマンスについてはその意味や位置づけがわからないんですよね。自分はあまり社会に訴えかける型のものが好きではないのですが、だからこそ読んだという感じです。装丁がきれいで、ずっと読もうと思って読めずにいたのでうれしい。