毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

【最終回まとめ】放送大学大学院修士全科生生活Vol.12

口頭試問が終わりました(お疲れ様でした)。

試問が終わったことに関して特に何か改めて書くことがあるわけではないのですが、たまに人から訊かれることのあった就労と院生生活のバランスについて2年間のまとめを書いておこうと思います。

私はM0(大学院入学前)の時点でフルタイム就労ではなかったのであまり参考にはならないかもしれませんが、考慮いただく際のケースのひとつになれれば幸いです。

 

 

総論: 放送大大学院のメリットとデメリット

……とはいえ私は他の大学院に行ったことがないのでわからない部分がたくさんあります、ごめんなさい。人からの見聞で補っております。

 

メリット① 学費が安い

2年間で最低の単位数を取得した場合、総額50万円弱の支払いで卒業できます。

 

学費について
大学院修士課程を修了したい方[修士の学位を取得] | 放送大学 - BSテレビ・ラジオで学ぶ通信制大学

多くの国公立・私大大学院がこの2倍、3倍以上の学費を要求することを思うと非常に良心的な価格だといえると思います。その代わりに1/2、1/3の指導しか得られないのだ!ということもないと思います(研究室によるのでなんともいえませんが)。

 

メリット② 通信制である

放送大の院である時点で自明ですが、学部と同様通学がありません。科目を履修する場合は試験を受けることがありますので、現在の感染症流行の特別な状況でなければ各学習センターでの期末試験だけはあります。

なのでフルタイムの就労や介護のかたわら履修をするにはうってつけの環境です。

 

メリット③ 時間の縛りがない

科目履修も好きなタイミングでできるので、固定の拘束時間がありません。もちろん通学時間も不要です。また、全科履修生として院試を受けて入学するまでに必要科目を履修することができるので、「入学したあとはほぼ研究だけやって修了」ということも可能です。実際フルタイム就労の方はこの方法を選択されることも多いようです。

 

入るゼミにも研究内容にもよるので指導がどうであるかは一括りにいえないところがありますが、放送大の大学院が他の普通の大学院より決定的に劣るとするような点はあまりないような気がします。

 

が、デメリットもなくはないのでまとめていこうと思います。

 

 

デメリット① 研究環境が貧弱

これは研究室によって差があるとは思いますが、まず大学施設としての規模が小さいため図書やジャーナル契約が少ないです。特に図書に関しては地方の大きめの公共図書館にも劣る蔵書数です。新しい本も中々入りません。

千葉の本学からの図書自宅配送サービスがあるので、借りたい本が決まっているときにはポチるだけで本が家まで送られてくるので多少便利です(料金は自己負担ですが)。

 

また、実験を行うタイプの研究ですと研究室に問い合わせてみないと設備があるのかどうかもわかりません。

 

 

デメリット② 孤独

言うまでもないことですが基本的に院生は孤独です。学部生も孤独ですが。なので、通常の大学院の研究室のようになんでもないときに集まってワイワイ話すなどというコミュニケーションはまったく発生しません。この2年間は感染症のせいもあってどの研究室もそのような様相だったかもしれませんが…。

1人でやるほうが性に合うという人もいますし実際私もそうでしたが、これが普通の通学制の大学院ならまったく違ったのだろうなあとも思います。

 

デメリット③ 研究フィールドは自分で確保

これは一般の大学院ならばどうにかなるという話ではないかもしれませんが、大学附属の設備や施設が存在しない以上、フィールドワークなどをやりたい場合は自分で確保しなければなりません。就労先で確保する人が多い印象を受けますが、中には地域の組織に声をかけるなどして対象を確保している方もおられました(すごい)。とはいえこれも通常の大学院でもあることかもしれませんね。

 

 

 

続いて個人的なことについて書いていきます。

就学・就労状況

M0〜M2にかけて、就労は8時間換算週1~週3くらいでした。たまたま経済的に伴侶の扶養の範囲内くらいがちょうどよかったのでセーブしていたのもありますが、結果的にはこれくらいの負担で助かっています。

 

M0(院試年度、2019) 学部選科履修生+後期だけ修士科目生

就労

前年度いっぱいでフルタイム病棟は退職。翌4月から、週2.5日で半日のクリニック外来非常勤(15時~20時くらい)開始。

就学

前期:学部の授業9科目+学部再試2科目

後期:学部の授業7科目+学部再試2科目+学部面接授業1科目+修士オンライン授業3科目

その他

申請のための単位が揃ったので、前年度の3月ごろ看護学士取得のためのレポート作成+筆記試験を受験して合格→学士(看護)。前年度放送大の学部を卒業していたので学士(教養)と2つになりました。

また、2019年度に全ての単位を取り終えたので認定心理士も申請できることになり、審査申請。2020年度に認定心理士取得。

 

M1 修士全科生+学部選科履修生

就労

M0と同じ。

・1月でクリニック勤務退職

・12月からデイサービス非常勤(8:30-17:30)開始。クリニックとオーバーラップするので1月までは週1、2-3月は週2~3

就学

前期:修士の授業9科目+修士のオンライン授業1科目+学部授業1科目+学部再試2科目

後期:修士の授業1科目+学部授業5科目

これで大学院の科目の必要単位は修了。学部の選科履修も一旦終了。

 

M2 修士全科生のみ

就労

・4~7月までデイサービス非常勤週2×8時間。その後退職

・4~7月(週1)、9~翌1月(週2)で大学の看護学科非常勤助手

就学

科目履修なし

 

 

履修の状況と労働のバランス

履修と研究に関しては、研究テーマ・方法にもよると思います。

科目の内容については個別のブログ記事に詳細があります。趣味でとったものもありますが、研究上必要な(今まで知らなかった)方法論に関するものも履修したので、B4(?)とM0の方が忙しかったです。

また、就労のバランスについてですが、自分がなまくらなのもあって勤務日はほとんど研究に余力を割けませんでした。科目履修についてはちょびちょびやっていた日もあったかもしれません。

 

M0以降の学習時間、研究進捗

読書の時間なんかも含めているのでなんともいえませんが、仕事や家事・余暇活動や日常生活動作以外で何らかの学業に関する活動をしていたのはM0~M1の間で平均3時間/日くらいだったようです。非常勤だからこそできることで、常勤だと厳しいと思います(やれる人は気合でやるのかもしれませんが自分には無理でした)。study plusというアプリで時間管理をして目安としていました。

 

M1

4~7月 テーマの詳細を煮詰める・先行文献

8~10月 試行錯誤、データいじりなど

11月 学会準備

12月 学会発表

1月~3月 別の研究テーマの計画など

M2

4月~6月 別の研究テーマの打ち合わせ・先行文献、修論に向けて12月の発表から修正

7~9月 修論に向けて・院試(博士)の準備

10月 院試、学会準備

11月 研究会発表・学会発表・修論作成

12月 修論締め切り

1月 口頭試問、論文投稿締め切り、院試

2~3月 (予定)別の研究テーマのデータいじりのための準備とか倫理審査とか

 

修士での成果

M1 12月 学会発表

M1 3月 助成金採択

M2 11月 学会発表(M1のときと違う分野)

M2 1月 論文投稿(国内誌)

D1以降? 修論テーマとは別の研究の学会発表+論文投稿

 

常勤レベルの負担でやる場合

ゼミ生は常勤職の方も多いです。また、介護などの合間に研究をされている方もいらっしゃいます。さらに、長期履修(要するに留年ですが放送大修士ではよくあること)でM4の方なども複数名おられます。テーマ的に適切だから、と他の研究室とかけもち(出向?)される方もおられます。

こういった方の場合、修士全科生に入られる前に修士修了に必要な科目を履修されている方も多いです。指導教員からも、できれば早めに履修するよう(入学前でもとれるので)勧められました。選科生・科目生で取得した分も全科入学後加算されます。確か22単位ほどです。換算すると座学で11科目ぐらいで、自分のコースからの必要最低単位があります。

 

健康との兼ね合い

メンタルは落ち着いていましたが、諸事情により身体的負荷の大きな治療や療養をしていました(現在もですが)。なので、「もうちょっと元気なら働ける」とか「もうちょっと元気なら研究にリソース割ける」みたいな状態です。

→M1〜M2にかけて不妊治療とその後の妊娠生活でした。不妊治療の身体的精神的負担もさることながら、M2の夏はつわりで嘔吐しているあいだに終わってしまったので結果的に体の負担としては常勤をしているのと同じようなものだったのかもしれません。

この記事を書いている口頭試問当日は妊娠33週目、来週からは産休(は、ありませんが)というタイミングです。どうにかすると早産になってしまい修了できなくなるのではないかとヒヤヒヤしていましたがなんとかなりました。

 

ゼミの開催

ところにもよると思いますが、自分のゼミは月に1度研究会が開かれて、学部(卒論履修)~博士課程まで色々な状況・テーマの方が参加されています。

余談ですが、コロナのことがあったり、指導教員がサバティカルで国外にいらしたのもあって、実はM2の10月まで指導教員と直接お会いしたことがありませんでした。コロナがなくて指導教員の所在が国内だった場合は文京の学習センターなどで月1開催、他にも場所によっては指導教員のほうが訪問してくれることも過去にあったそうです。私の場合は、地方都市圏在住でしたので指導教員の地方出張の都合に合わせて面談してもらっていました。また、仕事の都合などで研究会に出られない場合は個別の面談(web)なども設定できます。

 

院生生活全般

研究成果について

研究室の方針は色々院生生活に関わると思います。私のところは、修論を書くだけでなくて学会に発表したり雑誌に投稿したりといったことを積極的にするよう進められます(単にそうするほうが論文がブラッシュアップされるというのもあるとはおもいますが)。過去には国際学会での発表や英語論文の投稿もあるようです。

また、放送大は学会発表や論文投稿などは修了要件ではありません。

 

研究対象について

研究のフィールドが自分の職場だったり、フィールドがないけれど研究をしたいという場合にはそのあたりの確保に注力しなければならないのは事実ではあると思います。普通の大学なら得やすいものを自力で取ってこなければならないので...。職場に対する倫理審査をクリアしなければならなかったり、ない場合は放送大のものを適用したりしますが、多くの研究がそうであるのと同様に倫理審査は時間がかかります。研究計画を練る練習にはなりますが、「なにを対象に」というのはある程度目処をつけておいたほうが進みやすいような気がします。

自分の場合はそれが面倒だったので人を対象としない研究にしておりますが、倫理審査が通らないために研究計画を変更せざるを得なかった方を何名か見ました(もちろんそれはそれで構わないと思いますが)。常勤などの傍ら忙しく修了していくのであれば、算段がつく研究計画を立てるというのはそこそこ大切なことであるように思います。

 

 

おわりに

やる気がなくなってきて散漫に書いているのですが、とりあえずこれで一旦院生生活記事は終わりです。なにかご質問いただいたらまた追加で書いたり、過去の(院試記事などの)リンクを貼るかもしれません。

 

終わってみていうことが何かあるとするならば、私の場合は「あまり終わった感はない」ということでしょうか。修論は出しましたが、論文投稿を控えていますし、別の研究テーマを抱えていますし、なんやかんや……となると結局大学院の2年間は身分の確保のために用意されていたような感じです。勿論課程を終えることも大切なことだったのですが、印象としては「修士課程、全然勉強も研究もし足らんかったのでは?」という感じです(これは単なる自己都合によるものですが)。

 

というわけで不完全燃焼感が否めませんが、当初の予定通り2年間で修士生活を終えましたのでこのシリーズの記事を終わりにしたいと思います。

 

お付き合いいただきましてありがとうございました。