毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

構造をほどいていく-緩和ケアについてのあれこれ

良い本でした。

最早なんのきっかけで見つけて、読もうと思ったのかわかりませんが。

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

 

結構考えていることは根源的なことなのでまとまりなくなることをお許しください。

 

批判的とはいいませんが、身につまされることが多すぎて、本当に毎日何やってんだろうと読んでいて地獄のように苦しい本でした。

あまり臨床のことを多くは書けませんが、老いも若きもいつかは死にます。死に方を選べないなあ、死ぬまでの生を選べないなあ、選ぶにしても選ぶための助言を得たりするのがとても難しいなあ・・・と、いつも思っていました。多分学生のころから。

 

この本は米国での緩和ケア・ないしナーシングホーム(介護・看護つき高齢者施設のようなものですね)のシステムの構築とその全体像の解釈・文脈と考察をケースごとに描いています。

高齢者医療というものが確かにあまり見えてこないのです。少なくとも私がいまいる場所では。そもそも健康保険というシステムがそうできているから(=生産年齢人口のためのものだから)というのもあるのですが、生産年齢にあっても労働に従事できないほど脆弱(フレイル)の状況にあるひとたちを、私は毎日相手にしているのです。

彼らの何割かは治療によってなんとか健康を維持し、何割かは致命的なほどに生活を侵され、そして何割かはそのまま亡くなってしまいます。治療の甲斐なく、というのは今ここでは不適切な言葉のようにも思えます。

 

「今ここ」での、姑息的な治療とケアプランの再考(姑息という言葉はもともと否定的な意味合いは含んでいないので、まさしく本来の意味で)という概念が、自分にはまだきれいにインストールされていないなと思うのです。生活の場所の再考、生活するために必要な知識と技術の再獲得、人生の編みなおし。落ちていく人生を受け入れながら、それをまっとうするだけのエネルギーを全員が持ちうるように計らうこと。

まったくできないんです。2年働いてみましたが、まったく身につかないのです。

私自身は積極的治療や、完治というものをまったく念頭におかずして臨床にいるのですが、それでも(むしろそれだからこそ)毎日苦しいのです。本当に苦しいです。「今ここ」が、明日も同じ状況で続くのか、それとももっと悪くなっていくのか知りたがっている人たちに対してできることは本当にわずかです。それを毎日受け入れざるを得ず、毎日打ちひしがれているのです。そういう事実を思い出すような本でした。

 

だからどうしろとか、これは間違っているとか、そういうことはいいたくありません。

ただ今の文脈において欠けている要素はぼんやり見えているのです。

自己効力感を奪うシステムではあるな、とよく思いますし、何より生産性に欠けるシステムだと思います。ただ、よく検討された緩和ケアはある種の積極的治療よりよほど時間も人間の手もかけなければならないもので、コストとして妥当かどうかはわかりません(そういう根拠ありそうですけど)。

けどもう人間は死ぬ前提で生きなければなりませんし、それを支えるに「誰か」を恃むこともできませんし、結局自分たちの背中に重くのしかかってくるであろうことを思うと、今のままが適切だとも決して思えないのですよね。自分が能動的になにかできるかどうかは別にして、このことに関して豊富な知識と、そして判断力と、介入するための手法をもっていなくてはならないといつも思います。かつ、それは積極的治療による弊害に対する対処法の何にも勝り必要なことに思えます。

 

緩和ケアとはたぶん、がんに限らず(そして終末期にもまったく限らず)、「生きることそのもの」に常について回る概念のように思えます。

苦痛のあるところにそれを緩和する手があって欲しいと思いますし、そんなのは一対一の営為なんかではなく、数字にすることによって、既存の構造を変える力になって欲しい。あーまとまりない。

 

普通に読み物としてもいい本です。非医療職の方にも、医療職の方にも、どちらにもお楽しみいただけると思います。そして読みやすいです。

100冊読破 2周目(21-30)

この1か月、1日1冊ペースで読んでいたらしい。

 

 1.チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷(塩野七生

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

 

塩野七生好きだったので古本で偶然見つけたものをずっと積読していました。

マキャヴェッリの『君主論』はいまだに読んだことがないのですが、じゃあその当人の短い生涯っていったいなんだったのか、みたいなところの本。まあ史実も勿論書かれているのですがそこは塩野七生なのでちょっと史学というより文学っぽいです。何よりつらかったのは自分に中世ヨーロッパの地理が頭に入っていなかったことなんですがまあまあ楽しかったです。

 

2.建築の哲学-身体と空間の探求(四日谷敬子) 

建築の哲学―身体と空間の探究 (SEKAISHISO SEMINAR)

建築の哲学―身体と空間の探究 (SEKAISHISO SEMINAR)

 

哲学の方向から分析した建築の有り様の変化。

ギリシア・ローマなんかの『神のための建築』または『学術の大成としての象徴』なんかの時代から、『建築のための建築』、そして『人間のための建築』に至るまでの思想・美術の変遷をさっぱりと切り取る内容。読みやすいです。哲学の本を読んだことがある人におすすめできそう。

 

3.福祉空間学入門-人間のための環境デザイン(藤本尚久)

福祉空間学入門―人間のための環境デザイン

福祉空間学入門―人間のための環境デザイン

 

完全に教科書。これ、実地で実習していたことがあります。車いすに乗った人間がどれくらいのスペースがあれば廊下で回転できるかとかそういうのが逐一書かれていたりする。

 

4.「インクルーシブデザイン」という発想 排除しないプロセスのデザイン(ジュリア・カセム)

「インクルーシブデザイン」という発想  排除しないプロセスのデザイン

「インクルーシブデザイン」という発想 排除しないプロセスのデザイン

  • 作者: ジュリア・カセム,平井康之,ホートン・秋穂
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2014/06/26
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

ノーマライゼーションに関してはこれはかなり強いなあと思います 『ズートピア』をめっちゃくちゃ思い出しました。社会にいる人間って労働生産人口とはまったくイコールではないので、プロダクトデザインについても環境デザインにしても「誰のため」を狭く設定しないことが大事なのかなと思ったり。

ちなみに著者は京都工業繊維大の教授なので身近だったりしたのもあって読みました

 

5.素手のふるまい アートがさぐる【未知の社会性】(鷲田清一

素手のふるまい アートがさぐる【未知の社会性】

素手のふるまい アートがさぐる【未知の社会性】

 

鷲田教授が京都芸大の学長になられてからの本ですね。

アート(パフォーマー)たちの営為を言語化した一冊。それは、労働ではなく、制作っではなく、「活動」で、現象なのですけれども。アートを「芸術」と訳すか「技術」と訳すかでかなり印象が違ってくるでしょうが、「芸術」を「技術」と見做して人と接続する手段として用いた場面の切り出しといったら近いでしょうか。

もともと現代思想の研究者なんですが、高校生向けの評論なんかも書かれているので鷲田氏の文章は本当に読みやすいです。

 

6.解明される宗教 進化論的アプローチ(ダニエル・C・デネット

解明される宗教 進化論的アプローチ

解明される宗教 進化論的アプローチ

 

これは文句なしによかったです!!グリックの「インフォメーションの人類史」の宗教学バージョンといってもいい。宗教学とっつきにくいなあと思っていたのですが、なんというか導入のような感じですいすい読めました。分厚いですけど面白いです。『利己的な遺伝子』とか『銃・病原菌・鉄』とか好きな人にはぜひおすすめしたい。非常に真面目な本です。

 

好きなくだりがあるのですが、宗教それそのものは存在の良しあしをなぜ問われなければならないのか?みたいなくだりがあるんですよね。我々は音楽の存在の必要性は説いてもそれを聴くことの良しあしは問わないというのになぜ宗教は問われなければならないのか?みたいなくだりがあって、さもありなんと思ったんですよねえ。もうちょっと各論に進んでみたいなと思わされた一冊でございました。

 

7.人間の街:公共空間のデザイン(ヤン・ゲール)

人間の街: 公共空間のデザイン

人間の街: 公共空間のデザイン

 

その名の通りパブリックデザインについての本。

これまで完全に構造と機能として、または都市計画としてしか読んでこなかった街に、人間のアクティビティが加わることでダイナミクスの理解につながる。有機的な都市のデザインへのアプローチという感じ。人間の歩く速度で見える景色、もっとも視認性がよく滞留しやすいデザイン、など。建築のファサードについて考えさせられますのう。

 

8.フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション(スティーヴン・ナハマノヴィッチ)

フリープレイ  人生と芸術におけるインプロヴィゼーション

フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション

 

ヴァイオリニストの即興演奏者の本。この本一冊からなにか得られるとは思わんけど、ジョルジョ・アガンベンの『裸性』とか黒ダライ児の『肉体のアナーキズム』みたいに身体パフォーマンスの概説本っぽかった。営為を取り上げることのできる本って哲学系か芸術系くらいしかないので面白く読んだ。

コミュニケーションがそもそもその場でやりとりされる「まるで即興の合奏」であることを意識している人はあまりいないと思うけど、この本はなんとなくそれを裏付けてくれる気がする。ある「きっかけ」に対して発火するシグナルのやりとりは、合奏と会話はほぼ対等のそれやと思う。まあでも芸術系の、とくに受動的でなく能動的な楽しみ方をしている人でないとなんとなくの理解は難しい気がします。

 

9.活動的生(ハンナ・アーレント

活動的生

活動的生

 

一応この本ジャンルとしては政治哲学にあたるようなのですが、自分としては実存主義構造主義のあいの子として楽しく読みました。というかとてもうれしかったのがこれを読み始めたときに、自分の仕事について「それは労働・制作・活動のどれにあたると思います?」と聞いてもらえたこと。結構自分なりに考えながら読めたので面白かったんです。

本を読むときに他人の目を巻き込むというのは面白いことやなあと思います。

 

実際に自分の答えとしては、「行為する人間の知覚によって変化しうる」だと思います。勿論客観的にすべての要素を含むわけですが、ある人にとっては労働でしかないし、ある人はそれを制作として転換しうるし、ある人はすべての現象を肌で感じてそれ自体を行為、活動とすることもできる。と思う。今の暫定的な結論。

 

 10.パブリックライフ学入門(ヤン・ゲール)

パブリックライフ学入門

パブリックライフ学入門

 

『人間の街』が面白かったのでこれも読んでみました。それぞれの都市においてその動線・滞留・関係が生み出すものと生み出せないもの、変化した理由について。

おおざっぱな都市論の歴史についても書かれていて自分には有難かったです(別に専門に学んでいるわけでもないし)。

 

結局いま、どの本を読んでいても公共スペースというのはインタラクションの場として大きく取り上げられがちで、身体性というか身体という逃れられない器を通して知覚する都市・建築についてもっと敏感になるべきだっていうんですよね。車の速さよりも目の高さに焦点をあわせること、個人の歩く速度、自由にいきる余暇時間が都市に何をもたらすか。そういうことを考えるのが結構好きです。また街の写真を撮りたくなる。

マッチングアプリとマッチング記

やり始めて1週目くらいのときの記事がこちら。

streptococcus.hatenablog.com

 

というわけで、だらだら続けて2か月が経過したので、ここいらでまとめておこうとおもいます。というかもうあのアプリ辞めようと思いまして。

 

 

結論

実際に1度でもお会いする機会のあった方は、5人以上10人未満でした。

やりとりをした方はその10倍くらい。

いいねの総数は結局たぶん200~250弱くらいではないでしょうか。月平均で割り出されるのでイマイチよくわからなかったりします。

 

前回の記事でいくつか書いたことについて、その詳説というか結果・結論を書いていこうと思います。

 

 

 

いいねを月単位で購入し、メッセージを有料であける

「いいね!」って本当に思ってるかそれ?

っていう発言についてはこれを否定したいと思います。

向こうはシステム上月あたり30(だったかな)のいいねの上限があり、また下限はないためにそれを使い切るのが基本なのです。つまり、Twitterでいうと「とりあえずふぁぼっとけ」みたいなところがあります。自分は他者を選別するのに迷う必要はなかったのでした。

 

 

デメリットの発生とその対策

pairsはfacebookのデータを使用しますが、その内容は公開されません。

かつ、他の同性・異性ともコミュニケーションをとれるアプリではありません。メッセージは閉鎖空間です。何が起こるかというと、「出会い系より出会い系」ということです。つまり目的はいくらでも偽れるわけです。そしてそれは自分のもっているコミュニティに影響しない。つまりひどいことをしたから例えば風評が下がるとかそういった危険がないわけです。実際まあいってみれば肉体関係が目的の方もいらっしゃるわけで、そういう人間を事前に防ぐために自分は途中から大幅にプロフィールを変えました。

 

趣味をめっちゃ濃くする。

自分の場合は楽器やっていたりカメラが好きだったり、あとは音楽の趣味も結構変だし読んでいる本の内容は哲学とか人類学とかなので非常にとっつきにくい印象を与えます。

そうすることでむしろ安易ないいねを防げた印象はあるように思えます。

マッチングアプリのくせにアンマッチを目的としたプロフィール構成とかなんたる矛盾。

 

 

人間ザッピング

実際に会うに至った方は皆さん結構変わっていました。最初の1~2名は正直つかみあぐねていたので些か自分とは傾向が違ったなあとも思いますが、その後数名の方とは初対面でもごく楽しく時間を過ごせたように思います。

で、途中から自分の目的が結構変わってきていまして、それというのもだんだん「面白そうな仕事をしている人を探して話を聴くアプリ」になっていました。

勿論それに至るにそもそもやりとりが続くかどうかというのはあったんですが、それにしても自分の仕事を超えていろんな人の話を聴けるのは面白かったです。まあいうてみたらTwitterみたいな使い方をしてしまいました(こいつ本当にだめだな

 

でまあ、マッチング後に関して実際に会ったりして第一印象がよかった人の特徴、つまり自分が求めている傾向がだんだんわかってきました。

①顔・身長にはそんなに興味がない、ただ体型には興味がある

実際にお会いしてみていい印象をもった人たち、別にイケメンではなかったように思います。むしろ身長が高かったり服が洒落ていても、ああこのひととは関わりたくないなあと思う人もいらっしゃいました。

ただ、いい印象をもった人たちは全体的に柔和な印象を相手に与える人が多かったです。肩幅が広かったり骨太だったり。

 

②仕事の仕方や生活スタイルには興味がある

結構これはやりとりの中でもメインになっていて、生きていくなかでどんなふうに仕事と私生活の折り合いがついていっているかとか、そういうところは話の中から自分はよく情報を拾っていたようです。

 

③受容的な態度か否か

これに関しては難しいのですが、自分だから思うことかも知れません。

日々弱い立場の人間を相手にしているので、丁寧さを欠いたり、配慮する気がないのだなあ(ここでいう配慮はレディファーストとはまったく関係ありません)と感じたり、そういう場合には「きっと次はないな」と思いましたし、実際そうなりました。それはメッセージの段階でも実際に会ってみた人でもそうでした。

 

④ぶっちゃけ年収もそんなに興味なかった

一応書く欄はあるものの、正直業種による区切りはそんなに気にならなかったです。

結局なにが大事かというと、志向性に問題があったように思います。仕事に展望を持っていたり、趣味のなかになにか気になるものがあったり、ライフスタイルが面白かったり、そういう人に自分は興味をもっていたようです。

 

⑤面白い使い方をすれば面白い

自分のように終始仕事に明け暮れている人間には結構いい出会いというか、刺激になるやりとりがたくさんありました。かなり余分な効果ではありますが、仕事がんばろうって思えたのは副産物にしては大きかったと思います。魅力的な仕事をする人は魅力的に映るものです。 

 

 

 

そんなわけで、いったんこのアプリを終わろうと思います。

自分としては一定の成果が得られ、また納得もしたのでまあいいかなという結論に至りました。3か月という期間は長すぎず短すぎず、わりと適切だったように思われます。何より自分には、多くの人とメッセージを交わすということがあまり得意ではなかったようで、随分神経を遣いました。

 

最後に、もしこれからpairsをやってみようかなあと思う女性がいらっしゃるのであれば、「収支が損益になるようであればそんなものは続けるべきではない」ということだけご紹介して締めくくろうと思います。私の収支がどうだったかは別として。

映画1年締めくくり-良作映画10選

1.ヴィオレット-ある作家の肖像

streptococcus.hatenablog.com

記事書いてました。良作です。フランス思想・文化・音楽好きな人にはわりとおすすめ

 

 

2.マジカル・ガール

streptococcus.hatenablog.com

くっらい映画です・・・!が、よい。わりと耽美です。

 

 

3.リップヴァンヴィンクルの花嫁

streptococcus.hatenablog.com

岩井監督の映画ですね。

結構主人公がアホというかまああまりおつむがよろしくない感じのイマドキ女性というていで出てくるんですけど、見続けていると感じ入るものがあってそして何よりCoccoが出ているっつうんで観てしまいましたよね。よかった。

 

 

4.氷の火花 山口小夜子

streptococcus.hatenablog.com

たまに山口小夜子に似てるって言われたので気になって。ファッションというかモードが好きなので観てきました。

そして結構晩年はパフォーマンス系に傾倒していたと知って読書でも『肉体のアナーキズム』とか読んだりと、わりと思考に影響した気がします。

 

 

 

5.6.光のノスタルジア/真珠のボタン

streptococcus.hatenablog.com

文化人類学言語学が好きな人におすすめ映画・・・

あとゲームだったらICOが好きな人にはぜひ。

 

 

7.或る終焉

streptococcus.hatenablog.com

暗いけどよい。

全体的に静かな映画です。

 

 

8.ズートピア

ズートピアだけ実は感想ブログを書いていないんですけど、あれは自分は都市論の話として観ました。すごく楽しかったです・・・このサブカルっぽいラインの中にこれ突っ込むのちょっと恐縮ですけど。

 

9.リリーのすべて

streptococcus.hatenablog.com

 

10.君の名は。

streptococcus.hatenablog.com

 

 

結局『感想文を書きたくなる映画』についての紹介ページみたいになってしまった。すんませんすんません。

100冊読破 2周目(11-20)

1.蘇える変態(星野源) 

蘇える変態

蘇える変態

 

多芸な人やなあと思って気にかけてはいたのですがたまたま本屋に立ち寄ったらあったのでぱらぱらめくっていたらそのまま最後まで読んでしまった。

やっぱり終盤になって出てくる脳動脈瘤の破裂と再発・再手術のくだりが個人的にはいちばんこたえたのですが、それ以外にもこうやって創造的な仕事をしている人間の孤独というか葛藤というか色々垣間見ることができてよかったです。彼の死生観はわりと好きかもしれない。

 

 

2.行為と合理性(ジョン・R・サール)

行為と合理性 (ジャン・ニコ講義セレクション 3)

行為と合理性 (ジャン・ニコ講義セレクション 3)

 

 哲学のジャンルなのか論理学のジャンルなのかちょっとわかりにくいところがあるけれども真面目な本ではあった。結構面白いのが、合理的であるかどうかについてはそれそのものの倫理的観点は問われないというもので、つまり『いい』『悪い』という観点や『善』の定義を取っ払ったとき、AゆえにBであるという考え方は非常にシンプルで納得いくものなのですね。

いつも思っていたことではあるのですが、感情というものは決して合理性のないものではないなあと思わされたのでした。先に読んだ『情念・感情・顔』の続きみたいな本。

 

 

3.真理と実存(J-P.サルトル

真理と実存

真理と実存

 

サルトルいつ読んでもわかりにくいなと思いながら読みました。

とはいえ2冊目なのでまだ何もわからなくてまあ当たり前といえばそうなのかも知れないのですが、実存を扱っているとしていながら現象も入っているような気がする。かといって現象に対する知覚や認知というよりはどちらかというと表象の理解に関することがテーマっぽいなと思ったり思わなかったり。つまり読んだ後もまだよくわからないです。

ドゥルーズでもメルロ=ポンティでもないしなんというかサルトルの位置づけをまだつかみあぐねているような気がします

 

 

4.都市のエージェントはだれなのか(北山恒

都市のエージェントはだれなのか (TOTO建築叢書)

都市のエージェントはだれなのか (TOTO建築叢書)

 

多分この本だったと思うんですけど、後半にシェアハウスをしていながら共有スペースに出てくると他人の生活が見えるみたいな構想があって面白かったです。東京について考えたくて読んだのですが東京についての話は意外と出てこなかった・・・

 

 

5.なめらかな社会とその敵鈴木健

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

 

政治哲学系の本がぽろぽろ本棚に並んでいたので面白そう!と思って読みました。面白かったです。基本的には数学的な構造の設立についてなのでひじょうに実験的ですし実現可能性があるとしても色々難航しそうな事例ばっかりやったんですけど発想として本当に納得できるものばっかりで、なんにせよイノベーションってハード面とソフト面があるとしたらこれはわりとソフト面についての本でした。

攻殻機動隊とかPSYCO-PASSとか好きな人にめっちゃおすすめしたい。

 

 

 6.スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。-未来を思索するためにデザインができること(アンソニーダン

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること

 

悪い意味でタイトルだなと思って読んだのですが悪い意味で引っかかった内容でした。

私はあまりデザインの風呂敷を広げることが好きではないので本書もそういった意味でなんら実際的でないというか実用的でもないわりに思想として優れておらず悶々とした気持ちを抱えつつ読むことになりました。

 

 

 

 7.ポストモダンの50人-思想家からアーティスト、建築家まで(スチュアート・シム)

ポストモダンの50人 -思想家からアーティスト、建築家まで

ポストモダンの50人 -思想家からアーティスト、建築家まで

 

現代思想に至るに1900年代中盤くらいの思想について触れたかったので読みました。

デリダドゥルーズ&ガタリレム・コールハースウンベルト・エーコフーコー、サイードのあたりを読みたくて読んだのですが他にも惹かれるものは色々ありましたです。学問で区切るというより思想・風潮・時代背景で区切った方が面白いものが得られそう。が、通読するにはちょっとしんどかったです。勿論これを読んで興味をもった人もいたのですが

 

 

8.「聴く」ことの力―臨床哲学試論 

「聴く」ことの力―臨床哲学試論

「聴く」ことの力―臨床哲学試論

 

鷲田清一氏とても好きなので読みました。相変わらず文体としては平易なのですが、言葉にしづらくかゆいところを解消してくれる実に良い本です。

こればかりは、対人援助職におすすめしたい。

 

 

9.一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル(東浩紀

これの前に『なめらかな社会とその敵』を読んでしまったからかどうしても片手落ちに見えてしまった。そもそも自分はそんなにSNSそれそのものを歓迎していないので、こういう観点からのものの見方ってあまり得意ではないんですよね。

けど近代のメディアの在り方から大きく変容したことについて流れはわかりやすく書かれていますし、考え方の一端としては悪くなかったです。何より読みやすいのがいい。

 

 

10.シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ(ジャクリーヌ・シェニウー=ジャンドロン)

シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ

シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ

 

タイトルからして意味がわからなかったのですが内容もさっぱりわかりませんでした。そもそもこれ自体がシュルレアリスムに関する論文集という形式をとっているので余計に難しいのかもしれませんが。

ポストモダンの50人』みたいに、その時代におこったムーブメントを理解するのって難しいのでこういう本を時々流し読みすると大体そこに起こった事件や政治的な転換点と照らし合わせてなんとなく気運を理解することができるようになるんですよね。まあ理解したなんてまだ言えへんのですけど。シュルレアリスムという思想・芸術作品にそんなにたくさん触れたわけではないんですけど、ダリ展にいって面白かったんで読んでみたんです。

100冊読破 2周目(1-10)

1.こころの処方箋(河合隼雄) 

こころの処方箋 (新潮文庫)

こころの処方箋 (新潮文庫)

 

古本屋で買ってそのままになっていたもの。物事の捉え方、処理の仕方について色々書かれているけど、自己啓発系の本と違うところはそこに『こうすると、こうなる』という利益がないことだと思う。利益じゃなくて、そこに語られたりすることによる深い癒しのようなものがあって、この人の本を読むといつもとても安心する。

 

 

2.ことり(小川洋子

ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)

 

久々の小川洋子作品。今回もよかったです。

彼女の作品は、悲しいとか、愛おしいとか、切ないとか、それそのものの言葉で決して語られないし、涙も流さないし、大笑いもしない。でもそこに激しい情緒があって、読んでいる人の内側にあるものと共振する。

 

 

 

3.リノベーションプラス 拡張する建築家の職能(松村秀一、馬場正尊、大島芳彦)  

リノベーションプラス 拡張する建築家の職能

リノベーションプラス 拡張する建築家の職能

 

写真が豊富で建築の外装内装ともに大好きな自分にはカタログとしても楽しめるような本でした。

部屋・建物の内装とか、その提示・展示の仕方とかリノベーションというかデザインの効果の面白さという感じで読みましたです

 

 

 

4.デザインのデザイン(原研哉

デザインのデザイン

デザインのデザイン

 

無印良品の話がむっちゃ楽しかった。原研哉氏の本初めて読んだのですが、読みやすいのに書いてある内容はしっかりしていて本当に驚かされます。こうも易く、硬い話題を理解させられるものなんだなあと思って。

特に愛知万博のくだりは面白かったです。『誰のためのデザイン?』はノーマンの本ですが、副題をつけるなら『なんのためのデザイン?』という感じです。コミュニケーションデザインからプロダクトデザインまでを網羅的に扱っている本。おすすめ。

 

 

 

5.エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ(馬場正尊)

エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ

エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ

 

この人の本をいっときいくつか読んだのですが、これもなかなか血湧き肉踊る話でした。表現がおかしいか。でも興奮します。特に、地域再生のカテゴリにおいては。

偶然にも自分はこの本に出てくる福岡県の小倉と広島県尾道に行ったことがあるのですが、あれら地方都市の魅力は抗し難いものがあむて不思議に思ったものです。

特に尾道についてはちょうどそのリノベーションの結果である空き家を補修した家に宿泊したので余計に。地域の特性を読んで、文脈を崩さずにそこを集客力にするための具体的な実践の軌跡の本。おもしろいです。写真もいっぱいある。

 

 

 

6.PUBLIC DESIGN 新しい公共空間の作り方(馬場正尊) 

PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

  • 作者: 馬場正尊,Open A,木下斉,松本理寿輝,古田秘馬,小松真実,田中陽明,樋渡啓祐
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
 

これ結構好きでした。ただ実験的側面も大きいなーと思います。武雄市図書館のTSUTAYA導入とかも後の方に出てきます。

公共スペースの新しい使い方にあたって、どういう手法を使ってどういう役割の人間がいて…という、これも実践の軌跡を書いた本。構想から実現まで。

 

これよりはRE PUBLICという、先の100冊読破中に読んだ本の方が易しいかも知れません。

刺激的。

 

 

 

7.網状言論F改-ポストモダン・オタク・セクシュアリティ東浩紀) 

ものはためしにと思って読んだのですがものはためし程度でした。なんというか、場に居合わせなければ意味がない対話。後から読んでもちょっと興醒め感はありました。

そもそもオタク文化についての語り口がちょっと甘いかなあというところにオタクのセクシュアリティという接続不能なものを接続してしまっているので取り扱えないものについて語ってしまった感がある。読み物としてはまあ軽くてよいです。

 

 

8.情念・感情・顔 コミュニケーションのメタヒストリー(遠藤知己) 

情念・感情・顔 「コミュニケーション」のメタヒストリー

情念・感情・顔 「コミュニケーション」のメタヒストリー

 

予想外の中身でびっくりしながら読みました。最早読んだとはいえん。

『コミュニケーションに至る前夜』という感じです。中世におけるコミュニケーション論から始まるので宮廷論がどうこういう話から始まってもう完全に目が点になって300ページくらい放心状態で読んだのですが、後半300ページ余は美学や観相学によるものとその批判だったので少しは読めました。めっちゃ難しいです、未消化感半端ではない。

 

 

 

9.京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史(中川理)

京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史

京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史

 

気になる本は大体鹿島出版会

 

以下ツイート引用です

 

『京都 影の権力者たち』という本を以前読んだのですが、あれと併せて読みたい本でした。『京都と近代』自体は近代都市政策・建築・土木からのアプローチなんですが『影の権力者たち』は文化圏からのアプローチなんですよね。で、今回の本に関しては20世紀前半のことについてがメインなんですが、実際京都には洋風の建物っていっぱいあって、その多くがアールヌーヴォーの様式に則っているのです。モダンへのなめらかな移行がポスト・モダンへの入り口やったんかなという気もしますし。住んでいると今でも京都という都市の代謝を感じることができて気分がよいです

 

 

 

10.公共性の構造転換-市民社会の一カテゴリーについての探求(ユルゲン・ハーバーマス) 

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

 

公共空間のリノベーションとか読んでいて気になったので読みました。めちゃくちゃ真面目な本でした。中世の終わりから近代にかけての思想の転換、神学から倫理学への禅譲が最初に書かれていて、そもそも公共をかたちづくる大衆のあり様についても真面目に説明されていて実に良かったです。そんなに消化できとはいえんのですが、都市論における教科書的存在になりそう。

 

100冊読破の中から超絶コアなオススメ10選

すごく人に勧めたい、或いは自分はとても感銘を受けたけれども、とてもじゃないが万人にはオススメできない10選。

 

1.システムのレジリエンス さまざまな擾乱からの回復力(
情報・システム研究機構新領域融合センターシステムズ・レジリエンスプロジェクト)

 『レジリエンス』について考えていたときに検索したらひっかかって、なんとなく買ったのですが確実に求めていたレジリエンスとは違った。

ただ、めちゃくちゃ面白かったです。

副題にある「擾乱からの回復力」、とても自分にはこたえる話でした。いっぱいいっぱい(この場合組織なので予算や組織的な体力)で迎える災害・伝染病を含むあらゆるリスクには確かに脆弱にならざるをえない。じゃあ靭性・弾力のある組織ってなんだ?というとき、正直自分にとってドラッカーの『マネジメント』と同じくらい参考になった本です。そんなに高くないし、ぺらいですが内容は濃厚です。

新型インフルエンザ、3.11の話とかも出てくるのでご興味ある方はぜひ。

 

 

2.ブラックホールを見つけた男

ブラックホールを見つけた男

ブラックホールを見つけた男

 

ブラックホールの存在について天体物理学的に証明した(観測したのは別のひと)、インド人の研究者チャンドラセカールの伝記(?)です。

数学・物理学が全然できないので読めるかなあと心配ではあったんですが無理ではなかった。ただ全編通してめちゃくちゃ暗いというか業界のYAMIを垣間見るどころか全面に押し出されているので、研究室でイタい目に遭った人にはおすすめできません。 

 

 

 

3.知覚の現象学(モーリス・メルロ=ポンティ

知覚の現象学 〈改装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

知覚の現象学 〈改装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

 

フッサールの『現象学の理念』を読んでさっぱりわからなかったので読んでみました。

読んでみました、というにはあまりにも重い、あまりにも高い。重さ1kg、値段8000円・・・。

が、中に書いてあることは本当に素晴らしくて、まず近くに関する神経学的・生理的考察からはじまり皮膚感覚や五感に話は及びます。自分は、自分と同じ業種の人ならたぶんわかってもらえる話ばかり書かれていると思うんですが如何せん敷居が高すぎる。 

 

 

4.波紋と螺旋とフィボナッチ(近藤滋)

波紋と螺旋とフィボナッチ

波紋と螺旋とフィボナッチ

 

分子生物学の本です。ただめっちゃ読みやすい。

もともと違う研究をしていた著者が、魚や動物の「しま模様」の発現の規則性と変容について発見するという話。ブログに連載されていたものを書籍にまとめたものです。

アラン・チューリングとか寺田寅彦出てくるのに最終的に答えを授けてくれるのは大阪のおばちゃん・・・いや何を言っているのかわからないと思いますが、実際に熱帯魚を家で飼うことになるんですよね。たぶん今回挙げた本のなかで一番読みやすいと思います。そして面白い。科学とか数学が苦手な人にこそ読んでほしいです。

 

 

 

5.ジェントリフィケーションと報復都市(ニール・スミス)

ジェントリフィケーションと報復都市: 新たなる都市のフロンティア

ジェントリフィケーションと報復都市: 新たなる都市のフロンティア

 

これはほんっっっっっとうに誰にもオススメできないんですけど、自分の中ではとても大事な本です。 誰得っていうか俺得。

デザインだけでなくて社会そのものというか都市そのものについて印象を持ち始めていたので、とにかく都市論について読んでみたかったんです。TSUTAYAにあったものを図書館で借りました。買うと5000円くらいした気がする。

東京や京都という街を構成する要素を考えるにあたって何が必要かを得るためにこれを読んだのだけど、土地自体は1960-80年代にかけてのアメリカのごく一部地域についてなので想像するのは難しい。ただ、報復都市;都市はかつてみた繁栄の夢を見ること、ジェントリフィケーション;ある固定の階級による締め出し行為が起こること、についてはかなり考えることができる良書でした。実際東京でも、京都でも起こっていることだし。都市の新陳代謝については後述に紹介する本で。

 

 

 

6.正義論(ジョン・ロールズ

正義論

正義論

 

これも本としてはめちゃくちゃ分厚いです。本当に重かった。なんでこんなの読んだかな。多分ほかの哲学関係の、特に法律が出てくる本だと必ずロールズの名前が出てくるのでいっぺんいっとかなあかんかな、と思ったんですよ。

実際に読んで何がよかったかというと、社会制度というか法学に興味を持てたことかもしれません。もともとなかったわけではないのですが、難しさというか法における正義をあまり信じていなかったんですよね。功利主義的な人間なので、むしろどちらかというと経済活動にそれを見出していました。だからタイトルのこともあって『利己的な遺伝子』も読んだのですが。

ところがそれだけでは社会活動って説明がつかなくてやきもきしてしまって、社会契約説の中でも源流のわりにはロックとかよりは読みやすそうなこちらにしたのです。

オススメはできないけど、好きな本です。ロールズの真摯さというか、人間存在(とくに集団)における均等と平等がよくあらわされています。

 

 

 

7.インフォメーション-情報技術の人類史(ジェイムズ・グリック)

インフォメーション―情報技術の人類史

インフォメーション―情報技術の人類史

 

これはむしろ勢いあまって万人におすすめするところでした。

めっちゃ分厚いです。というかまず、話がアフリカのトークンドラムから始まるのめちゃ面白いです(トークンドラムは言語学的にも結構重要視されている)。言語学記号学・情報通信の分野に興味があったので読みました。まァ攻殻機動隊好きですから。

通信革命というか電気通信が始まる直前くらいの話もかなり面白いですし、大戦中の暗号機の発明・解読に関するやりとりはめっちゃ面白い。

ちょうど映画で『シチズンフォー』、本では『虐殺器官』を読む前後だったのでたいへん面白かったです。情報を制するものは世界を制す。

 

 

 

8.音楽する身体―“わたし”へと広がる響き(山田陽一)

音楽する身体―“わたし”へと広がる響き

音楽する身体―“わたし”へと広がる響き

 

オススメではないのですが自分の中で大事な一冊。

音楽を続けるにあたって、「なんで『自分が弾く』のか?」というのは常に問いとして自分の中にあるんですよね。楽しむだけなら、聴くだけのほうがよほど楽なのに。なぜ弦楽器を、ひとと弾くものを、ずっと続けるのか。勿論答えは昔から持っているんですけど、この本で裏付けしておいて、そしてそれ以上のこの本なかなか攻めたことまで述べているんですよ。まあ詳しくは中を読んだ人とだけ共有したい。あるいは飲み屋で語らいたい。

 

 

 

9.殺戮の世界史:人類が犯した100の大罪(マシュー・ホワイト

殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪

殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪

 

これもオススメできない本筆頭。本当はスティーヴン・ピンカーの『暴力の人類史』をお勧めできたらよかったのですが、残念ながらまだ下巻を読めていないのです。

『銃・病原菌・鉄』なんかを読んでいると、人類は本当に戦ってばかりなんですよね。敵意、害意、暴力、虐殺、殺戮、権力ってなんだ?っていう問いが自分の中にあるので、つまり平和的解決を望むとかそういうこと以前に「それはなんだ?なぜあるのか?どのように行われ、どのように頽廃したか?」ということを問いたいわけです。この本も、全編通して女性への暴力(つまり強姦)なんかも本当に悲惨なものがあえて「数」として定量化されているわけです。人権を語ったり人名を語るのであれば、それが蔑ろにされる様式についても知っておきたいなーと思って読みました。結構面白いです。ただ電車の中とかで読んでいたのでドン引きされていることうけあいです。そしてこれもとても分厚い。

 

 

 

10.RePUBLIC 公共空間のリノベーション(馬場正尊)

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

 

 ジャレド・ダイアモンドの『昨日までの世界』と迷ったのですが、あれは『正義論』と『殺戮の世界史』を足して二で割ったような部分がなきにしもあらずなのでこちらにしました。たぶん、10冊の中で2番目に読みやすく、そしてデザインに興味がある方ならもっとも読みやすい本だと思われます。

都市デザインに関する本です。が、結構まじめでエリアリノベーションに関して阻害因子になる法律・要素を図式化したりと読みやすくまとめられています。わたしゃアホなので視認性のいいものに弱いのです。

実際中に述べられているものは実に先進的で、この少子化時代に学校の一部を開放することで空間をシェアするとか、オフィス街の公園に店を出すとか、そういった都市におけるジェントリフィケーションの逆が行われていくわけですよ。それがとても面白いというか、再生するにしても再生の仕方は都市の性格に合わせて行われるべきだと思っているので読んでいて実に痛快なのです。これは日本の本なので、日本の都市で実際に行われたことが書かれています。

 

 

 

番外:裸性(ジョルジョ・アガンベン

裸性 (イタリア現代思想)

裸性 (イタリア現代思想)

 

これは・・・まあ・・・私のことをご存知の方ならばよくおわかりいただけると思うのですが、是が非でも読まねばならないと思って読みました。

実際自分がどうして身体パフォーマンスにこだわるのかよくわからないというか、むしろただのテロル的パフォーマンスは嫌いな方なのですが(嫌いすぎて『肉体のアナーキズム』とか読みました)、美学ってどこにあるんだろうと思って戸惑いがあったので。つまり実践先行型だったんですよね。

児童向けの哲学の本である『ソフィーの世界』を読んでいると、いちばんはじめの手紙が『あなたはだれ?』『世界はどこからきた?』から始まるのですが、この『あなたはだれ?』にこたえうるものが身体パフォーマンスなんだとなんとなく自分は思っています。

まあこのあたりの話は喋り出すともう一本記事が書けてしまうのでやめておきます。

ジョルジョ・アガンベンいいですよ!

次は『ホモ・サケル』という本を読もうと思っています。

 

 

 

というわけで、この本の羅列だけ見たらこいつの頭はどうかしているとしか思ってもらえなさそうですが、どちらかといえばどうかしていることにほとほと本人も困り果てているからこういう本を読みたくなるんです。

次の100冊もガンガン読むやで。