毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

100冊読破の中からオススメ10選

これ選ぶの結構大変でした。

「なぜ読んだか」「どういう人におすすめか」「100冊読んだあとの自分にとってはどういうものか」というのも付け加えておこうかなと思います。なお読んだ順に1から並べるので、順位とかはありません。

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100冊読破(91-100)

1.現象学的心理学(アーネスト・キーン)

現象学的心理学

現象学的心理学

 

本当はダラン・レングドリッジの本を読むつもりだったんですが図書館になくてこっちを読みました。

知覚の現象学をより実際的に解釈した本、という感じ。子どもを前に出すとわかりやすいなと思いました。なぜ『今まで平気だったのに突然泣き出す』のか、そこで彼女の心の中に何が起こったか。解釈がどう作用するか。

心理学って統計的というか、まさに意識の表層である行動を問題としている感じがあったですが行動から心のふるまいを予測したのが本書かなという気がします なかなかよかったです。

 

 

2.氷河期以降(上)-紀元前2万年からはじまる人類史(スティーブン・ミズン)

氷河期以後 (上) -紀元前二万年からはじまる人類史-

氷河期以後 (上) -紀元前二万年からはじまる人類史-

 

土台がないのでめっちゃ難しく感じましたがこの本のよかったところはある人物を固定の主人公として据えることで身体感覚に訴える表現がなされていたことです。

学校の授業だと4大文明以前はほとんど語られないので、そもそも狩猟採集民族と農耕民族についての対比が少ないんですよね。宗教の発生についてなんかも書かれていてよろしかったです。まだ下巻があります

 

 

 

3.言葉と建築(エイドリアン・フォーティー)

言葉と建築

言葉と建築

 

人類学の本を読むと言語学的解釈がよく出てくるけどこの本はわりと真面目に身体性と構造物の表現の話をしていてよかったです。

建築物の解釈はほとんどその時期の社会や土地の解釈に繋がると思うんですけど、建築を語る言葉はその土地や時代の翻訳に近いんですよね。

パルテノン神殿における神性の表現とかケルン大聖堂の構造様式とかまあ確かにうんという感じ。けど『メディアとしてのコンクリート』を読んだからこそうなずける話であってこれだけ読んでもなかなか難しいものはあるかなと思いました。

 

 

4.新訳ベルクソン全集2 物質と記憶 身体と精神の関係についての試論(アンリ・ベルクソン

全集のうち1巻を借り損ねてしまったのですが、結局これが一番いいところらしくつまみ読みをすることになってしまいました。

以前に『物質と意識』というポール・チャーチランドの本を読んだのですがそれよりもむしろ読みやすかったです。これを読んだところで何をわかったといえるわけでもないのですが確かにドゥルーズスピノザに続いてベルクソンについて言及したのもわからないでもない、というか時代としてこのことを述べられるのがたぶんすごいんやろうなという感じ。

神経科学的な測定ができなかったときに心身二元論を離れるのって非常に難しい気がするんですが記憶というコンテンツを通すことで哲学を具象に落とし込む感覚です何をいっているかわからなくなってきたぞ

 

 

5.RePUBLIC 公共空間のリノベーション(馬場正尊)

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

 

何がよかったって書いてある内容はむちゃくちゃ難しいというか高度なこと書いてあるのに、デザイン性が非常に高くてシンプルなことです。たぶん文字だけにしたらものすごく難しく書けると思う。

法律と法律の隙間、モノとヒトの隙間、モノとモノの隙間、ヒトとヒトの隙間を埋めるための技術ってなかなかええもんですね。

 

 

6.トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト(トラフ建築設計事務所

トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト

トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト

 

 写真いっぱいで見ていて楽しいです!

中身については結構読んだとき自分は厳しい印象をいだきました 先に公共空間のリノベーションを読んでいたからかも知れませんが。アート性やメッセージ性のあるものは住みにくい。使いにくい。利用者を選ぶ。それは果たして『建築』といえるのかなー、というのはたまに思うんですよね。

本としてはめっちゃおもしろいです。

 

 

7.動きすぎてはいけない:ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学(千葉雅也)

動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学
 

もうちょっとやわめの本かと思いきやガチ哲学本でした(博論の加筆修正らしいです)。

ドゥルーズのバックグラウンド全く知らないままにドゥルーズ読んでいたので、こういう解釈本もええかなと思って読んでみました。

過剰接続について考えるきっかけになった本。耐えねば。

 

 

8.透層する建築(伊東豊雄) 

 

透層する建築

透層する建築

 

これの中で好きやったのは最後の方になって建築物と身体感覚についての章が出てきたあたりですかね。それまでは章立てして色んな建築に関する論考が並ぶんですけど建築の中に生身の人間がはいったとき、皮膚の感覚の延長として建築あるでって話が出てきたらなんか嬉しいですよね。

老人ホームのデザインとかはトラフのインサイドアウトでは出てこないであろう話ですしとても面白い。

 

 

 

9.反アート入門(椹木 野衣) 

反アート入門

反アート入門

 

 余談ですけどこの表紙について、たしか『デザインの骨格』かなにかで触れられていたような気がする。いや、デザインの骨格でなくて、『x-Design』だったかな・・・。

むかし読んだ本に『反社会学入門』というのがあるんですけど(パオロ・マッツァリーノ著)いずれも面白かった。クサいものに蓋をするというより自分はクサいものはとりあえず臭ってみる、即座にフレーメン反応するみたいな。

最後近くになって接続過剰、さきほどの『動きすぎてはいけない』で出てきたようなくだりがあるんですよね。アーティストたちの異様な界隈、といいますか。あつまり。私はそれが、『作品が人間自身を超えられない間に求める有機的なつながり』なのかなあと思ったんです。

ヒューマニズムに依拠した作品はなんであれチンケだと思っています。優れた作品を残す人間が人間として優れている必要は一切ない。勿論犯罪なんかは裁かれるべきですが。作品と人間とは切っても切れないものですが、いつしか人間個人の手を離れて作品が独り歩きをはじめたとき、人格がついてくるようでは作品として与格されないと思うのですよ。これ本の感想じゃないな。結構面白い本でした。アーティスト気取りの人にこそ読ませたいぞ。

 

 

10.人工地獄 現代アートと観客の政治学(クレア・ビショップ)

人工地獄 現代アートと観客の政治学

人工地獄 現代アートと観客の政治学

 

副題あまり読んでいなかったのでアートアートした本かな~~~~サブカルメンヘラが火を噴くで~~~~~って思って読んだらもんどりうってこけた感じがします。

近現代の、特に参与型作品(いわゆるパフォーマンスについて)政治的文脈を概説しながらその周縁について述べた文章。けっこう分厚いです。そして参考文献と脚注が本の1/5くらいある。リアル。

肉体的なパフォーマンスについては『肉体のアナーキズム』を読んでいたのですが、確かに時代背景を理解しないと特にパフォーマンスについてはその意味や位置づけがわからないんですよね。自分はあまり社会に訴えかける型のものが好きではないのですが、だからこそ読んだという感じです。装丁がきれいで、ずっと読もうと思って読めずにいたのでうれしい。

100冊読了記

4月から読んだ本が、100冊になった。

実は、100冊読破という試みは私が始めたものではない。Twitterをしていて、知り合いの知り合いがたまたまそんなことを話していて、「おっ面白そうだな」と思ったからやり始めた。確か、『読了に明確な期限は設けない』『いいと思った本を紹介しあえる』ことが前提で、それですごく気軽に始めたんだった。

特に期限を定めなかったから、何年かかることやらと思っていた。実際には1年とかからなかったのだけど。

 

本を読めないからはじめた

家族がわりとみな読書家で、自分はむしろ本を読まないほうだった。

というか、読めないのだった。勿論読むのが遅いというのもあるけど、気に入らない本はびたいち読みたくないというたちで、家にたくさん本はあるけれども年間10冊、多い時でも30冊を超えるか超えないかというくらいだった。ほとんど小説。浅田次郎とか、小川洋子とか、梨木果歩とか。ときどき国内外問わず純文学を読んだくらい。

 

それがあるときを境に、ほとんど小説を読まなくなった。

というより、小説を読むペースはそれほど変わらないけど、あまりにもたくさんのそれ以外の本を読むようになった。多分それがはじまったのが、専門学校に入りなおしたときくらいから。

 

好き嫌いせずに本を読むのは難しい。そして、今回読んだ100冊のうち内容がどれくらい理解できているかといえばわずか数パーセントに過ぎないと思う。哲学の類いを含むからだけれども、誰かが終生の研究対象にするような本をわずか数日で読むのだから、当たり前といえば当たり前だ。ただ、誰かがどこかでいっていたんだけれども「読書するといえるのは再読以降」いうのを自分は信じていて、初回の通読というのはいわば「出会い」に過ぎない。

だから、初回の印象や、「これにまつわるなにかにもっと出会いたい」みたいなふわっとした読書でいいのではないかなと思って肩肘はらずに読み始めたのが今回だった。

パラ読みよりはずっと読み込んだけれど、精読というにはあまりにも拙い。文字通り『通読』くらいの意味しか、それぞれの本には与えられていない。

 

ただ、無学な自分が学問と「とりあえず出会う」にはこれくらいしかしようがなかった。出会いが出会いを呼んでくれるのは、どの本を読んでいても思ったことだ。

 

 

 

なんとなく決めていた自分ルール

・自分が生業としている職業に関する専門書・雑誌は入れない

・過去に読んだ本も入れない

そういったわけで、「25歳の自分がインタラクトしたいと思ったもの」が基本に挙がる。図鑑も、必要に応じて入れた。雑誌は今後入れる可能性があるのかもしれないけれど、おそらく入れないと思う。

オススメの本は、また後程紹介したい。

けれど、読書体験が次の読書体験を欲しがるものなので、「これ一冊」というものはとても難しいのだ。「あれとこれとこれが気に入った人にはこれもオススメ」というのはできるけれども。

 

 

 

読書体験がもたらすもの

小説以外の読書体験は、読書しながら頭の中に対話がいつも飛び交っている。目で字面を追いながら自分の中に問いが立つ。問いに対する答えが返ってきて(それは目の前の文字からであったり自分自身からであったりするのだけど)、ひとりで本を読んでいるのに誰かと喋っているときのような充実感がある。

おそらく、25歳の自分はとても孤独だったのだと思う。

というか今までずっと孤独だったのではないだろうか。いやこれからも恐らく孤独は感じ続けることになるけれども、『感覚の孤独』がいつも自分を包んでいて、感覚が共有されないことに関してとても苦しいと思っている。

それが、読書の間は、文字を通して感覚のやりとりを行うことができる。それも、話し相手は毎回選ぶことができ、気に入った話し相手に関してはほかの著書を選ぶこともできる。生身の人間相手にこれができるだろうか?

読書体験はコミュニケーションとして贅沢なものだった。実に贅沢だった。

 

 

 

本との出会い方

実は本の半分以上は、自分で購入していない。この100冊読破をはじめたとき、これもルールのひとつとして「1か月に1万円まで、専門書でもなんでも好きな本を買っていい」というものを定めた。というか、1か月1万円本をはじめたついでに100冊読破をはじめたのだ。

けれど、気になる本を購入すると1万円はすぐに突破してしまうことに気が付いた。実際、メルロ=ポンティの『知覚の現象学』なんか8000円するし、買おうものならほかの本が買えなくなってしまうのだ。

というわけで、大学図書館をはじめとする近隣の図書館、スターバックス併設のTSUTAYAで本を眺めて、気になるものを手に取るというのを繰り返した。ちなみにスターバックスでコーヒーを飲んでいる間に未購入にしろ購入済みにしろTSUTAYAの本を読んでいいようだ。まんまと戦略にハマっているけど、家で本を読むのが苦手だったのでそれでも構わなかった。おかげで、近場のスターバックスの店員さんほぼ全員に顔を覚えられ、「いつもありがとうございます」とか、髪を切るたびに「よくお似合いですね」と声をかけられるなど、大変恥ずかしい思いをした。

 

 

 

100冊読破を始める前と後で変わったこと

最後なので好き勝手書いておきたい。以降に関しては自分自身の感覚だから、100冊読破をしたらこれが得られるとは絶対に保証しない。ふつう、100冊読んだところで共有できるものは謎の達成感と共に時間が過ぎたことの自覚だけだ。

 

自分は頭がよくない。

本を読んでいても内容をそれほど理解していない点において、これは自明だと思う。勿論読んだ本について検討する機会がないからというのもあるけれど、100冊程度読んだところではこれはまったく変わらなかった。

 

では変わったこととはなんだろう。

変わったというか、取り戻したものがある。それは空想だ。

空想することを、いっとき自分に禁じていたように思う。夢想したり空想することは、現実的でなく、実現可能性のあることしか考えてはいけないと自分に強いていた。逃げることを許さなかった。そんなことをするのは、夢想のすえに計画することが大抵荒唐無稽だからで、なおかつその計画の頓挫に苦しんだ過去があるからなのだけども。

考えることは自由だ。計画するしないにかかわらず、もっといろんなものを関わりたいと願うことも自由だ。自分の専門領域をある程度確立することで、そこを中心として探索行動を行うのは幼児の行動範囲の拡大にも似ている。怖くなったり、離れすぎたと思ったら、また中心に帰ってこればいい。

というわけで、多分100冊読破を始める前にはそこまで興味をもっていなかった構造物について(写真を撮るのは好きだったけど)もっと好きになったし、音楽や身体知覚についても少し言語化できるようになった。言語化するのはいい。言葉にもできず体の中に鬱滞すると、それ自体が悩みや不安の原因になる。

 

もうひとつ、取り戻しかけているものがある。それは怒り。

怒りは恐らく自分がずっともっているのに抑圧しているもので、抑圧してきたがゆえにたくさんのものを失ってきた。失ってなお、抑圧せざるを得ず、今も自分が感じているたくさんの怒りをきちんと処理できない。

それを、ひとつひとつの本の感情のない様々なシーンで、様々な文脈の違う言葉で語られることで、不満と怒りについて感情を伴わずに説明できるようになった気がする。それは怒りを正確にとらえているとは決していえないだろうけど、元に戻ることが正常とは限らないように、いちど怒りを壊してしまったら違う形で与え直すしかないのかも知れない。

結局は読書体験を通して、自分は自分と向き合い続けているだけなんだろう。

 

 

2週目を迎えるにあたって

1年を俟たずに1週目を終えてしまったので、2週目を迎えるにも自分はまだ25歳のままだ。ただ、色々負担の多かった社会人2年目に100冊読破をやろうと思えたのは結構自分にとってはメリットだったんじゃないか。このままどんどんやっていこう。30歳までに1000冊読めたら楽しいかもしれない。

そんな抱負はごく限られた個人史の文脈でしかないし、これ以上気負うつもりもないのだけど、まあ、100冊読破はいいぞ。少なくとも、悪くはない。

 

101冊目をはやく読みたい。

魔都歩き、数個のプラトー

歩いて考えたことを全部ぶちまけていく。あまり人に伝わるように書く気がないのと、ひとまず自分を鎮めるためのものなので、読むつもりでいてくださるなら先にお伝えしておかねば。読みにくい文章ですみません。最近デザインについての本をよく読んでいるので、デザイン関連の話題がたくさん出てくると思います。

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100冊読破(81-90)

1.2.昨日までの世界(上・下)/ジャレド・ダイアモンド

 

 

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

 

 



 

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

 

 『銃・病原菌・鉄』と『文明崩壊』と同じ著者の本。でもこの本は明らかに人類学だけでなく、『文化』にも基づいているものであったなと思います。

法規による裁きと人による裁き。裁きというか解決というか。それらを民族の風俗のなかで共存させたり、独特のコンテクストに法律を捩じ込んだりすることの無理と、反対にそれがもつ可能性についても論じられています。

また個体の判断力やコミュニティの結合力についてなんかも結構面白かったです。中身をあんまりネタバレしてしまうと面白くないのですが、コミュニケーションや危機管理については結構狩猟採集生活者や先住生活者から学ぶところも多いんじゃないかと思いましたね。これは結構な名作だなあと自分の中では思います。



 

3.x-デザイン 未来をプロトタイピングするために / 山中俊治

 

x‐DESIGN――未来をプロトタイピングするために

x‐DESIGN――未来をプロトタイピングするために

 

デザインのデザイン、というか編者であるこの人の作品が気になって手に取ったものです。

色んな人が作品を交えてデザインの地平について語っていくものなんですけど、内容もさることながら作品それそのものが楽しいのでぱらぱら見るだけでも雑誌感覚で読めます。いい。

 

 

 

4.都市はなぜ魂を失ったか-ジェイコブズ後のニューヨーク論 / シャロン・ズーキン

 

都市はなぜ魂を失ったか ―ジェイコブズ後のニューヨーク論 (KS理工学専門書)

都市はなぜ魂を失ったか ―ジェイコブズ後のニューヨーク論 (KS理工学専門書)

 

都市デザインの方からでなく都市論メインの方を読んだのはこれが2冊目です。1冊目はニールスミスの『ジェントリフィケーションと報復都市』でした。

実際この本の中にも上述の本が出てくるのですが、都市の均質化やジェントリフィケーション、メタボリズムについてひとつひとつ実例を用いて丁寧に説明されています。そして最終的に、都市が持続可能となったケースの成功例についてはその理由を。いやー都市っていいです。いいんですよ。いいったらいいんです…

 

 

 

5.音楽する身体-"わたし"へと広がる響き / 山田陽一

 

音楽する身体―“わたし”へと広がる響き

音楽する身体―“わたし”へと広がる響き

 

これは音楽をやるならば是非読んでおきたいなと思って読みました。

でまあ後半にいたるにつれて音楽するという経験または体験それそのものの話になっていくんですけど、人と音を合わせるのってコミュニケーションのひとつの形だと思うんですよね。だからセッションそのものはまるで言葉を交わすよりも密なコミュニケーションで、相手のもてるものをすべて引き出しながら自分のもてるものを全部ぶつけなければならなという言い訳のきかんもんやと思います。言葉はオブラートに包めますが音は言葉ほどには包めない。

そういうことを思い出す本でした。

 

 

6.知の生態学的転回1 身体:環境とのエンカウンター / 佐々木正人

 

面白そうだなあと思って借りてきました。

読んでいる途中に自分はノーマンの『誰のためのデザイン?』メルロー=ポンティの『知覚の現象学』の間っぽいなあと感じていたようです。

認知科学や哲学は好きな領域なのでおさらいみたいな感じで読んだのですが、発達心理学+アフォーダンス知覚の形成みたいな領域にきた瞬間いきなり自分の中でこの本の優先順位があがりました めっちゃ面白かったです。子供がはいはいをしだしたときに触る両手足の場所、その感覚、認識についてとかもうわくわくします。人間が物質に対して抱いている『印象』の解析にわりと興味があるので。2-3と続くので次が楽しみです。

 

 

 

7.建築のちから / 内藤廣

 

建築のちから

建築のちから

 

○○デザイン講義シリーズで知った方のエッセイ形式の本。エッセイなので読みやすいけどあまり文章が上手ではない、というのは恐らく語りそのものは作品でなされてきたからであり、また人との語らいの間にあるからなんだろうとなんとなく思う。

 

建築は場の翻訳だ、っていっていて、実際にどういうものを翻訳してどのように表されたかが書かれています。さくっと読める。でもデザイン講義シリーズの方が面白いです。若者向けだからかな

 

 

 

8.デザインの骨格 / 山中俊治

 

 

デザインの骨格

デザインの骨格

 

 

ちょうどこれを読んだあと、『デザインの解剖』展にいきました。

デザインの解剖は実際に視覚的にデザインの要素を展開していたのですが、この本はそこにあるプロジェクトや意図、目的、それがもたらした影響についても考察しています。

アップルのアイフォン解体から始まる本です…解体て。

 

 

 

9.場のちから / 内藤廣

 

場のちから

場のちから

 

うん、都市デザイン。

都市計画に含まれた公共建築物というのは造るのにものすごく気をつかうんだろうなと思うんですよね。構造物を作るひとが都市というリヴァイアサンを相手にしなきゃならんのってプレッシャーやろうなあと思ったりします。こっちの方が本は楽しく書かれていたように思います。

 

 

 

10.構造デザインマップ 東京 / 久保純子

 

構造デザインマップ 東京

構造デザインマップ 東京

 

マップなのでどうしようかなあと思ったんですが内容的にいれてもいいだろうと思って入れてしまいました。結構真面目な建築デザインに関する本です。東京街歩きのときに参考にしたくて買いました。ランドマークとなる建物について、その構成であるとか意味について結構しっかり書き込まれています。また東京に行く折にはこれを基に色々見て回りたい。

 

100冊読破(71-80)

1.デザイン学-思索のコンステレーション(向井周太郎)

 

デザイン学 (思索のコンステレーション)

デザイン学 (思索のコンステレーション)

 

 デザインの哲学、という感じ。

今まで哲学から形而上学的アプローチをしていたものの、反対側からとなると結構違和感ありました。視座、地図、地勢図としてのデザインを俯瞰すること。でも哲学に慣れるとやっぱりなんか気持ち悪かったです

記号学のパース、脱構築主義のデリダについてもっと知っておいた方がよかったのかも知れません

 

2.森は考える-人間的なるものを超えた人類学(エドゥアルド・コーン)

 

森は考える――人間的なるものを超えた人類学

森は考える――人間的なるものを超えた人類学

 

 

これもわりと言語学というか音声学みたいなものが出てくる話やったなと思います 森そのものを表現する音声があったりする部族の話とかが出てきます。

最近見たドキュメンタリー映画で『真珠のボタン』というものがあるのですが、あれを彷彿とさせます。

 

3.服従の心理(スタンレー・ミルグラム

 

服従の心理 (河出文庫)

服従の心理 (河出文庫)

 

面白かったです。なんというか実験できる社会心理学のなかでは相当えげつない部類だと思うのですが、権威に対して服従し暴力を振るうことの心理について分析した本。

色々怖い。

 

4.環境デザイン講義(内藤廣

 

環境デザイン講義

環境デザイン講義

 

この環境は、地球環境とかではなくて光や熱といった要素としての環境をデザインすることについての講義です。先に読んだ形態デザイン講義の、前のもの。

熱、光、風あたりの要素についての分析がことに面白かったです 

 

5.ヴィジュアル版『決戦』の世界史-歴史を動かした50の戦(ジェフリー・リーガン)

 

ヴィジュアル版 「決戦」の世界史 歴史を動かした50の戦い

ヴィジュアル版 「決戦」の世界史 歴史を動かした50の戦い

 

こちらはわりと戦術についての歴史的事実を描いたもの。悔しいのは中国史があまり出てこないことですかね…。

ザマの戦いとかが出てくるのは好きなんですが中世が特に弱いので正直ちんぷんかんぷんの戦いもちらほら。でも芸術史に残る絵画の中には決戦を描いたものや将軍、皇帝の肖像が多いのでそういうのが解説つきで見られるのはよかったです。

 

6.殺戮の世界史:人類が犯した100の大罪(マシュー・ホワイト

 

殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪

殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪

 

『暴力の人類史』に並ぶ名作やなと思いましたです。歴史の順に並んでいて、死者数別にランキングづけられ、その虐殺ないし戦闘が起こった理由とその後の動向について簡潔に書かれていて、なんというか世界史を復習し直す気持ちで読めました。こちらは文字通り世界がテーマなので、中国史も日本史も入ってきます。ピノチェト政権、ポル・ポト文化大革命スターリンの圧政からツチ族フツ族の戦闘まで。わりと近代のほうが興味をもって読めました。

 

7.8.怒り 上・下(吉田修一

 

怒り(上) (中公文庫)

怒り(上) (中公文庫)

 

 

 

怒り(下) (中公文庫)

怒り(下) (中公文庫)

 

この本を読み終わった後に、映画を観にいきました。本だけを読んだ感想としては、ああ、やるな、という感じです。信じることって難しいなと思いますし、信じさせることもまた、誠実であればあるほど難しいんかなと考えさせられたり、遣る瀬無くなったり。

吉田修一好きなんですが、大体読んだ後遣る瀬無くなるんですよね。好きです。

 

9.死(ウラジーミル・ジャンケレヴィッチ)

 

死

 

芸術、人文、哲学、全部かき集めて死を表現しようとしたかのような本でした。死とはなにか、どのように定義されどのような文脈で語られ個人にとってどのような経験であり、遺されたものにとってなんであり逝くものにとってなんであるか、というはなし。

フランクルよりは実存よりずっと現象学に近い感じがしますが、基本的にはロゴセラピー的な側面を持っています。老化について書かれていたのがよかった。

 

10.構造デザイン講義(内藤廣

 

構造デザイン講義

構造デザイン講義

 

素材と構築について語る講義。これが3連の本の1冊目です。最後に読みましたが。

メディアとしてのコンクリート、という本を以前読んだのですが、その時にも感じた楽しさを感じました。好き。

 

 

映画感想『リリーのすべて』『怒り』


映画『リリーのすべて』予告編

 

性転換手術を世界で初めて受けた女性(in男性)のはなし。

 

この映画を観ていたとき中盤くらいから泣けて泣けて仕方がなかったんですが、前半が美しくて楽しいからこそ余計にその危うさと儚さがわかってつらくなるのかも知れません。

全編通して素晴らしい映像美です。街中も、衣類も、本当に素敵です。

リリー(アイナー)が一応この映画の主人公となるのでしょうけれど、どちらかといえばゲルダ(その妻)の人間性の強さ、そして脆さにもスポットが当たっていて素晴らしかったです。

 

今年1番よかった映画になる気がする。

 

 

 


【映画予告編】『怒り(Anger)』特報予告TVCM|監督:李相日/出演:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡

 

こちらもよかったです。連日見るべき映画ではなかったかも知れません。

吉田修一が好きなので原作を読んでから行ったのですが、原作を読んでからでもそうでなくても十分に楽しめました。

森山未來宮崎あおいは怪演ともいうべき名演技でしたし、綾野剛妻夫木聡は本当になんというか繊細でいとおしい演技をしてくれたし。

何より撮り方で人肌が本当にセクシーに映っていたのでよかった。いえ、セクシャルな、というよりは肌の質感や温度を伴っていたのでよかったです。撮影方法も、人物にかなり大きくフォーカスをあてているので人間のものの見え方に近い集中ができるのですね。周りが気にならないというか。

 

久々にがっつりアタリの映画を続けて2本も観てちょっと疲れました。