毒素感傷文

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放送大学学部生終了記事

こんにちは。放送大学学部課程を卒業(終了?)することにしました。

卒業というか、選科履修生の継続終了です。一応目的のすべてを達成したからなのですが、奇しくも4年間という一般的な学部課程に相当する年限在籍することになりました。
全科履修生の編入・卒業時に放送大のシステムを中心とした記事はひとつ書いたことがあるので、今回はざっと自分の身の回りのことを振り返った日記にしたいと思います。

 

 

背景環境の変化

この4年間で様々なことがありました。最初の2年間は学部課程に全科履修生として編入しておりましたが、同時にフルタイム病棟常勤をしていたので、試験日程はもちろんのこと科目履修もかなり詰まったスケジュールでこなしていました。
後の2年間についてはクリニックの外来やデイサービスで非常勤をしながら院進するための準備をし、最後の1年(今年度)は放送大の修士全科生として院生をやっています。

できたら昨年度に修士課程に入学できていたらよかったのですが、家庭の事情により急遽退職したり、研究テーマの練り直しが必要だったり、そもそも院進先を放送大にすることで様々な調整が必要になったため、致し方のないこととして捉えています。

 

4年間でやったこと

1.学士の取得(教養)

最初の2年で終わりましたが、無事に「心理と教育」コースを卒業しました。科目内容の選択基準は日本心理学会の認定心理士の要件を満たすこと(後述)、学位授与機構の学位審査(看護学、後述)を満たすこと、それから放送大学エキスパート(科目群履修認証制度、後述)の好きな科目群から選ぶことでした。
4年の間に合計120単位ほどを取得したようですが、記憶の範囲内では10単位分ほどを除いて結局ほぼすべてが上記のいずれかの要件を満たすものでした。しかしながら、これもいつも言っているのですが放送大エキスパート非常に優秀な科目構成になっていてで、興味のある科目をつなげて行くとその分野が効率よく履修できるようになっているんですよ。嬉しいことです。

 

2.認定心理士

これも最初の2年でほとんど単位を修得しました。面接授業のみ受ける日程が合わずにずれこんだと思います。

もともとは認定心理士をとるために入学したのもありましたが、そもそも認定心理士を欲しかったのは臨床心理に興味があったわけではなく、認知科学系のポピュラーサイエンスの本を読んで興味をもったからでした。なので未だに認定心理士のためにとった授業が臨床心理的に活きているわけではありません...(統計関連科目はどの分野でもフル活躍しますが)。強いていえば、もともと危機管理と認知科学の関連に興味があったのでそれをそのまま学士(看護)の取得のための学修レポートに使いました。

 

3.学士(看護):学位授与機構審査中

もう2次審査の受験から半年近く経つんですが、某ウィルスの影響でどうやら審査が遅れているようです。とりあえず1次のレポートと単位審査は満たしたようでした。
学位授与機構のシステムと放送大のシステムがわかりづらいですが、今までに自分が卒業した学校(大学でもよい)+放送大で追加科目取得で学位授与機構に取得単位の審査を申請する資格を得ます。これに加えて学修成果レポート(要するに卒論の代わりになるようなポジションの成果物)を作成することで認定審査のための試験に臨むことができます。

 

4.放送大学エキスパート(科目群履修制度)

他の記事でも言及していますが、「教養学部心理と教育コース卒業」という文字列はあまり何かを説明しないな、と感じていました。認定心理士もとりましたがとれるのでとっただけで、興味が臨床心理系なのか認知心理系なのかもわかりません。

よって、それらを説明するため(と、最低限の学識について証明するため)に科目群履修認証制度を使おうかと思いまして。使う機会はあまりありませんが。(...)

 

結局、途中から目標を追加したものも含めて5つほど取りました。最後の「データサイエンス」が設置されたのが遅めだったので科目履修が遅くなりましたが、4年のあいだ半年ずつの履修で切れ目なくそれぞれの要件となる授業をとっていた気がします。

ちなみにこの制度、科目が更新されると共に時々コースそのものの見直しが行われるので、「履修認証がなくなったコース」とかも存在します。というか、5つとったうち3つは廃止予定です。まあ学んだことが消えるわけでもなければ何かの資格でもないので、「まとまった何か」を学んだという説明としての機能には大して差しさわりないと思っています。

https://www.ouj.ac.jp/hp/gakubu/expert/assets/pdf/expert_2021_guide.pdf

1)人にやさしいメディアデザイン

...という科目群です。社会的意義としては下記のようなものを目指しているそうです。認知心理やUIの勉強をしたかったのでとりましたが、人気がなかったようで、2020/9時点で認証取得者は129名(公式より)だそうです。129名のうちの1人になったぞー(?)

なお、認定心理士の構成科目を認知心理寄りにすると、実はこのプランの要件をかなりたくさん満たすことができます。全科履修生の2年の間に認証申請したと思います。

メディアと人とを上手に結びつけるには、その設計や仕組みが人の行動や特性に基づいて人間の側から考えられていることが重要である。本プランは、メディアの扱い方と、その人間を中心にしたデザインに関する基礎知識を獲得し、有効に活用できるようになることを目指す。

 

2)現代社会の探究

これもプラン整理により消えてしまうものなのですが、社会学・経済学入門という感じの構成になっています。

現代の社会 ・ 経済の構造を理解し、独立した市民として社会に向き合う視点を確立するために、社会学及び経済学の基礎から高度な政策課題の分析までを学習する。

目標がややぼやっとしていますが、the 市民の教養という感じで自分は好きです。こちらも多分「メディアデザイン」と同じタイミングで申請しました。内容が内容だからか、こちらは600人超の認証取得者がおられるようです。

 

3)社会数学

かなり実際的というか、実用的ですしニュースの理解のためとかでも必要な科目構成なんじゃないかなあと思うんですが、必修科目(とらないとそもそも認証を受けられない必須要件となっている科目)が2科目あって、『入門微分積分』『入門線型代数』っていう大学数学初歩の初歩です。

ただ文系出身にはこれがキツくて心が折れそうになりました。別にエキスパート認証が欲しいがために頑張ったわけでもないのですが、知っていて損はしないし恐らく理系のことを多少なりともやる気があるのであれば知っておかなければならないという義務感から取り組みました。2018~2019年度くらいでぼちぼち科目を満たしていって、申請したのは2020年に入ってからだったと思います(線型代数が終わらなかった)。

 

計量社会学(思想・理論よりか実証主義系)で大学院に行きたいとか、手法として計量的なことをしたいのであればとるべき科目があるなあという印象です。微積線型代数に関しては、多分高校で数学をきちんとやっていれば特に困らないような内容だと思うんですが、自分はかなり不得手だったのでキツかったです。けどまあなんとかなります。公式での申請者も400名強と少なめです。

社会現象の理解や実践のために、数学の重要性はいよいよ増している。現代社会においては、あらゆる現象からデータが集められ分析されるが、正しい結論を導き、また導かれた結論の妥当性を判断することは容易ではない。本プランは、その基礎となる数学 ・ 統計科目及び社会系科目を学ぶことにより、その論理的理解の素養を身に付け、確かな数学力を持ち、社会科学を理解する人材を育成する。

 

4)計算機科学の基礎

現代社会は計算機なしでは成り立たないほど,計算機の重要性は増している。計算機やソフトウェアの基本的な仕組みを理解していることは,計算機自体やソフトウェア,サービスを開発するためだけでなく,職場や家庭においてソフトウェアやサービスを安全かつ効果的に活用し,仕事や生活の質の向上を図る上でも重要である。本プランは,その基礎となる計算機科学および数理系の科目を学ぶことにより,特定の応用分野によらず広く計算機に関わる問題に対応できる人材を育成する。

いい説明文ですね(?)。言語処理に元々興味があったのでそれがわかるような科目をとっていこうと思っていたのですが、ハード面からソフト面まで幅広く学べるよい科目構成だと思います。

繋がりとしては、メディアデザイン(ソフト)→計算機科学の基礎(ハード)みたいな感じのものがあります。が、メディアデザインがUIを目的としているのに対して計算機科学は中で動いているアルゴリズムだのデータ分析だのを目的としているので、これも文系には初手だと少しハードル高かったです。2-3年かけてゆっくり履修して、「社会数学」と一緒のタイミングに申請しました。というかこの2種類は構成科目がよく似ています。

申請者は250名弱だそうです。思ったより少ないですね、これもいい科目構成だと思うんですが。公式ですと、このプランを達成した後に基本情報技術者応用情報技術者を目指せばいいよ、という案内もついていますね。

 

5)データサイエンス

データの中に潜む有益な情報を見つけ出し、ビジネスに活かして新しい価値やサービスを創出したり、生活に取り入れて健康で豊かに生きることを支援したりする試みが始まっている。本プランはデータサイエンスの基本要素となる科目を学ぶことにより、数理的思考とデータ分析に基づいて様々な問題を解決できる人材を育成する。

計算機科学の基礎とほとんど変わらんやんと思ったんですが、そうなんですよね。そうなんです。

 「計算機科学の基礎」や「人にやさしいメディアデザイン」よりもさらにビジネスとマーケティングを意識した構成になっています。ぶっちゃけ上ふたつもってたらいらんちゃうかと思うような内容ですが、つい癖で手が出てしまいました。単に、必修になっている「データベース」と「数値の処理と数値解析」という2科目もなんとなく興味があったからというのは大きいです。いずれにしても言語処理をやるにあたって履修して損のない科目でしたし、むしろもっと深く学ぶべきであったと反省しています(なんもわかってない)。ただ、「数値の処理と数値解析」も高校以降に数学をほとんどやっていない人間には難しく感じられました。Twitter等で状況を調べると、まったく問題なく履修されている方もおられたので、

開設されたのが2018年度だったかで比較的新しいので2020/9時点では申請者が50名にも満たないのですが、恐らく今後増えていくのではないかなあと思っています。今回でやっと申請できることになりました。

 

6.大学院進学

院進にあたって1年間の準備期間を要したのは単に常勤を続けながら大学院の研究計画を詰めていけなかったからなんですが、その1年間に上記の学部科目エキスパートプランを通して情報学系の基礎の授業を受けていました。修士1年が終わる今になると、この1年で蓄えを作っておいてよかったなあという印象です。放送大は大学院も社会人学生ばかりですので、入学してから院の授業を取るのも大変ですし、学部ならなおのことです。

これを回避する方法として、大学院に全科履修として入学する前に科目・選科履修生として修得した単位も卒業単位に換算できるので大体はそれをお勧めされていますが、私の場合は大学院に進学してからも最初の半年はたしか9科目くらいの放送授業と学部の試験を抱えていたと思います。忙しかったです(白目)。

その分仕事が非常勤で疎なスケジュールなのでなんとかなりました。

 

7.学会発表

他の院生生活記事で書きましたが、昨年末に初めて学会に口演を出しました。指導教員のお陰に他ならないのですが、やる気が出ましたし、演題を出せてよかったです。医療系の人間が医療系に出すならいざしらず、別分野でこれができたのは自分としては大変嬉しいです(実益も鑑みれば、通常は自分の分野に出してこそかとは思うのですが...)。

 

このあと

段々学部生としての生活から遠ざかってきておりますが、4年間学び続けて、最終的に学部で修得した単位は4年制学部を1回卒業するのとほぼ同等程度になりました(4単位足りないですが他で学修レポート作成しているので許してください)。

仕事もしつつ家庭環境も変わりつつ、院にも入り、入学当初とは状況がかなり変化しました。

 

学部生はこれで一旦終了しますが、放送大には本当にお世話になりました。少なくともあと1年は院生としてお世話になるのですが、終わりが見えてきているのはやや寂しくもあります。

 

これからのことについては少し道を固めつつあるのですが、まだまだ公表できるような段階にないのでぼちぼち進めていきます。ここにもまたいつか、よい報告ができると嬉しいのですが。