毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

社会人生活記 -にねんめ編

臨床で働きだして2年目が終わろうとしている。

正直、2年前の春は気分はどん底・お先まっくらの状態で(仲良しだった恋人と破局したところだったのだ)、じぶんはこのさきいったいどうやって生きていくのかと絶望している状況だったしひとりで生きていく自信がまったくなかった。でも、1年やり通して、そして2年目も終わろうとしている。他人には当たり前のことだろうが、人生が停滞しまくっている自分にとってはひじょうに貴重な実績・自信の源になっている。ありがたいことだ。

streptococcus.hatenablog.com

 

1年目の終わりに書いた記事がこちら。

ああだこうだ書いているが、正直1年目を耐え抜けたら(自分は)2年目はさらに最適化・構造化を進めるのみだと思っている。1年目で体得した技術やフローはもっと速度をあげて効率化させ、他のことを詰め込めるスペースを作ること。

 

1.臨床において2年目で新しくはじまったこと

うちの場合は、長期入院者(つまり状態が悪かったり退院時にはなんらかのサポートが必要な人間の退院調整を含む)のプライマリを務めることだったのだが、これがもう自分にはめちゃくちゃハードだった。なにせ、1年で受け持った主要な(長期入院の)患者は皆さん、亡くなられたのだ。

勿論個人情報にあたるので詳細は伏せるが、病棟の特性上、老いも若きも転がり落ちるように病状の悪くなる科である。彼らはときに最期まで積極的治療の対象となり、緩和ケアの介入のタイミングに難渋する。家族との時間も満足にとれず、それまでの人生において(病に侵されているために)達成できたことも少なく、実存の苦痛と身体の苦痛の両方に苛まれながら亡くなっていく。看ているこちらとしても、たまらなくつらかった。それが、今年度の上半期だった。臨床2年目、1年働いただけではなにも身についていない状態ではなにも解決には導けなかったし、解決などないことを思い知らされた。詳細を伏せた状態で誰かに話してみたところで心は軽くならず、結局年末くらいまでそのしんどさは引きずることになった。勿論プライマリを務めた患者以外にも病棟では多い時で週に2名くらい亡くなられたりと、情緒的にもおそらく激務であったろうことがわかる。

 

2.死とは何か

人間の死とはなにか、1年目から(1年目もやはり亡くなる方は多かったので)色々考えていた。ケアする人々の心に突き刺さるものがどうしてこんなに鋭く痛むのかも、なんとなくわかるようになった。

時間を共にすること、とよく人はいうが、私たちはどの次元であれニーズを満たすために存在している。自律の段階をニーズとするひともいれば、生理的欲求を満たせない人もいる。いずれもその時間に必ず場を共有し、肉体がふれあい、互いに互いを五感で認知している。それが失われていくこと、弱っていくこと(勿論反対もあるが今はそこには注目しないでおこう)、を文字通り「肌で」感じることが、つらさの源であろうと自分はいまなんとなく思う。

カルテ上に反映される画像・検査データも勿論重要な情報ではあるけれども、その状況を元手に臨床症状としての痛み・不快感・虚弱・食欲不振・不眠etc...ときになにをもってしても「なおす」ことのできない症状に出会うとき、その症状に侵されている個体・肉体・実存と対峙するとき、自分はえもいわれぬ無力を噛み締める。1年目でなにかできるようになるというのはどだい間違っている、と1年目の終わりに書いたが、2年目にはより『無力さ』の正体が明らかになってきたような感じがある。

今まで噛んでいた砂の味を自覚するようなものだ。実にまずい。

 

そして終止符としての死が訪れる時、自分はようやくそれまでの自分たちの営為がどんなものであったかを「過去のものとして」振り返ることができる。それ以上先が存在しないからだ。あったとしても、別の人間に活かされるという実に前向きな名目で行うことができる。現存する生命を目の前に対峙するとき、そこにたましいの(自分も他人も)休息はない。生きることは実に厳しいことであるな、とこの1年でひしひしと思った。それはいわゆる、臨床にいない人がいうような「金のかかる無駄な延命」のようなものではない。凄絶な闘いの末に亡くなるからこそ、それに付き添った家族にも勿論本人にも、いわれようのない敬意が自然と表される。自分にできるかといわれればまったく自信はない。自分たちが仕事として行えることも、そんなに多くはない。本人がもともと持っているポテンシャルをうまくいくように調整するだけのことだ。うまくいかないときに、できることはそう多くはない(こういうと方々からおしかりを受けそうだが)。

 

かくて自分はこの1年も本当に多くの死と向き合った。

そのせいか、死に向かうひとの要望にはなんとなく敏感になり、またひとりのケアワーカーとしても最低限の居場所を確保できて自分の要望も職場に通しやすくなったのでちょっとだけ自主性のあることができるようになった。最期の外出、最期の入浴、最期の...、結果的に『最期』になってしまっただけなのだが、その偶然が本人や家族の些細な思い出になったことをよそから聞かされて驚いたことが何度かあった。常に無知と無力感に苛まれているけれども、そういう行為にいちおう意味はあるのだと(自分は本当にそんなに深く考えないでやっているので)とらえることができるようになった。

 

このままいくと、ブラックジャック系というよりキリコ系の臨床者になりそうな感じはある。

 

3.私生活ではじめたこと

1年目と大きく、これだけは変わった(変えた)といえることがある。このブログかTwitter、いずれかを追っていただければわかることではあるが、勿論読書である。

もともと自分はそれほど読書家というわけでもなく、実家の人間がよく本を読むのでまあつられて自分も、という程度だった。多くは小説だった。

それが大きく変わったのは今年1年のことだ。あまりにも本を読めていないことに焦りというかいらだち・欲求不満のようなものがあり、「そうだ、1か月に1万円分だけ好きなだけ自分のための本を買おう」と思った。最初は専門書でも雑誌でもよいつもりだった。これがいけなかった。

 

streptococcus.hatenablog.com

結局は100冊、8か月足らずで読み終えたのだった。

そしてその後2か月強でもう100冊を読み切った。

年度末までまだ少しあるけれど、今読み終えた本は218冊。数で測るものではないけれど、そこそこ読んだのだなあという実感がある。

臨床にいて上記の知覚に耐え兼ね、自分は本の世界に逃げ込んだのだけど、小説という「空想」ではなく学問という「他の視座」だった。

 

まるでカメラを様々な角度から構えるように、臨床という場を諸々の視点から切り取ることがだんだん趣味のようになってきた感じである。

 

4.読書とは何か

自分にとって読書とはこの1年、なんだったのか。

実にいろんな本を興味の赴くままに読んだけど、1年目の終わりに書いたことに少しだけ答えがあった。

 組織やシステムを変えたいのならばその前に、その構造を知ることは大切なこと。

SNSで見かける意識が高いだけの学生にできていなところは、そこかなあ、と思う。反対に、意識が高いだけの職業人にできていないところは、システムに既に組み込まれてしまっているから既存のシステムに対する根本的な解決策を想像できないこと。思い浮かびもしないことを、実行することはできない。だから別に学生が偉いとか職業人が偉いとかそんなことを言いたいわけではなくて、結局想像力の欠如が停滞を招くといいたいだけ。

自分がやりたかったのは想像する力の涵養だったのだろうか、という気がした。様々な角度からものごとを見るだけの視座の獲得。

 

実は2年目のなかばに、通信大学に入学しようとして、書類不備というアホみたいなミスで半年先に延びることになった(今現在書類を探し回っているので半年間で何も学んでいない阿呆である)。一応心理コースをとろうと思っているのだけど臨床心理とかに興味があるわけではなかった。どちらかといえば「知覚の探求」をしていきたいのである。

それにあたって自分が知りたいのは結局なんなのか、何をどう変えたいのか知りたいがための時間が、ミスって延長した半年の期間であったように思える。

 

100冊の次の100冊があまりに早かったのは目的が明確だったからかもしれない。いや、冬が寒かっただけだ。多分そうだ。寒すぎて引っ越しした。

 

 

それもつかの間、冬は終わり、暦の上では春が来た。3度目の春になる。

これからなにをしようかな。

2012年08月22日07:26

薬缶の音がする 。私はブランケットを抱いてソファに蹲る
時々珈琲を飲む

窓を開ければ肋間神経を苛むほどの風

中庭を囲んで1200人の生活が営まれている
可視空間に不特定多数の生活を想像すると、
途方もないような
嬉しいような悲しいような愛しいような憎いような
複雑な気持ちに襲われて指一本動かなくなる

 

窓を閉めソファに戻る
ブレザーはいつもどうしていただろう
通学時間が極端に短く綺麗なままの制服

授業中に耐えられなくなると手のひらを切った
少しだけで痛いから
何故耐えられなかったのか

行先が線路しか無くとも
それは死んだら嘆き悲しんでくれるひとがいるとわかっているから

 


傲慢な話だ


切ることも誰かを傷つける
わかっている

 

私がめちゃくちゃに踏みにじってきた

そんなもんだろう
誰でも

 

おはよう世界

100冊読破 3周目(1-10)

1.「ものづくり」を変えるITの「ものがたり」―日本の産業、教育、医療、行政の未来を考える(廉宗淳)

情報系コンサルタントされていた方の本。電子カルテ導入に携わったとのことでちょい興味持って読んだんだが、面白かった。真面目でいい本でした。行政系システムの解説とかとてもよい。日本と韓国の情報系ネットワークの構築、全然手法が違うので面白いといえば面白いけど比較されすぎて鬱陶しい人もいるかもしれない。読み物にはいいです。

 

2.「他者」の倫理学 -レヴィナス親鸞、そして宇野弘蔵を読む(青木孝平)

「他者」の倫理学  -レヴィナス、親鸞、そして宇野弘蔵を読む

「他者」の倫理学 -レヴィナス、親鸞、そして宇野弘蔵を読む

 

仏教は一般的な日本史で読み、哲学は現象学ヘーゲルフッサールーメルポン&サルトルで止まっていたのでレヴィナスの概念をさっと考えるにあたってよかったのだが経済学に関してはマルクス資本論を1巻だけ(全14冊)しか読んでないのでよくわからんとしか言いようがなかった。他者を前提として現状分析的なものを展開したいのであれば哲学ー仏教ー経済学、というよりアマルティア・センやジョン・ロールズのように貧困に関する法や経済学に依拠した方が方法論は出てきそうなものだが。著者が経済学のひとなので経済学における他者性の倫理学を宙に投げたような感じではあった。つまりこれは答えではなく、契機なんだろうという気がする

 

3.グローバル化進む日本企業のダイナミズム(みずほ銀行国際戦略情報部)

グローバル化進む日本企業のダイナミズム

グローバル化進む日本企業のダイナミズム

 

東南アジア各国の経済と雇用の形態とかインフラの整備率とかかなり面白い。あとは中東・アフリカ圏とか。文化を理解するに宗教と経済をなくして達成し得ないなという気がしてくる 面白い。ものを売る、資本を投下するということにおいてやはりお金が一番ものをいうというかカネや価値がいちばん国家という枠組みを軽々と超えられるのに対して、文化やインフラ・制度をいかにして乗り越えるかというのが面白く書かれている。硬めの本に見えるし実際そうだけど、読み物としても面白かったです。

 

4.【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ(スティーブン・ロビンス)

【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ

【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ

 

これ非常に面白かった。ドラッカーの『マネジメント』は経営そのものに関する話なので結構人間のダイナミズムからは遠いと感じたけれどもこれは組織における人間のふるまいそのものに着目して展開されるため終始楽しんで読める。臨床の人に是非おすすめである 経営管理とか興味なくても経営には参画しているし、感情を極力建て前だけにしたとしても建て前の感情の揺れ動きもあれば裏側の感情の揺れ動きもある。別に自分も興味があるわけではないのだが『なぜうまくいくのか/いかないのか』とかがちょっとわかる

 

5.心という難問 空間・身体・意味(野矢茂樹

心という難問 空間・身体・意味

心という難問 空間・身体・意味

 

メルロ=ポンティの『知覚の現象学』が現象学扱いだとするならばこの本は知覚そのものを取り扱う つまり知覚という前提そのものを問い質すことからはじまる。うーんしかしこれ1冊で何かわかるかというと微妙だな。『対象・空間・身体・意味』っていう知覚の4要素はすごくいい概念、わかりやすい。現代版『知覚の現象学』かもしれない、とは思う。知覚イメージの話はベルクソンの『物質と意識』を髣髴とさせる。ただ、あえて本書を読む必要があるのは恐らく他人と自分の知覚の違いや世界の知覚の様式、物質の形質について悩んだり問題にいきあたったことがない人だ。幻覚や錯覚は知覚イメージではない、っていうくだりがすごくよかった。本人にとっては現実なの。あまりに荒唐無稽でも、無視できるようになったとしても、薬でコントロールできるようになったとしても、それは本人にとって現実の世界での出来事だと忘れちゃいけないなあとふと思い返した。

 

6.戦後東京と闇市:新宿・池袋・渋谷の形成過程と都市組織(石榑督和)

戦後東京と闇市:新宿・池袋・渋谷の形成過程と都市組織

戦後東京と闇市:新宿・池袋・渋谷の形成過程と都市組織

 

東京の地理に詳しくないと読めない本。お住まいの方には是非手に取っていただきたい。

都市のメタボリズムとはよくいったもので、本当に時期によって代謝するように中身がゆっくりと入れ替わる。面白いことに焼け跡の東京は、蛤御門の変の後の京都のように政治主導ではなく取引の場として何回も代謝を繰り返したことがわかる。そういうのが都市の年輪として身に刻まれているから、もともと東京に住んでいる人はあまり気負いがないのかも知れない。自分には点としての東京、それもいまの副都心しかわからないので代謝の過程を楽しむ余裕がないのかもしれない 下町としての東京にもあまり魅力は感じていないしな

自分が好きなのはマイナーチェンジを繰り返すことそのものの回数が多過ぎてまるでがん細胞のように増殖と崩壊を繰り返す化け物じみた虚構的側面であるから、こういう素顔を見ると不思議な気持ちになる。古代ローマの遺構の上に中世の建物があり、その上に近代建築があるようなものなのかも知れない

 

7.読書について(アルトゥール・ショーペンハウアー

読書について (光文社古典新訳文庫)

読書について (光文社古典新訳文庫)

 

 …創造的精神に導かれる者、すなわち自ら自発的に正しく考える者は、ただしき道を見出す羅針盤をもっている。だから読書は、自分の思索の泉がこんこんと湧き出てこない場合のみ行うべきで、これはきわめてすぐれた頭脳の持ち主にも、しばしば見受けられる。

考えがいま頭の中にあるということは、恋人が目の前にいるようなものだ。私たちは、この思索を忘れることなど決してない、この恋人がつれなくなることなど決してない、と考える。だが、…どんなに素晴らしい考えも、書きとめておかないと、忘れてしまい、取り返しがつかなくなる危険がある。

食事を口に運んでも、消化してはじめて栄養になるのと同じように、本を読んでも、自分の血となり肉となることができるのは、反芻し、じっくり考えたことだけだ。

終始心惹かれる文章でした。短い本ですがぎゅっと中身が詰まっているというか読む価値がある。往時の言語に関する意識やその崩壊過程に対するショーペンハウアー自信の熱意もある。

哲学の本を読んでいてわくわくすることってそう多くはないのですが、この本はわくわくします。本を読む人にほどお勧めしたいし、本を読まない人にもお勧めしたい。

 

8.ケアの本質―生きることの意味(ミルトン・メイヤロフ)

ケアの本質―生きることの意味

ケアの本質―生きることの意味

 

 メイヤロフが哲学畑のひとであることを知らなかった。臨床哲学って感じの本だけど、しかし私はあまり口には合わなかった。言葉は平易で非常に読みやすい。新しい訳ではないけど十分に取り組める。看護師ではなく看護学生や福祉の学生に是非おすすめしたい。なぜ口に合わないかというと、『臨床』にいる人間にとって、特に考えずにいられない人間にとって、臨床の哲学とは常に後追いに過ぎず、臨床にある壁は臨床哲学によって解決し得ないからだ。私の問いに答えてくれる本ではなかった。臨床にすでにいる人にはもっと他におすすめできる本がある。ガワンデの『死すべき定め』、フロムの『愛するということ』など。これは学生で読んでもいいと思う。なぜそんなにメイヤロフがちやほやされるのか私にはわからん。学生の頃からメイヤロフは名前とこの本の名前だけは知っていたんだが。ケアそのものについてのこういう解釈はあまり好きじゃない。『場』のことについて述べているが、そこに具体性がないからかもしれない。ケアそのものについてもはっきりとした定義はないままに進む。臨床側から見ても哲学側から見てもこの本は不十分なように思えてしまう。いや、臨床であまり哲学に触れずにきた人にとっては勿論良書なのだろう。

 

9.空間 建築 身体(矢萩喜従郎)

空間 建築 身体

空間 建築 身体

 

 閾が面白い。人間の触視知について、つまり視覚による先験的な触覚の知覚について。人間という個体にそれぞれの、クッションとなる領域の空間があって、それを突き破り侵入する知覚については不快を覚えるというもの。パーソナルスペースに似ている。この閾の感覚が敏感な人と鈍感な人がいる。広い人も狭い人もいる。

なるほど空間における認知とか心理学ってこういうふうにとらえることができるのかーという感じでした でも後半にいけばいくほど読むのは大変になりますな。

 

10.野生の思考(クロード・レヴィ=ストロース

野生の思考

野生の思考

 

ジャパリパークが流行っているので読みました。

私は、『実践』と慣習的行動の間には常に媒介項があると信じている。その媒介項が概念の図式なのであって、その操作によって、互いに独立しては存在しえない物質と形態が、構造として、すなわち経験的でかつ解明可能な存在として実現されるのである。

日本でいうと柳田國男の『遠野物語』にも似た各地各民族にわたる透徹した比較。

構造主義の祖とはいわれていますが、どちらかというと構造主義を拓いたことよりもそれによって民族間・種族間の差別感情のいっさいを排除してそれらをすべて要素化した点に功があるのだろうなあと思いました。勿論人類学も進みましたから今ではもっと発達した理論がそれぞれあるのでしょうが、それを所謂白人世界の人間がやることに意味があるのかもしれません。当時は風あたりの強かったことでしょうし。あと、最初の文が『メルロー=ポンティの思い出に』だったのでびっくりしました。そういう繋がりだったことを知らなかったもので。

 

100冊読破 2周目(91-100)

1.いのちの生成とケアリング:ケアのケアを考える(丹木博一

 

いのちの生成とケアリング: ケアのケアを考える

いのちの生成とケアリング: ケアのケアを考える

 

ケアワーカー、それも学生向けの1冊。あるいは臨床一本でやってきたひとの振り返りになるような臨床哲学の入り口のような本。

わたしには易しかったというか、ちょっともう読んでしまった感はありましたがおすすめはできるかなと思います。

 

2.教養としての認知科学鈴木宏昭)

教養としての認知科学

教養としての認知科学

 

認知心理学とかでなく、科学。

哲学も含めて認知に対するあらゆるアプローチをざっと概説したような本でした。読みやすいし偏りもなくて、意識とか認知とかその辺りの本を読んだ限りではこれとダマシオの『自己が心にやってくる』 が1番のおすすめのような気がします。

 

3.人工知能 人類最悪にして最後の発明(ジェイムズ・バラット)

人工知能 人類最悪にして最後の発明

人工知能 人類最悪にして最後の発明

 

うーんこれは…っていう本でした。今時二束三文のディストピア系SFでもこんなん書かへんわ

 

4.不平等の再検討ー潜在能力と自由(アマルティア・セン

不平等の再検討―潜在能力と自由

不平等の再検討―潜在能力と自由

 

豊かな社会で貧しいことは、それ自体が潜在能力の障害となる。所得で測った相対的な貧困は、潜在能力における絶対的な貧困をもたらすことがある。豊かな国において、同じ社会的機能(例えば、人前に恥をかかずに出られること)を実現するために十分な財を購入するには、より多くの所得を必要とするかよしれない。同じことは『コミュニティーで暮らしていける能力』についても言える。ーアマルティア・セン

 

引用は結構名言というか今では知られた概念ですよね。長期化する不景気というか経済成長の鈍化と高齢化に伴う弊害という形で貧困が慢性化する。法や福祉の観点を含みつつあくまで経済学的批判が加えられているのが本件の優れている点かなあという気がします(個人的観測の範囲内では遊びで経済やっている人、困窮に対して無理解極まりない方が多かったので)

 

5.質感の科学ー知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術ー(小松英彦)

質感の科学 ―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―

質感の科学 ―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―

 

これは面白かったです!!

CGみたいな情報工学的な部分から基礎の基礎、物理の部分まで含めて質感についていろんな分野から掘り下げます。果ては言語にまで突っ込んでいって、オノマトペの統計とったら勿論認知心理学とかにも及びます。

誰におすすめというとイマイチお伝えしづらいですが、デザインに興味のある方には是非一度手に取っていただきたい。

 

6.エゴン・シーレードローイング水彩画作品集(ジェーン・カリアー)

エゴン・シーレ―ドローイング水彩画作品集

エゴン・シーレ―ドローイング水彩画作品集

 

エゴンシーレの映画を観に行ったので読んでみたくなって手に取りました。生育歴自体は映画が忠実だったので絵に集中できたのですが、シーレの色遣い苦手なのに目の強さと構図のダイナミズムは凄く好きです。映画ぜひ見て欲しい。

 

7.グスタフ・クリムトードローイング水彩画作品集(ライナー・メッツガー)

グスタフ・クリムト―ドローイング水彩画作品集

グスタフ・クリムト―ドローイング水彩画作品集

 

上の映画で出てきたクリムトクリムト自身も好きなのでぱらぱらと。クリムトの方が時期が古いのもありやや古典的ですが、色遣いは明らかに現代人の感性に近いなあと思ったりします。モチーフが実に女性的ながら、視点は男性のものなのでそのアンマッチ感が妙に不安にさせます…好きだけど。ドローイングはシーレの方が好き。

 

8.まなざしの記憶ーだれかの傍らで(鷲田清一) 

心が疲れると鷲田教授の本を読む。これにも臨床哲学のはなしが出てきます おすすめです。世話をしてきた、されてきたすべての人へ。

 

9.コモナリティーズ ふるまいの生産(アトリエ・ワン) 

アトリエ・ワン コモナリティーズ ふるまいの生産

アトリエ・ワン コモナリティーズ ふるまいの生産

 

日本におけるヤン・ゲール『人間の街』という感じ。人間の街でいいと思う。

 

10.シェアをデザインする:変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場(猪熊純)

シェアをデザインする: 変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場

シェアをデザインする: 変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場

  • 作者: 猪熊純,成瀬友梨,布山陽介,林千晶,馬場正尊,三浦展,小林弘人,門脇耕三,萩原修,安藤美冬,島原万丈,関口正人,中村真広,田中陽明,ドミニク・チェン,中村航,浜田晶則
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2013/12/15
  • メディア: 単行本
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タイトルからしていささか香ばしいですが香ばしい本でした。いやたまには夢みるのもいいかと思って。タイトル通り、基本はノマドワーカーのシェアリング(空間もビジネスそのものも)についての形態のお話。面白くはありますがこれ読んでためになるかといえば別にならない。面白いけど。

 

 

医療・福祉従事者のひとにオススメ10冊(1-200冊のなかから)

できました!臨床のひとにおすすめ10冊。

とはいえ他のところで出した本はあえて計上していないので、結構これは臨床の人にも強くおすすめだなあという本が普通の「オススメ10冊/コアなオススメ10冊」の方に隠れています。というわけで、あえてそこからもれてもなお「普通の人にはそこまででも、臨床の人になら・・・!」というものがここにランクインしております。

 

1.「承認」の哲学ー他者に認められるとはどういうことか(藤野寛

ずっと本屋の哲学・思想の棚にあったので読もうと思っていたのですが、結構まじめな本でした。SNSとかやっているとよく見る『承認欲求』とかいうものがなんなのか、と思って手に取ったのですがどちらかといえば他者の受容とか、他人に対する寛容について考える本です。心の狭い人向け(私も心が狭い)。

 

2.「聴く」ことの力:臨床哲学試論(鷲田清一

「聴く」ことの力: 臨床哲学試論 (ちくま学芸文庫)

「聴く」ことの力: 臨床哲学試論 (ちくま学芸文庫)

 

臨床哲学については、私からは鷲田教授がもっともおすすめです。

基本的には対人援助職すべての方にうなずいて読んでいただけるかなあと思いますし、何より言葉が平易でとっつきやすいです。大学受験用の模試の問題なんかにもこの方の評論はよく出てきていました。ですので、もともと哲学に触れたことのないような自分の同業者、介護職の方が臨床哲学にふれるにあたって適切かなあと思ったりします。

 

3.死すべき定め(アトゥール・ガワンデ)

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

 

この本は読みにくくはないのですが内容が重たいです・・・。老年者のスティグマ、倫理、生活様式の再考、死への旅路をいかに整えるか、というペンディングされてきた問題を突き付けられます。実際病院で働いていると、そういうことに無頓着になってしまうなあと大変反省させられました。

これは職種を問わずぜひご一読いただきたい本のうちのひとつですね。

 

4.スティグマ社会学―烙印を押されたアイデンティティ(アーヴィング・ゴッフマン)

スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ

スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ

 

うってかわってこちらは社会学の本。哲学と臨床の両輪を回しておられる方からプレゼントとしていただきました(気にはなっていたのでいつか読もうとは思っていたのですが)。

医療者、病院で日頃働いているのでわりと社会の出来事に無頓着になったり偏見を持ちがちなので、あえて医療・臨床といった視点を一度離れてメタ的な視座を持つことも面白いだろうかと思って選びました。慢性疾患を抱えるひとなんかとは、特にこういった視点をもってかかわっていきたいものです。我々は結局身体的にも精神的にも社会的にも危機状態になってしまった相手をケア・キュアしていかなければならないので・・・

 

5.知の生態学的転回3 倫理:人類のアフォーダンス河野哲也

ご紹介する本の中で、これだけちょっと割高になっちゃいましたね。

実は全3巻あるのですが、1、2巻よりも3巻だけ読む方がいいとこどりできるかなあと思ってこうしました。「倫理」というほど生命倫理なんかの話ではなく、人間が人間に対して行為することそのものについての検討といった感じです。言葉自体はそこまで難しくはない(哲学の本よりは)。ただ、難しい本はちょっと・・・という方には最初からオススメはできないかも知れません。

 

6.貧困とはなにか―概念・言説・ポリティクス―(ルース・リスター)

貧困とはなにか―概念・言説・ポリティクス―

貧困とはなにか―概念・言説・ポリティクス―

 

スティグマ社会学に続いてオススメの1冊。

貧困、という問題に、医療や福祉に携わっているとどうしてもぶち当たります。そういうときに偏見を持ちたくないし、仕組みを理解したいなあと思って読んだ本。

難しくないですし、さわりの一手としては最良だと思います。

どちらかといえば社会福祉方面の方におすすめできる本ですが、医療従事者が読んでもまったく損のない一冊です。見識を広めたいときに是非。

 

7.いのちの生成とケアリング:ケアのケアを考える(丹木博一)

いのちの生成とケアリング: ケアのケアを考える

いのちの生成とケアリング: ケアのケアを考える

 

これは明らかにケアに携わる人向けですが、対人援助職ならば誰にでもおすすめできるかと思います。むしろ直接身体に触れることの少ない薬剤師さんとかどうでしょう。

我々ケアワーカーが日々行っていることの分析に近い本で、正直自分としては目新しいものはなかったのですが、「あんまりたくさん本読むと疲れちゃう」って人にこの一冊。気になる人名がたくさん出てくると思うので、もし気になったらその先も読んでいただけたらと思います。

 

8.魂にメスはいらない(河合隼雄谷川俊太郎

魂にメスはいらない ユング心理学講義 (講談社+α文庫)

魂にメスはいらない ユング心理学講義 (講談社+α文庫)

 

対談本ですが、心理学の大家河合先生とかの有名な詩人谷川俊太郎氏という面白い組み合わせです。真面目そうに見えて洒脱、軽妙に見えて沈着。ふたりの人間という存在に対する愛情が前面ににじみでていて、私は大好きです。

河合先生の本をどれかひとつと思ったのですが、浅学にしてこれくらいしかおすすめできるものがありませんでした。読みやすいので、心理学とか精神科系のケアが好きな方には一度読んでいただきたいかなと思います。特に児童心理学・発達心理学。

 

9.質感の科学―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―(小松英彦)

質感の科学 ―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―

質感の科学 ―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―

 

この10冊の中で最もイレギュラーな本。科学というか、工学・物理学を用いて認知神経科学にアプローチする本。

認知心理学とかの本はおすすめ10選なんかでも出したのですが、この本はもう一歩進んで展開していて、たとえば「粘稠度の表現」とか「光沢の表現」みたいに、CG表現とかもどんどん取り入れていてすごく面白いです。最終章ではオノマトペの解析にも踏み込みます。

ありとあらゆる方面から質感を眺める本ですが、如何せん理系の知識がないとかなり厳しい。自分は結構四苦八苦しながら読みました。

誰にオススメ、というわけでもないのですがある意味臨床の副読本として面白いんじゃないかなという気はします。

 

10.蘇る変態(星野源

蘇える変態

蘇える変態

 

フランクルの1冊でもいれとけ!と思ったのですが「虚無感について」はもうおすすめに入っていたのでした。

というわけで、有名人かつ外側のキャラクターもある程度知られた人間の『闘病記』をひとつ、出してみたくて。これがいいとか悪いとかどうこうでなくて、孤独な人間が内面との闘いを迫られた時の葛藤があっさりと描かれていてやっぱりこのひと魅力的だなあと思ったのです。まあ、読み物として、息抜きにどうぞ。たまにはしゃっちょこばらずに。

200冊読了記

前回が終わってから、2か月と少し。気づいたら、200冊目を読み終えていた。

単純に冬の寒さが厳しく、読書以外に楽しめるものがなかったから、というのもある。

前回に書いたブログがこれ。100冊目、こんなに早くくると思っていなくて結構満を持して書いた覚えがあるけど、200冊目がこうもあっさりと終わるともう特に何も思わない。早く人にお勧め本書きたい!というそればかり。

streptococcus.hatenablog.com

 

200冊目の志向性

この200冊は、結構はっきりと自分の傾向がでてきたように思う。

100冊読破の内容と較べてもかなりはっきりしている。読み始めたときは、哲学にしろ建築にしろ「よくわからないから手あたり次第」感がとても強かった。たまたまこの本気になったから、とか、前から知っていたから、というのを。おかげで名著にもよく出会えた。

 

代わりに、200冊目はデザイン(都市空間・建築)/哲学(公共哲学・実存主義)/文化人類学社会学(貧困にまつわるものが多かった)と、かなり自分の求めているものがわかりやすかった。あと経済に関する本が出てきたのは意外だったように思う(100冊読破のあいだは、ガルブレイスの『現代経済学』くらいのものだった)。

 

300冊までのあいだに

多分有名な文学作品(国内、国外を問わず)を読み散らかしていくのだろう、という気がしています。あとSFも意外にも興味をもつようになりました。これが結構予想外だった。

100冊区切りでなくても全然いいと思うんですけど、本を読めば読むほど、掘れば掘るほど新しい自分と出会えます。ほんとうに不思議だ。

楽しみです。

100冊の中からオススメ5選/超絶コアなオススメ5選(101-200の中から)

200冊目は、指向性ある読書をしていた気もするので『万人へのおすすめ』がかなり探しにくかったです。なので、それぞれ気になるジャンルのある方は恐れ入りますが個々の書評を読んでいただきたいです。というわけで今回は5冊ずつ。

10冊分ごとの書評に加えて、「なぜ読んだか」「なぜおすすめか」「どういう条件・状況の人におすすめか」をもうちょっと加えた仕上がりにしております。

 

100冊の中からオススメ5選

1.ことり(小川洋子

ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)

 

多分自分から進んで読んだのではなくて、現代小説の趣味が似通っている父から渡されて読んだのでした。

小川洋子、代表作といえば『薬指の標本』とかでしょうか。ああいうエロティックな雰囲気はちっともなくて、どちらかというと『猫を抱いて象と泳ぐ』のような静謐でかなしみのある愛情深いおはなし。

それにしても小川洋子の文学にはよく『やまい』が出てくる気がします。疾病としての病気ではなく、文脈上、あるいは人生のうえでの『病み』みたいなものが、病気としてではなく、生活の一部として当然のように出てきて、誰もそれに対して不満をいったり、嘆きかなしんだり、怒ったり、しないのです。たとえば死にたいしてもあまりにも静謐で、彼女の卓越した死生観に思いをはせずにはいられなくなる。

長編ですが短くて、すぐに読めると思います。心が疲れたときにどうぞ。もっと苦しくなります(いい意味で)。

 

2.いま世界の哲学者が考えていること(岡本裕一郎)

いま世界の哲学者が考えていること

いま世界の哲学者が考えていること

 

カフェ併設の本屋に置いてあって少し気になっていたのですが、確か図書館のオススメ本にもなっていた気がして読みました。6章だてで、宗教やIT、環境問題などなど『哲学』というよりは倫理面の問題に肉薄します。ダイヤモンド社なので目当ては普段哲学に興味のないビジネスマンなのでしょうが、それくらいの軽い気持ちで手にとれますし、平易な文体で書かれているもののよくまとめられている良書だなあと思います。

特に『宗教』の項目でダニエル・C・デネットの『解明される意識』を出してきたところになんとなく自分は著者の本気を見ました・・・

 

3.愛するということ(エーリッヒ・フロム)

愛するということ

愛するということ

 

帯がなんだかフワフワしていますが、決してフワフワしていないことは彼の他の著作である『自由からの逃走』などをお読みいただければわかるかと思います。たまたま今回はテーマが『愛』なのでフワっとしていますが。本屋にずっと置いてあり、読みたいなあと思いながら読めていなかったので。

著者は社会学精神分析学・哲学を主に専門にしているので哲学の本を読みなれた人には平易でしょうが、おそらく少し読みづらいです。けどまあ、心惹かれる部分だけ読んでもまったく問題ないくらいの名著。これでフロムいける!と思って『自由からの逃走』読んだら間違いなく挫折すると思います。

愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。愛とは信念の行為であり、わずかな信念しかもっていない人は、わずかしか愛することかできない。ーエーリッヒ・フロム

なかなか厳しいでしょう?

 

4.自己が心にやってくる(アントニオ・R.ダマシオ)

自己が心にやってくる

自己が心にやってくる

 

認知神経科学の本です!というとめっちゃ堅苦しいですが、翻訳されている方が結構さくさく文章を平易にしてくれる人なので読みやすいです。ただ下記紹介文にもあるように、解剖生理の知識が少しないと厳しいかも知れません。あと用語はやっぱり医学系の専門用語が多少は出てきます。けどまあ、非医療職でも間違いなく楽しい。こういう本を読みながらだと最近のSFはかなり楽しく読める気がします。

streptococcus.hatenablog.com

ここの8冊目に詳記あります。

 

5.ハーモニー(伊藤計劃

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

 

 <emotion></emotion>形式でつづられる文章の美しさ。

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実は自分は中高生のころこうやって手書きでhtmlを書いて遊んでいたのであの文体に抵抗は全くなかったのです。カッコ書きの中の書体も見慣れたもので、文章冒頭の宣言はウェブページの『表題』みたいなもの。あと信頼性の提示ですね。htmlは言語の中でもかなり人間に寄ってくれている言語なので書きやすいですし読むだけで意味もわかりやすいです。まあそんな与太話はともかく。

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本書は『健康(な意識)』とは何か、を問う本であったなあと思います。

虐殺器官でもたびたびいわれていた、『精神が適切にメンテナンスされる』ということへの恐怖が本書では主題にもなっていて、健康でいることが義務づけられる社会で『意識をやめる』ことについての展開がある。一気に読み切りました。

そしてこの本、おそらく病床で書かれていたものだろうと思ったのですがやはりそうで、著者ご本人が肉腫の再発のなかに残されたものだったと。

この感覚は他の職のひとと共有できるかどうかわからないのですが、自分はこういう作品を読むと、人間の尊厳というか存在のありようの豊かさに、思想と思考の自由さに頭をぶん殴られたような気になります。横たわっていても、向精神薬を飲んだとしても人間には『健康』な部分があり、それは絶対的にうつくしいのだと思わされる。

SFとしてというより、本当に作品としてうつくしかった。いやーよかった。

でも若いのでやっぱり情緒に訴えかける文章かどうかいわれると微妙です(笑)。好きだから色々言えます。

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超絶コアなオススメ5選 

1.なめらかな社会とその敵鈴木健

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

 

これなんだろう。何のジャンルだろう・・・

数学者の考える社会学、みたいな感じですかね。あるいは政策論理?

読んでいてものすごく近未来感のある本でした。今はまだ実装されていませんが、多かれ少なかれ遠くない未来にこうなるような気がします。

公共性とか都市論について考え始めた当初だったので面白く読みました。

誰におすすめ?・・・誰にもちょっとおすすめはできないですね・・・面白いんですけどね。

 

2.解明される宗教 進化論的アプローチ(ダニエル・C・デネット

解明される宗教 進化論的アプローチ

解明される宗教 進化論的アプローチ

 

大本命デネットです!うえのオススメ本にも解説されている良書なのですが、如何せん取り扱いジャンルがあまりにも万人にオススメはできないので。宗教哲学の本です。

streptococcus.hatenablog.com

これの6冊目で紹介しています。

 

3.暴力の人類史(スティーブン・ピンカー

衝撃を受けすぎて書いた記事がこちら。下巻の巻き上げが凄まじかった。しんどい。

streptococcus.hatenablog.com

 

 

4.八本脚の蝶(二階堂奥歯

毒みたいな本でした。若くして自殺した女性編集者のブログをまとめたものです。

自殺したからこそ際立って価値があるのではないし、彼女の生き方がどうこうというつもりもない。ただ、本に埋もれるようなその25年(実際に埋もれていたのは20年くらいでしょうけれど)が、他の人の生きる知恵に代わってほしいなあとは思います。

というわけでこれを読んだ時の感想を置いておきます。

streptococcus.hatenablog.com

 

5.ゲーデルエッシャー、バッハーあるいは不思議の環(ダグラス・R.ホフスタッター)

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

 

これはもう誰におすすめしていいやらわかりませんが美術と音楽と数学の本です。

と思いきや「ほとんど全部数学の本」です!!!つらいッ!!!私は数学が得意じゃないんだ・・・・っ!!

ここの2冊目で紹介しています。

streptococcus.hatenablog.com

いやもうどうしてくれようかレベルで意味のわからない本でした。エッシャーとバッハをある程度知らなかったら詰んでいた。読め、とはいわないし決してオススメしないけど、読むというなら止めないし読んだ人とはお話ししたい。わけわかんないよね?理解できなかったといってくれ・・・