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毒素感傷文

どうしようもなく感銘を受けてしまう日々のあれこれについて。

100冊読破 2周目(61-70)

1.ソーシャルな資本主義(國領二郎

 

ソーシャルな資本主義

ソーシャルな資本主義

 

 

日経が出しそうな本。SNSとかクラウドファンディングとかマーケティングとかリスクマネジメントとか。デザイン関係はつい『モノ自体』に目がいきがちだけど今回は情報に焦点をあてたかったので借りてみた ありがちだけどしっかりしたいい本ですさっくりまとまっているし言葉や例えが平易だし。

クラウドファンディングみたいなマーケティング形態とても興味があったのですが、真面目な本の見つけ方がわからなかったので本書はわりとお勧めできるような気がします。門外漢に易しい。

 

2.ゲーデルエッシャー、バッハーあるいは不思議の環(ダグラス・R.ホフスタッター)

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

 

間違いなくこの100冊のなかでもっとも『お勧めできない』お勧め本。

数学ガール』になぞらえるならこれは『数学BBA』または『数学長老』みたいな本だった エッシャーとバッハが好きなので読めるかと思ったらエッシャーとバッハはテーゼでしかなく、基本的にはガチ数論の本だった。たまげた。ちなみに700ページある。本書を読みにくくさせているのは全編を通して貫かれる言葉遊びなんじゃないかと思う 原著もおそらくとても面白いのだろうが日本語版のため、訳者の苦労たるやいかばかりかと偲ばれる。アキレスと亀のやりとりは、『数学ガール』によく出てくる対話にちょっとイメージがにている。

ちなみに肝心の数論に関してはMUパズルは頑張ったもののpq問題で既に挫折しており高校数学すら(そもそも数IIICやってすらいない)怪しい自分には大変厳しいものがあった けど読ませる力はものすごくあって、最初の数章を超えると自分の好きな展開になっていくので加速がついた。

バッハはオルガンの名手でもあり、対位法に代表されるようなめちゃくちゃ理論的な音楽を書いていたし音楽はそもそもの成り立ちがかなり数学と近い。楽譜は言語のようだが言語というよりシンプルな楽譜は定理の組み合わせにすぎないことがわかる。バッハはオルガンの名手でもありむちゃくちゃ対位法に代表されるようなめちゃくちゃ理論的な音楽を書いていたし音楽はそもそもの成り立ちがかなり数学と近い。楽譜は言語のようだが言語というよりシンプルな楽譜は定理の組み合わせにすぎないことがわかる。そして数論はめっちゃ難しいけど、タンパク質とか遺伝コードの話が絡んでくると基礎の基礎は自分もやったのでそれなりについていける。というかタンパク質とかの3D構造ってかわいいですよね。

数論の自己増殖の話は分子生物学系の話題が出てきて面白いんだけど、神経系統の情報処理と記号論理系=人工知能に関する情報処理がここで結びつく。脳科学とかなんとか下手な本読むよりよほど面白い。

で、ことエッシャーに関しては高校の数学の先生かなんかをしていたと展示会で読んだ気がするがあの人が描く空間は数論的または構造的であると同時に知覚的、メタ認知的でもある メタ認知についての話が出たあとにエッシャーの話に戻ってきてようやく得心がいったといえばまあそうだ。数論を理解できる人はそう多くはないが、エッシャーを観たりバッハを聴いて感心する人は多いと思う それが数論の面白さといえばまあそうかもしれない。そしてこの本はほとんどの人におすすめはできないが、読むのであれば是非読んでいただきたいし理解されている方の話も聴いてみたいと思う。

 

こうやって読めない本を読むのもまた楽しいのはそれこそメタ認知的な観点からというのもあるだろう。なお本書についてざっと『これ知ってる人は有利』みたいなのは
①大学レベルの数学(幾何学、論理学、代数)
②情報処理系
③生物学または医学
音楽理論
⑤哲学
あたりがざっとあれば楽しいかと。ドーキンスの『利己的な遺伝子』も1978年にそれが書かれたというのがなかなかのもんやと思うけど、GEBに関してはまだいまみたいにAIのディープラーニングとか想像もつかない時代にそれを既に理論上で可能にした点がすごいんやろなという気はする。最後になったけど、訳者あとがきが秀逸。

 

3.笑いー喜劇的なものが指し示すものについての試論(アンリ・ベルクソン

 

遠藤氏の『情念・感情・顔』を思い出した あれの副題は『コミュニケーションのメタヒストリー』なんだけど、あれが情念すべてを含んでいたのに対してベルクソンのは喜劇をモチーフにして笑いの社会性と文脈を分析していく。『笑いは苦味を含んでいる』っていう一節がとても好きだ。

 

4.ハイエクの経済思想:自由な社会の未来像(吉野祐介) 

ハイエクの経済思想: 自由な社会の未来像

ハイエクの経済思想: 自由な社会の未来像

 

コミュニティデザインやりたければ経済学ばずして成し得ぬなと思って何気なく手に取りましたが大変よかったです 何がよかったかというと語彙が平易で、かつ自分が今までさくさくと読み進めてきた哲学を全体的な思想史としてハイエクの人となりを説明する背景に用いてくれていたこと。いやハイエク読んだことないのにハイエク読むのもどうかと思うんですけど後半のガーデナーとしての政府のくだりについては自分は諸手を挙げて賛成なので新自由主義的観点というか経済的コミューンの形成にはぜひとも加担していきたい。そして本の最後に訳者のツイッターアカウント書いてあった。若い方だ。

『隷属への道』是非読みたい。

 

5.要約 ケインズ 雇用と利子とお金の一般理論(山形浩生

要約 ケインズ 雇用と利子とお金の一般理論

要約 ケインズ 雇用と利子とお金の一般理論

 

この訳者の名前どっかで見たことあるなと思ったらスタンレー・ミルグラム『服従の心理』とニコラス・ヴェイドの『人類のやっかいな遺産』の訳者だった。ケインズ、名前だけはよく聞くしいっぺん読んでみようと思って借りてきたんだけど内容そのものは要約だしそんなにおかしなことは書いてないしなにより数式になると途端に計算がダメになる私にはこれでもハードルが高いっちゃ高かったんだけどなぜ世の(特に男の人に多いけど)人々みんな投資するのかと思って。投資に関する本は読めたの大変ありがたい。

 

一般理論、マクロ経済学のなかではいま結構見直されているようなので他の本も読んだら色々わかるんやろうか。世界恐慌を乗り越えるために雇用を論じたからには、いまみたいなマンネリ化した経済にも同じことが言えるのやろうか。

 

6.インクルーシブデザイン:社会の課題を解決する参加型デザイン(ジュリア・カセム)

インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン

インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン

  • 作者: ジュリアカセム,平井康之,塩瀬隆之,森下静香,水野大二郎,小島清樹,荒井利春,岡崎智美,梅田亜由美,小池禎,田邊友香,木下洋二郎,家成俊勝,桑原あきら
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2014/04/01
  • メディア: 単行本
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うーん 前の『「インクルーシブデザイン」という発想』のほうがよかったかな。今回はユニバーサルデザイン寄りで、かつUI系といえばまあそうかもしれない。今回は、実際にデザインを当事者を含めてやってみたよ!という実例本。おすすめはしない。福祉環境デザインとかやるならちょっといいかも。本当は読むべき本なんだろうけど…

 

7.テキスト建築意匠(平尾和洋)

テキスト建築意匠

テキスト建築意匠

 

2章と8章がおすすめやで!と人からお勧めされていたので読んでみました。近代〜現代建築の理念、観念の移ろいと実際のデザインについて。なんかこれ1冊で普通に教科書になりそう。空間の観念については自分が今まで読んできた本総ざらえみたいなところがあって楽しかったです。

 

8.社会学の使い方(ジグムント・バウマン

社会学の使い方

社会学の使い方

 

『思考する人間はどんな批判にも怒らない……なぜなら、彼らは自分に怒りの矛先を向ける必要がない上に、それを他人に向けたいとも思わないからだ……思考していれば不幸が蔓延しているときでも幸福であり、不幸の表明という形で幸福を得るのだ』ーテオドール・W・アドルノ 

なんかちょっとタイトルと表紙に惹かれて読んだが、90歳の時に出した対談本。すごいな…。社会学そのものがあまり好きじゃないのでどんなことが書いてあるかなーと思って読んだ 政治哲学、経済学、文学、心理学などなどの統合という感じ。社会学が苦手なので読んだけど、意外とくさみのないいい本。

 

9.波状言論S改社会学・メタゲーム・自由(東浩紀

波状言論S改―社会学・メタゲーム・自由

波状言論S改―社会学・メタゲーム・自由

 

網状言論F改があまりに自分にとっていやらしさしかない本だったのでいっそこっちも読んでやると思って読んだ。嫌だったけどこれに関しては一理あるとは思えるし、読んでいてまあ納得くらいしてもいいじゃないかと思える気がした。それは多分鼎談が完全に答えを出しきらなかったからだ。

表象文化論というのが自分にはどうも苦手だ。精神分析と出会うとなお悪い。揚げ物に揚げ物を食べたみたいになる。この本は比較的根茎の部分に迫っていて、パラ読みするによかった。

 

10.新・都市論TOKYO(隈研吾) 

新・都市論TOKYO (集英社新書 426B)

新・都市論TOKYO (集英社新書 426B)

 

トーキョーとても好きな都市なので読みました。楽しかったです。でも、本質はヤン・ゲールが『人間の街』で丁寧に解説していたことの繰り返しであったりする。リアルタイムのトーキョーの知覚を言語化するには、いい本です。へたな社会学の本よりよほど社会学だと思う。

新書なのでぱらっと読めるし、東京という街や建築物が好きな人にはおすすめ。森ビルいきたい。

『都市は、迷子になって絶望しないとわからない。そうやって絶望した人間だけが、初めてその都市と裸で無防備に向き合える。その絶望から計画はスタートしなければいけないんです。』ー隈研吾