1.数学ガールの秘密ノート/数列の広場(結城浩)
2.数学ガールの秘密ノート/(結城浩)
3.数学ガールの秘密ノート/(結城浩)
試験が近づくとお世話になっている数学ガールの秘密ノートシリーズです。
今回は放送大の『入門線型代数』を受けるために事前の知識がなさすぎたので、ベクトルからやり直しました。数列は...なんかだいぶ前に買っていたからですね。
おそらく大学数学をやり始めるときもそうなんじゃないかなあと思うんですけど、ベクトルと行列を順番にやると頭が混乱しなくてわかりやすいです。自分は高校生のときに行列をやらなかったので、復習ではなく新規の単元ですが。
お勧めかどうかはイマイチ判然としないのですが、数学がもともとできる人は数学ガールの秘密ノートシリーズはパラ読み程度でいけるんでしょうね...会話形式のほうが読みづらいとおっしゃる方もおられますし。自分の場合は、行列の積やら基底やらの話になってくるとだんだん放送大の教科書が難しくなってくるので、数学ガールの秘密ノートに戻って読んだりしていました。
けれども、統計・微分積分に加えて今回もそこそこ楽しく数学に親しむことができました。数学苦手人間にはいいんじゃないかと思います。
4.珈琲の世界史(旦部 幸博)
『コーヒーの科学』に続く第二弾。
前作がコーヒーの成分・製法・分布や品種についての話だったのに対して今回は開拓や文化とともに伝播する話です。自分はコーヒーの話でしたら世界史とか文化のほうが好きなので、楽しんで読むことができました。
5.現代倫理学入門(加藤尚武)
手に取ってはじめて知りましたが、過去の放送大学の教材であったようです。そのためか、各章ごとにまとまっていて非常に読みやすくウェイトとしても初学者に易しい本でした。現代の倫理というと義務論vs功利主義の構図がぱっと思い浮かぶのですが、そこに至るまでも含めて解説されているので、ピーター・シンガーの『功利主義とは何か』よりも網羅的であるように思われます。そこまで前提知識も要さないかもしれません。
6.美術史(ダナ・アーノルド)
A Very Short Introduction<1冊でわかる>シリーズのうちのひとつ。人からいただきました。著者本人が最初に通告しているのですが、美術の歴史においてたとえばどの技法が流行った廃れた、画材はなんだみたいな話はしません。あるのは象徴的に使われているコンテンツが何かとか、表象の表れ方や操作され方など、どちらかといえば抽象的なほうです。なのでこれを読んだのでなにかわかるかといわれると特にわかりません(ちーん)
強いて振り返るならば、著者は女性であり、フェミニズム的な表象(あるいは阻害された女性表象)について指摘している箇所は鋭い目線であるなと思いました。
7.スナックの言語学: 距離感の調節(中田梓音)
めちゃ推しの1冊です。ポライトネス(訳が難しいのですが、寛容とか他者への配慮とでも言いましょうか)な関わりと、その前提にあるface threating act(FTA; 恥をかかされる恐れのある振舞い)をスナックのママがいかにかわすか、客とどのような距離感をとることで『常連』になるのかといった話を非参与観察ないしインタビューし、それに基づいてなんと著者本人がスナック経営するという実践を博論にまとめられています。言語学の質的研究において、ポライトネスについてなどの研究はあるものの実験的なものにとどまり、継続的に自然なコミュニケーションを追ったものは少ないとのこと。著者の熱意と、フィールドワークにあたって多大なる苦労があったことが偲ばれます。
スナックは物理的・心的に相当な閉鎖空間であり、そんな場所だからこそ寛ぐことのできる人たちがいます。彼らと付かず離れず、常時にこにことしながらある程度の礼節を保ってもてなす技術について、談話分析を行うのは読んでいて非常に楽しかったです。水商売の話術といえば、ビジネスのハウツー本としてありがちですがこれをシートに落とし込んで、振り返りながらインタビューを客と接客者双方に行い、抽出した要素を実験者自身が行なった結果も書き起こす。気の遠くなるような作業であり、またそれによって得られるものこそが質的研究の醍醐味なのだなあと思いました(勿論量的なものを貶す意図はありません)
コミュニケーションそのものは非常に多岐にわたる分野から研究対象とされており、今回のように談話ともてなしに関する質的なものを哲学・文学から導くものや社会学・言語学から示すもの、認知科学・神経科学・情報科学から扱うものもあります。そんな中で、場に飛び込んで「今ここ」を記録し実際にやってみる、なかなかいずれの方法でも選べるものではないと思います。記憶に頼ったり計測に頼るものは多いです(勿論談話分析だってレコードはしますが)が、これにより主観的な補正がかかってしまうのを、場の再現によって減らします。扱う内容の面白さもさながら、接客態度の個人差や本人自身の経験を活かしているところを談話分析できるのを著者自身が楽しまれていたであろうことが伺えます。非専門家、または非言語学分野の方にこそお勧めできると思います。
あと、表紙の写真は横浜・野毛ですが、フィールドワークの場所は京都・祇園です。自分は京都在住であることもあり、土地になじみ深かったため、ありありと想像できて楽しかったです。
8.言語哲学―入門から中級まで(W.G. ライカン)
これ1冊で入門から中級をカバーするのは無理です という感想。
というかこれは中級だと思うのですがいかがか...
自分が今まで練習してきたフィッシュ『知覚の哲学入門』、放送大学教材『経験論から言語哲学へ』をはじめとするその他もろもろの分析哲学系のうち特に心の哲学を避けたもの(あれはあれで奥が深すぎるので)を比較考量するのですが、序盤の記述による事実の違いとかラッセルのパラドックスとかこれは初学者には無理では...となります。
後半の言語使用の観点のほうが、むしろ日々の生活世界における言語使用と一致していて読みやすいかと思われます。
9.誰の健康が優先されるのか――医療資源の倫理学(グレッグ・ボグナー イワオ・ヒロセ)
面白かったです、おすすめできると思います。
医療費の高騰が叫ばれる昨今ではありますが、では人ひとりの命は地球より重くてよいのか、かといって金がないからと死を選択するようなことがあっていいのかという表面の議論から抜け出すためによい本だといえると思います。
QALYの計算については自分も以前より知っていたのですが、DALYについては本書でようやく概観を知ることになりました。
キャス・サンスティーン『命の価値』もこれに似た本なのですが向こうはむしろ政策よりで、こちらはあくまで「医療資源」に限った分配を前提としています。とくに倫理と経済の鬩ぎあいについては、「最適な点は存在すると思われるものの反対に遭って落としどころがこうなった」みたいなくだりもたくさんあって、実例に富んでいます。
それから本書の中では、福祉政策によって補われなければならない観点については触れません。すべてが費用便益分析によって算定されてはならないという線引きもまた非常に納得できます。
10.原因と理由の迷宮(一ノ瀬正樹)
うーんあんまりよくわからなかったです。楽しかったのはソライティーズの話くらいか...?確率と主観の話にはいったときにモデリングの不適切さがどうしても浮かんでしまい、歴史認識の事後確率とかラプラスの悪魔みたいな話ちゃうんかと思ってしまいました。
因果論について知りたいならば別の人の『因果論の超克』のほうがよかったかもしれません。自分の不勉強で読めない箇所ばかりであるのも勿論そうなのですが....