毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

今年できたことできなかったこと来年の抱負

年末までにやるべきことの結果が大体出揃ったので、自分へのメモ(と圧力)も含めて記事を書きます。

 

できたこと

1.院試

放送大学の大学院に行くことになりました。

受験することを決めたのは昨年度で、前の職場を退職するときに多忙から解放されることがわかっていたので、次なる長期の課題を見つける必要がありました。

結果として、職歴も学歴も雌伏の1年となりましたが、我慢しただけの成果を得ることができました。

学部の科目も概ね順調です。

 

2.趣味の時間をつくった

前職だとほとんどやる時間のなかった楽器に親しむ機会が増えました。年明けに、◯年ぶりの発表会に出られることになり、自分としてはまことに嬉しいです。

下手くそですが、バッハの無伴奏チェロ組曲から第2番プレリュードをやります。

 

3.体調管理

今まではそんなこともできなかったのか?と言われそうですが、そうですそんなこともできなかったのです。

おかげさまで、仕事を辞めて半年くらいは月に1回以上何かしらの理由で通院していました。

これからやりたいことも、今までとは違った気力体力を必要とするので体調を整えるのは自分の中では急務でした。

 

4.苦手な科目に喰らいつく

数学と名のつくものは大体苦手なので、微分積分にはじまる放送大学の数学・情報科学分野の科目を臆せずモリモリとりました。

今のところ、成功しています。高校時代に足りていなかったとか、苦手だと思っていたところは都度やり直しています。まだまだ十分とは言えませんが。

 

5.哲学若手研究者フォーラムに行った

ただ聞きに行っただけなのでなんともいえませんが、自分のフィールドを抜け出して修士や博士の学生の方の発表や質疑応答を目の当たりにできるのは非常によい刺激になりました。

特に修論で倫理に近いことをやりたいと思っていたので、応用倫理や医療倫理でなくとも哲学の議論を生で見られるのは嬉しいことでした。

誘ってくれた友人にも、多大なる感謝の意をここにしたためておきます。

 

 

 

できなかったこと

1.100冊読破の続き

今年という区切りでいうと、50冊も読んでいなかったと思います。冊数は目標ではなく、指標でもありませんが時間を割けなかったのだなあとしみじみ思います。仕方ないことではあるのですが、本を読み新たな知識を得たり今までの知識を地固めすることは自分なりの大切な作業なので、もう少し余裕を持ちたかったです。

 

2.将来の計画を明るく見通す

職を辞してしまったことで、思った以上に社会的な不安定さが負担になりました。

受け止めをしたつもりでも気持ちがついていかず、精神的にも不安定になってしまいました。仕方ない面は多々あるとはいえ、自分の精神的な落ち込みに気がつくのはまだまだ下手で、少しずつでもいいから改善したいところです。

やりたいことを投げ捨ててしまわず、手元のことを片付けながらいくつかの中・長期目標を自分の中に持ち続けたいです。

 

3.プログラミング

折角手をつけたのに、中途半端にほったらかしてしまっています。

今後やらなければならなくなる気がひしひしとするので、統計の勉強のかたわらもう少し本腰を入れたいところです。

具体的な目標がまだ立っていないのも不安材料です。

やらなければという強迫観念というよりは、ちょっとずついろんな方面で興味が出てきたの戸、単に何か動かすのが好きなので手を出したという要素も大きいので、楽しめながら続けられたらなと思います。

 

4.体調管理

できたことに書いたやんけという自分の心の声が聞こえますが、純粋にすごく不調で大変な1年でした。昨年までに壊してしまったものが噴き出したかのようにつらかったです。来年はもうちょっと心身ともに健康な状態で迎えたいです。 

 

来年の目標

1.研究の下地をつくる

こればっかりは指導教員が希望通りに通らないといけないとか、いろんな事情がありますが、少なくとも最低限やることであろうと思われます。

大学院でとる科目は大体もう決めていて、おおむね量的なデータの分析に必要なあれこれと、特定行為に関わる共通部分(特定行為をやりたいというよりは課程に興味があるので受けています)の受講、あとは社会経営プログラムから公共哲学や公共政策などの他分野で気になるものをとっていくつもりです。ほとんどの科目を来年中に取り終えることができる計算です。

先行文献を量をこなして読んでいくことも必要となるでしょうけれども、これはまだ来年の数か月では質を高めることは難しいなと思っています。まだまだ量を読みこなすスキルもついていません。

 

2.統計検定を受ける

上記に絡んで、わかりやすい指標として統計の試験を受けてみようかと思っています。現在自分は職業としてはまったくハードではないので、なんらかの負荷が必要な状態であると感じています。学部で興味のある分野も今期でほとんど取り終えてしまい、春以降は何に注力してよいかわからず遊んでしまいそうなので...。

目標は、最高で1級の応用統計または準1級ですが、これは1年では無理だろうと踏んでいます。が、興味はあるのでじっくり取り組む所存です。

現実的なところとしては、来年度中に2級の取得でしょうか。

 

3.看護系の興味ある学会に出向く(できたら別分野も)

看護の学会はそこまで気負わずに行けるような気がするので、現在はシフトもずいぶんゆとりがありますし(なおかつ土日祝日が休みという恵まれた環境におりますし)、活発に活動できればよいかなと思います。完全にまだ物見遊山かもしれませんが...。

指導教官からは「どこ(の学会)に出しますか?」と面接で訊かれたので震え声で答えたのですが、自分に務まるかはやや不明です。早口のオタクになることが目に見えています。この辺りは再来年なので、心にゆとりをもって取り組みたいです。

 

 

おわりに

大雑把に書きましたが、大まかな目標はこれくらいしか作っていません。

自分のキャパシティや家庭の生活の変動にも余力を持ちつつ、落ち着いてひとつひとつ駒を進めていけたらと思い、書き記します。今年は馬車馬のまま突っ込みすぎました...反省も込めて。

100冊読破6周目(31-40)

1.よくわかる組織論(田尾雅夫)

よくわかる組織論 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

よくわかる組織論 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

 

 組織「行動」ではなく、経営ではなく、「組織論」です。と、最初に但し書きしてあるのですが、組織の構造と特徴に詳しい本です。そういえば経営系の本でこれらしい本を総論として読むのはハッチの『組織論』以来ですね。

あのように組織文化に根付いたものではなく、企業組織や団体などのもつ特性と組織形成の仕組みについて章立てがあります。

組織行動の心理とかキャリア形成については、他の成書でいうと『経験から学ぶ人的資源管理』とかスーザン・コミベズ『リーダーシップの探求』でよいかも。ロビンス『組織行動のマネジメント』ももちろん。

 

2.逸脱と医療化ー悪から病へ(ピーター・コンラッド、W.シュナイダー)

逸脱と医療化―悪から病いへ (MINERVA社会学叢書)

逸脱と医療化―悪から病いへ (MINERVA社会学叢書)

 

めっちゃ長いというか物理的に重い 重いけどこれは読む意味あったなあと深々と思います… 締めにいくにつれ、『医療』がもたらした無条件の正義という名の社会統制があるのはしみじみと感じます。そして診断名がつくことによりなんらかの逸脱を道徳的悪とされることから免れるというのも。それほど新しい本ではありませんが、ここに書かれているそれぞれの歴史、たとえば精神疾患・薬物依存・アルコール依存・小児の虐待と発達障害・同性愛・犯罪…におけるその定義と扱いの変遷は各論として興味を惹くものばかりです。社会運動が先行するものもあれば医療化が先行するものもあります。

現在でいえば保健行動全般とか、「反医療・治療・予防」の領域にこれが及んでいるのも感じます。自分自身は、医療に関するこの意識は目につく医療従事者より少ないと感じますが、むしろ「福祉化」に傾倒しているようです。医療の歴史において、『兆候(外から見える症状)』から『病因(内部の病理)』に焦点が変わったことによる個人の病いの外部化については、フーコー(未読なので概説に過ぎませんが)とかヴァイツゼッカー『病いと人』で読むことができます。T.S.エリオットもこの時期に相当するようです。精神疾患については、これも特殊な経緯を辿ったことから『狂気』というカテゴライズによってその歴史や社会的位置付けを知ることができます。各論としてそれぞれあるものを、それにまつわる社会運動や各国の比較(欧州と米中心ですが…)で振り返ることができるのはまことにお得だと思います。お得て。

 

3.君はいま夢を見ていないとどうしていえるのかー哲学的懐疑論の意義(バリー・ストラウド) 

君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか―哲学的懐疑論の意義 (現代哲学への招待Great Works)

君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか―哲学的懐疑論の意義 (現代哲学への招待Great Works)

 

面白かったんですけど内容難しくて完全に忘れました。意識に関する経験論と超越論的認識論みたいな話もでてきます。しかし超越論的認識論って完全に理論化に失敗していると思うのは私だけでしょうか。つまりカントの『純粋理性批判』なんですけど、あれを読めなかっただけですかね。前者の経験論とその懐疑に関してはヒュームの『人間本性論 知性について』が内容的に妥当であるように思われたのですが。現象学的な意識については全然わかりません(フッサールイデーン』とかなのかな、読んだことがない

センスデータ説とか勿論出てくるんやが経験とか世界に関する経験の内在性と外在性の話とかあとムーアがめっちゃ出てくるけどムーア全然知らんみたいな気持ちになりました(ムーアはどちらかといえば倫理の印象が強かった、分析哲学もやってるな)

面白いとは思うのですがややオススメはしづらい。前提になる図書が多すぎます。

 

4.生命記号論ー宇宙の意味と表象(ジェスパー・ホフマイヤー)

生命記号論―宇宙の意味と表象

生命記号論―宇宙の意味と表象

 

思いのほか面白かったです。宇宙の意味と表象かどうかはともかく、生物圏におけるコミュニケーション(細胞内・細胞間・対環境・身体対意識)を記号の解釈・伝達という視点から考えます。メルロ=ポンティっぽいなと思っていたらメルロ=ポンティの概念を援用した箇所がありました。前読んだ長沼毅という方の『生物圏の形而上学』より自分にはかなり腑に落ちる解釈だったと思います。

あーあと言語(複雑な記号)の獲得やそれによる意図の伝達が可能か、みたいな章もありました。動物と人間の差になる部分です。そこまで目新しいものはありませんでしたが。そこよりか、細胞間・細胞内コミュニケーションの話の方が自分は好きですね…

それから、「倫理は道徳を攻撃する道具になる」、よい概念でした。触れずにおくのかと思いきや、環境倫理・動物倫理に対する記号圏からの(記号圏を含む)認識で締めくくられていた。自然と文明の二元論に落とし込まず、それぞれのやりとりに用いられる広義のコミュニケーション・情報(記号)に着目せよと。

 

5.因果論の超克ー自由の成立に向けて(高山守)

因果論の超克―自由の成立にむけて

因果論の超克―自由の成立にむけて

 

因果論の話を初めて読みました。確か、いつものフィッシュ『知覚の哲学入門』読書会でこの話が出てきたのだと思います。双子地球のあたりで。

マッキーのINUS条件(Insufficient but Necessary part of Unnecessary but Sufficient set of conditions)、これ大事と思いながら他のことは大体理解できずに読みました(いやラッセルとかカントのかつて読み飛ばしてしまってきた因果論をわかりやすくおさらいできるのありがたかったが) 。

哲学における因果関係は時間的な経過や「理由」までを射程に入れていて、今まで物理や科学全般で当然のように学んできたことについて「因果関係がある」と証明することの難しさを改めて感じた次第です。ラプラスの悪魔が笑ってるぜ。

 

6.言語と精神(ノーム・チョムスキー

言語と精神 (KAWADEルネサンス)

言語と精神 (KAWADEルネサンス)

 

序盤は1950年までのざっくりとした言語学のおさらい、中盤は普遍文法の定義・構造と思い至った(言い方が悪いな)言語の「発生」の過程について。文法の形態素の表層構造・深層構造の話はこれまでの統語論の本にも出てきたんですけど音韻論(特にこの本では、文章になったときのアクセントや発音の変化の規則や循環方式について)と文法の表層構造についてのところは世界思想社の『生成文法を学ぶ人のために』ではそこまで関連づけられてはいなかったですし、私自身理解が追いついていなかったので、文法に興味があったらそしてもっと英語がすらすら読めたら、文と非文や置き換えの規則にもついていけたんだろうなと思います…正直自分にはごくぼんやりとしか理解できませんでした。残念です。本書は1960年代に行われた講義を基にして1967年に邦訳初版が出たものだそうです(これは第3版)。

ちなみに原著第3版はpdfが無料公開されています。

https://www.ugr.es/~fmanjon/Language%20and%20Mind.pdf

初版の時期を考慮すると、まだ自然言語処理の分野では「翻訳」「人間の言語による命令を実行するプログラム」(ELIZA, SHRDLUがこれにあたりますかね)が困難にぶち当たっている時期なので仮説の域に過ぎないとしています。

今でこそ深層構造の段階での意味・解釈について応用されていますが、当時かなり挑戦的であったことは伺えました。ただ心理学の行動主義や構造主義言語学について「大量の資料を集めただけで、その内容を説明したことにはならない」と述べているわりに普遍文法ってまだ証明されていない部分もたくさんあるしそこまで言い切れることではないのでは…と思ってしまいました… いや後出しでこんなことを言うのは不適切だとは思われますが…。最終章(2004年に付け足された7章)には言語について文化人類学や心理学が言語学に対してさらに多くの知見を与えていることが書かれています。しかしながら、意図や普遍文法を生み出す過程については未だ不明な部分が多いとして締めくくられます。自然言語処理やりたい人、どこまで追いかけたらいいの。

 

7.自己と他者の社会学(井上俊、船津衛他)

自己と他者の社会学 (有斐閣アルマ)

自己と他者の社会学 (有斐閣アルマ)

 

自己の解釈ー他者との関係に的を絞って、社会学の中でどのように扱われているかの概略が見える本です。重々しくなくて気軽に読めます、が、特にコミュニケーションについては発展が目覚ましいのでところどころ古いと感じる場面もあります。2005年発刊なので、2019年とは特にSNSの社会的機能が全然違う。基本的には理論または質的調査に拠る解釈なので、量的なものとしては扱いにくいと思います。

しかしながら、学術というよりも、自分がよく表現する「迂遠なコミュニケーション」は大体この辺に詰まっているな...と思います...または間接的なコミュニケーション。心理学でこの辺りを説明するのとはまた異なる文脈です。また、『演じる私』と『「異質な他者」とのかかわり』の章は、現在ではむしろさらに先鋭化しているように感じられます。特に後者。自らと接点がない(と感じられる)他者を扱うとき、人は「差別していない」といいながら本人たちと会話することなく先入観をもち、判断し、介入を決めてしまう。

息抜きによい本であったと感じます。

 

8.功利主義とは何か(ピーター・シンガー、カタジナ・デ・ラザリ=ラデク)

功利主義とは何か

功利主義とは何か

 

1冊にスマートにまとまっていていいな、と思いました。現代の功利主義の基本的な考え方と実践(実用)をふまえて書かれています。なにもかもに適用できるかと言われるとまったくそうではないけれど、「合理的であるためには部分的に自己抹消的になる」っていうのはよくよく感ずるところのある考え方です(功利主義が効用を最大化するためには、ある面において極端な合理性を排除する必要があるというやつ)。

シンガーの『実践の倫理』は事前に読んでいましたが、正直例の中では「は?」と疑問が出ることも多かったです(特に医療倫理の面では、「必ずこういう選択をするだろう」「葛藤が生まれるだろう」などという根拠なき決めつけが多い)。「〜である」と「〜すべし」のリンクが自明でなさすぎじゃない?と思っていたんですが、こちらではそれは場合により切り離されて扱われています。整合性があり受け入れやすいかと。

個人的に気に入った個所は、局所的にみればロールズだって選好的な功利主義と真逆のことは言ってないという部分ですね…実際にそうであると感じています。全体主義的だからダメみたいなのはつい言いそうになりますけれども、適用する言説に対して少なくともこういう結果を導くから(そしてそれが全体主義と言われるものであることがあるというだけ)ダメ、という説明が可能なはず。今回の A very short introduction はその辺がちゃんとあってよかったです。おすすめできるかと思います。

 

9.道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ(フランソワ・ジュリアン)

道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)

道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)

 

1年くらい前に、人にお勧めされてまだ読めていなかったものです。読んだ。

孟子とかあー性善説の人やろ?としか思っていなかったんですが、性とか徳とか天の概念が思ったよりずっと複雑で面白かったです。キリスト教に根付いた(カント的な)徳は権力と分かたれたものですが孟子はそうではなく徳と得(力で得るもの)はおなじものと捉えていると対比します。必ずしもうまくいってはいないのかも知れないし論拠が弱い部分もあるのですが、根をキリスト教的な部分に求めない「徳の衝動」のような考え方は面白いなと思いました。

 

10.ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法 BOOK2(伊藤絵美

哲学界隈を通じて知り合った方がスキーマ療法の自助グループ主催をされていて、興味があったのでお借りしました。

中のケースが、えげつなくつらいエピソードが出てくるんですよね…よく生きてこられたなあ、と言いたくなるくらいの人生を送ってこられながら、こんなままで生きたくないとカウンセリングルームに来られたのが最初のようです。自分を助けようという欲求を持てることがまず素晴らしいことである、と本の中でも述べられています。

生きづらさの問題を解決したいと思うとき、すでに自分は自分に対して治療的になろうとしている(スキーマ療法の定義を使うなら『ヘルシーな大人モード』)。

自分にこれを当てはめてみると、苦しみをスキーマとの対話へと昇華すること、(『ヘルシーな大人』を育てる・拡充する)ことは生きていく中で手探りでやっていたようです。あらゆる生きづらさに対してスキーマ療法でなんとかなる、とは思わないし(いずれにせよ心理面接を要するものは非常に時間がかかるのでそれそのものに気合いがいる)、何より自分がその他の心理面接の技法に詳しくないのでなんとも言えないけど、「今、ここから自分を組み直したい人」向けなんだろうなと思った次第です。高齢者や重病を抱える人向きではないと思う。

処理しがたい経験をもったゆえに(それがどんなものでも)、認知に何かしらの強いバイアスがかかって以降の生活に困るような場合、「生活が安定していて時間があれば」できるのかなという感じがしました。少なくとも、衣食住の安心がなかったり、今現在暴力を振るわれていたり、精神疾患の急性期だとかで受けられるようなものではありません(結構侵襲性が高いし、その分実施にも高い技術力を要すると感じました)。そもそも、実施できる人が日本にはほとんどいないという話も伺いましたが。

自分が去年放送大学で受けた授業の中で、こういうケースが挙げられていたのが『地域福祉の理論と実践』だったんですが、暴力により母子ともに歪んだコーピングをせざるを得なかったというエピソードを思い出しました。時間をかけて、それでも「こうなりたい」という気持ちを中心に援助が進む心理療法です。

 

雑記

前回から3か月ほど経過していました。この間に、放送大学の大学院の入試を受けてきました。体調を崩したりストレスが多かったりと散々な秋を過ごしてしまい、もう空気が随分と冷たくなってきています。

今も放送大学に所属しているので、普通の授業の試験準備やチェロの発表会に向けた練習などに追われているので、読書が後回しになってしまって切ないです。

いろんな知識を自分の中に溜めていくのがつくづく好きなのであろうと思います。

 

ではまた、そう遠からずこのシリーズを書けますように。

 

 

パート主婦半年経過の疲れた記

苦しいことについてあえて書こうと思った。

何より自分のためにだが、自分が苦しみ抜くことで誰かの支えとなればこれに勝る幸いはない。

 

以前に、こんな記事を書いた。

streptococcus.hatenablog.com

 

ここからさらに3か月が経って、自分の状況ではなく、抱えている心象について記録しておきたいと思う。どうせこんな苦しみも喉元を過ぎれば熱さを忘れてしまうことが目に見えている。

 

先のことが不透明である苦しみ

自分の将来を自分で決められないのは、つらく苦しいことである。

 

冷静に整理すればするほどばかばかしいことかもしれない。

自分は既に以前の仕事を退いており、また進学するとて場所を問わない方法を選択している。

この選択について、ストレスも葛藤も非常に大きかった。そしてそれは、時間が経ったからといって去ることがなかった。

 

自分の住む場所も満足に自分で選択することができない。仕事も当然制約を受けており、なおかつ条件をようやっと呑んだあとで当たり前のように家庭の事情が変更される。先の記事にもあるが、自分は適応が非常に遅い。ころころと条件を変えられるたびに慌てふためかなければならない(必ずしもその用がないとしても)。

 

鬱屈して何度も何度も家族に確認してしまう、事前に説明するなり予測するなりどうにかならなかったのかとせっついてしまう。

そうしたところでなんの解決も得られないことがわかっているので、さらに言語化することを厭うようになる。精神状態は悪化の一途を辿った。いや、言語化を拒否したので、悪化を自覚することもままならないでいる。

長年精神を患っていると、変えられない自分の気質や認知の歪み(直すべきものかと言われればそうでもないので、歪みと称するのが適切かどうかはわからないが)を手に取るようにはっきりと感じることがある。今がそれだ。

 

だからあえて書き記したいと思っている。

 

まるでできていないことについて

前回の記事には、できていること、進行している具体的なことばかり書いた。

まるで自分を鼓舞するように。いまは残念ながら、そんな気力は微塵も残っていない。

だから、保てなくて苦しいことやできなくなってしまったことも並べておきたい。

 

家事ができない

それなりに満足にできていた家事ができなくなった。もともと調子のいい日だけ、という前提で動いていたが、慢性的な不調によりそれもできなくなった。

だからといって家族に責められたり、何か指摘されたりすることはまったくない。これは前職であったときにも同じである。

しかし、3か月前にできていたことがじわじわとできなくなるのは、正直こたえる。

まして以前には過酷な労働の対価として少しばかり家事が犠牲になることはままあることであり、それには自分をなにか肯定するような要素もあった。仕事があるから仕方ない、とありとあらゆることを外注したり、好きなように家を飛び出て本を読み耽ったりすることで心を癒すことそのものが自分への寛容として機能していた。実際に癒えていたというほどかどうかは今でもよくわからないが、少なくとも苦しすぎる現実から少しばかり目を逸らすことができた。

 

今ではしっかりと、毎日のように目に入る。

 

食事、睡眠が不調になる

自分の場合はこれがもっともわかりやすい不調の合図である。

食べていないわけではないし眠っていないわけでもない。

眠くはなるし、お腹も空く。でも十分ではない。

ではどこを妥協点とするかは、少し考えたい。基本となる体調にも左右されると思う。

 

どこか罪悪感のようなものがあって、調子が悪くなればなるほど、気晴らしに外へ出るということができなくなる。たとえ出たとしても、集中できないとか楽しくないとかいった理由ですぐ家に帰ってきてしまう。悪いことではないのだが、以前はできたことができなくなることのひとつだ。

 

4月から数えて、体重の10%程度が減った。

元に戻そうと思うが、なかなか戻らないものだ。

 

あらゆることに過敏になる、疲れてできなくなることが増える

物音、ちょっとした外の喧騒、家族の振る舞い、等々、調子のいいときには気にもならないようなことが気にかかる。

せめて気がまぎれればいいが、それも集中力が続かない。

読書も、勉強も、その他もっていた趣味も、うまく楽しめなくなっていた。

 

これは疲れているときの話で、時が経てばまた解決する。

疲労を解消し、自己治癒的な耐久力が戻れば自力で解決可能である。反対をとれば、この問題の解決は自分にしかできない。

 

長年自分自身と付き合ってきたので、自覚するとせざるとにかかわらずこういう状態を実感している人は自分以外にも少なからずいるのではないだろうかという気がする。

 

 

 

解決について

 

落ち込んでいるときに書いたので、今見直してもとても調子が悪そうだ。

 

そんなときもある。

もちろん今の疲れもいつかは終わる。

 

だが、いつまでも小さな薄いしみが消えないように、憂鬱の影も自分が弱るたびにやってくる。それがとてもとても疲れてしまうときがある、という話。

2018年映画あれこれ

1.シューマンズ・バー・ブック


伝説のバーマンが原点を探す旅に/映画『シューマンズ バー ブック』予告編

撮り方がめちゃきれいです。

予告の通り、著名なバーテンダーであり各国にバーをもつオーナーでもあるシューマン氏のドキュメンタリー。

鮮やかなスーツの似合うとても大柄な氏が街を歩き、バーを訪ねる様がいちいちかっこいいです。

 

2.ピアソラ 永遠のリベルタンゴ


映画『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』予告編

世界的に有名なバンドネオン奏者、ピアソラについてのドキュメンタリー。

「タンゴではない」と貶められた過去から、ニューヨークでデビューするまでも収録されています。タンゴかっこいい。

 

3.ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命


映画『ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命』予告編

かつての下町らしい風景を打ち壊し、幹線道路を通し、貧困層向け住宅の区画を作ろうとしたロバート・モーゼスに対抗したジャーナリストのドキュメンタリーです。

アカデミックな素養はなく、主観による記述も多くみられるものの、彼女の活動は目を瞠るものがあります。そして実際に、都市計画に大規模な変更あるいは中止をもたらしたのでした。

下の本をずっと読もうと思っていたのですが、直前に映画を観終わってしまいました(本もよかったですが、分厚いのでなかなか手に取りにくいと思います)。

アメリカ大都市の死と生

アメリカ大都市の死と生

 

 

4.サファリ

youtu.be

観光産業・娯楽としての狩猟と、それを支える現地人。

管理された区域で、密漁ではなく正規のハンターとしての活動を追います。

動物愛護や環境倫理について、両面から考えることができると思います。

 

5.ザ・スクエア 思いやりの領域


映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』予告編

シュール...ただただシュール...

現代美術館のキュレーターについての話なんですが、人間の善意をことごとく裏切ります。かっこつけてばかりはいられない。

 

6.ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書


メリル・ストリープ、トム・ハンクスが初共演 映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」予告編

これはよかったです...

かつての栄光は消え、今や小さな新聞社にすぎなかったワシントン・ポストの女性社長が”新聞”の大義を背負って奮闘する話です。

自分ではうまく言い表せないのとネタバレになるのとで言及が少なくなってしまうのですが、おすすめです。

 

7.シェイプ・オブ・ウォーター


『シェイプ・オブ・ウォーター』日本版予告編

飲み屋のおじさんから「この映画の女優に(雰囲気が)似てる」と言われて観にいきました...。出来は可もなく不可もなく(自分にとっては)。

あと途中で出てくる緑色のケーキ、当時のスターバックスのタルトにそっくりで「スタバはオマージュなのかな...」と思ったりしました(そんなことはないと思う

 

8.ウイスキーと2人の花嫁


映画『ウイスキーと2人の花嫁』予告編

第一次世界大戦中、アイルランドでの実話を元にした映画です。ウイスキー好きなので見るべしと思って観に行きました...

基本的に使われている音楽が民族音楽調なので、ケルト音楽好きな人は好きかも。

 

9.修道士は沈黙する


映画『修道士は沈黙する』予告編

雰囲気映画です。よくわからんけど景色はきれいです

 

10.娼年


松坂桃李が妥協のない性描写に挑戦!『娼年』予告編

10年以上前に石田衣良の原作を読みました。この話が好きで好きで、映画化ときいてがっかりするかもしれんなあと構えてから行ったのですが、悪くはなかったと思います。

あと途中でちょっと笑うシーンがあります(映画館で噴き出している人がいた)

2019年映画あれこれ

1.蹴る


『蹴る』予告編| KICK - Trailer HD

予想よりずっと興味深かった映画です。

医療従事者であればこの映画に描かれていることがどれほど難しいことかよくわかると思います、ぜひ観てほしいと思いました。

神経疾患は進行性のものも多く、そういった場合に治療は対症的であり、じわじわと容赦なく体の自由が奪われていきます。医療的に必要なケアが多くなり、当然本人の負担も命に関わるものとなります。それでもスポーツをやりたい、戦いたいという気持ちはまぎれもなく選手のそれです。

それぞれの生活にも密着しますので、ADLの違いによる生活の違いやヘルパーとの関係もよくわかるかと思います。この関係は非常に複雑で、健常者(便宜上こう表現します)との関係も難しいです。詳しくは本編に出てきますのでここで述べることは避けますが、そういった微妙な心のやり取りがよく撮られています。

関連書籍として、「身体をめぐるレッスン4 交錯する身体」と「知の生態学的転回」という本を良書として挙げておきます。

身体をめぐるレッスン〈4〉 交錯する身体

身体をめぐるレッスン〈4〉 交錯する身体

 

 

 

 

知の生態学的転回2 技術: 身体を取り囲む人工環境

知の生態学的転回2 技術: 身体を取り囲む人工環境

 

 

 

 

 

2.ブラック・クランズマン


映画『ブラック・クランズマン』特報

(色々と)激しい映画でした...笑えるシーンばっかりなんですけど、厳しい人種差別とそれに抵抗する人たちの実話なので重たいテーマです。

 

3.北の果ての小さな村で


映画『北の果ての小さな村で』予告編

人類学とか興味ある人に是非観ていただきたいです...!

自分はなにかの折にこうした土地のことを調べたことがあるんですが、産業らしい産業がないので、経済面と教育・福祉をほとんど国の援助に頼っています。

しかしこれを観ると、土着の文化を理解せずして援助は為しえないことと、「経済的援助」という表面の傲慢さを痛感します。それから、非常に映像が美しいです。

いろんな場面がはしょられているので、いつのまに村人と仲良くなったのかわからない部分があったりしますが...いつ仲良くなったの....。 

 

4.僕の帰る場所


映画『僕の帰る場所』予告編

ベトナムから日本に移住している家族のドキュメンタリーです。

こちらも、集団の間の文化の差異と経済その他の支援とは何かを迫られる作品です。あと予告でもわかると思うのですが、子供の泣き声や怒る声もそのままに入っているので、苦手な方は飛ばし飛ばし観るほうがよいのかもしれません。

ベトナムの町の雰囲気、景色も音もありのままに入っていて美しいなと思いました。お母さんお父さんの葛藤が実に苦しいです...

 

5.ガール

youtu.be

緊張感が絶えない映画でした。重い。つらい。踊っているシーンは本当にきれいなんですけどね...

ビクトール・ポルスターとても美しいです...

 

 

6.ビューティフル・ボーイ


映画『ビューティフル・ボーイ』海外版ロング予告編

観終わるまで実話と知りませんでした。

薬物依存をテーマにした映画はいくつか観てきましたが(レクイエム・フォー・ドリームとか太陽の目覚めとか)これがいちばんリアリティも希望もあったかなぁと思います。『君の名前で僕を呼んで』は結局観ないままになってしまっているのですが、同じ役者さんで非常に美しい(顔が)。

 

7.ブラインド・スポッティング

youtu.be

全体的にノリがめっちゃいいです。気づいたらラップになってるし。

白人と黒人のアイデンティティのなかで、オークランドは黒人のコミュニティの中に白人が受け入れられるかのように同居しているようにみえます。スラングなんかもそう、でもその中には現状の文化より先に根強い差別の歴史があることを感じます。町の独特さは全然わからないんですけどね....

これも緊張感が抜けずに観られる映画です。若干流血シーンが多めなので痛いのが苦手な方はご注意ください。

 

8.ヒンディーミディアム


『ヒンディー・ミディアム』予告編

インド映画です。

貧富だけでなく、それに伴う言語や暮らし、教育の格差をテーマにしていて、テーマそのものは重いのですが、総じて明るい調子で進みます。あとインド映画なので、多少ながら歌って踊ります(偏見)(あながち間違いではない)音楽もポップスばかりではなくて大変よい。

久々に、手放しの王道ハッピーエンドでよかったなあと思えた映画でした...

 

9.新聞記者


松坂桃李&シム・ウンギョンW主演! 前代未聞のサスペンス・エンタテインメント/映画『新聞記者』予告編

全体的に低予算で作られている印象のある映画でした(コレッ

シム・ウンギョン演技うまい...松坂はこの映画においては爽やかすぎる気がしました(もっと陰気な人にやってほしかった)

 

10.エクス・リブリス ニューヨーク公共図書館


『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』予告編

3時間半に及ぶ長大なドキュメンタリーですが、自分は全然飽きずに観れました。

リチャード・ドーキンスの講演から始まる、ほとんど全編を通してBGMのない映画です。日本では高い能力を有しながら待遇のよくないことで知られる図書館司書の多岐にわたる仕事、図書館という巨大な組織で絶えず更新される図書館としての機能には驚かされます。

分館では教育を十分に受けられない市民へのネット利用に関する支援や小児の指導(しかも手厚い)まで、“公共”の名を冠するにふさわしい工夫がそこかしこにみえます。

たびたび会議が開かれるのですが、そこで議題に挙がる内容についても、公的組織でなくとも参考になる(というか耳が痛い)内容が多いのではないでしょうか。

 

長いんですけどイチオシです....この10作の中で、『蹴る』と1、2を争うオススメ具合です...

 

100冊読破6周目(21-30)

1.コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか(旦部幸博)

ずっと積読していたのですが、とうとう読むことができました。

著者はもともと遺伝学・分子生物学を研究されている教授です。コーヒー好きが嵩じて、コーヒーの豆(と言われているもの)の構造、成育地の環境、果ては焙煎のメカニズムから「香り」の仕組み等、コーヒーのふしぎをどんどん暴いて(?)いきます。

自分は普段はチェーン店のコーヒーしか飲まないのですけれど、この本を読みますと久々に純喫茶に行きたくなります...(日本のコーヒー文化も独特のものだそうです)。

 

2.データ・ドリブン・エコノミー デジタルがすべての企業・産業・社会を変革する(森川博之)

データ・ドリブン・エコノミー  デジタルがすべての企業・産業・社会を変革する

データ・ドリブン・エコノミー デジタルがすべての企業・産業・社会を変革する

 

こういう本あるある夢見がちナントカカントカ5.0かなぁと思って手に取ったのですが思ったよりは地盤の堅い本でした。農業または人口減少と都市の関係に関しては特に必要な見通しだと思いました(実際に本書に書かれている実装ができるかどうかはともかく)。

オススメするというほどでもなかったんですが...。今時感は否めないです...

 

3.ケアの実践とは何か: 現象学からの質的研究アプローチ(西村ユミ 榊原哲也)

ケアの実践とは何か: 現象学からの質的研究アプローチ

ケアの実践とは何か: 現象学からの質的研究アプローチ

 

現象学から遠ざかってなんなら苦手意識が生じてきたような気がするのでリハビリを、と思い読みました。

移植医療の際の母親の葛藤についてなど、臨床ではあることかもしれないけれどなかなか深く立ち入ったりそれを他の人が広く知るようになったりということがない出来事について、看護者の立場から振り返るものです。死産、移植後の臓器不全など、臨床にいてもタッチしづらいというか心苦しいものを記述することは骨の折れる作業であったろうと思います...。

自分が研究やるかどうかではなく、こういう研究をやる人(またはインタビューを受ける人)がもっと尊重されればいいなあと他人事のように思ってしまいますが、他人事ではないので支援します...はい...(助力になるかどうかはともかく)

 

4.ヘーゲルを学ぶ人のために(加藤尚武 他)

ヘーゲルを学ぶ人のために

ヘーゲルを学ぶ人のために

 

精神現象学を読みたいなと思っていたので手を出しました。

ヘーゲルというと法哲学の印象が強かったのですが、この解説の中ではヘーゲルの書く文章に対する注釈が非常に多かったです。大論理学とか弟子がいっぱいつけ足していて本文はそんなに多くないで!!!!みたいなくだりが何度も出てきます。

精神現象学が若かりし日に書かれたことも自分はこれで初めて知ったのですが、内容の一部を解釈したところを読むに、ハイデガーはこの思想をよく汲んだのではないかという印象がありました。ハイデガー読んだことないのでそんなことは言えないのですが、放送大前期の科目でとった『現代の危機と哲学』、『現代フランス哲学に学ぶ』のいずれにもハイデガーは顔をだしますし、その中での実存に関する記述に似たようなものを見出しました。ちなみに認識論のくだりはさっぱりわかりませんでした(ここがわからないからといって他がわかるわけではない)。『純粋理性批判』をよくわからないまま読んだ余波がこんなところに出てしまったという無念でいっぱいです。

が、これでなんとなく心のハードルは少し下がったので、モリモリ読んでいくしかないなとも思いました...

 

5.心理学の7つの大罪ーー真の科学であるために私たちがすべきこと(クリス・チェインバーズ)

心理学の7つの大罪――真の科学であるために私たちがすべきこと

心理学の7つの大罪――真の科学であるために私たちがすべきこと

 

とても面白かったです。『心理学の』と表題にはありますが、決して心理学のみの問題ではたりません(著者が認知心理分野の研究者だから様相に詳しいというだけのこと)。学術分野の人には非常に耳が痛く、また頷ける(または忌避感が出る?)話であろうし、一般の人でも読めると思います。研究手法や、査読の過程の独特の用語や文化は少しわかりづらいですが。

少なくとも査読がどういうものかとか、研究デザインの組み方がどういうものかはふんわりわかるかと思われます。この本は不正の起こりやすさを指摘するものなのですが、不正が『発覚する』というのはある種の健全性の証でもあります(もちろんそこにも問題は山積していて、本書の中にも書かれています)。

S●AP細胞とか反ワクチン論文で散々叩かれたのが一体何かを少し垣間見ることができます。

 

6.「自由」のすきま(鷲田清一

「自由」のすきま (単行本)

「自由」のすきま (単行本)

 

相変わらずの寄稿集なんですけど、いつもわりかし説教くさいのに、たまに「あれ?これこの考え方ありなのでは?」って批判先をじっと観察している様子が伺えます(どんな感想文よ

なんとなくいつもより説教くさいです。寄稿先の問題か、要求されたテーマの問題か。

 

7.反乱する都市ー資本のアーバナイゼーションと都市の再創造(デヴィッド・ハーヴェイ

反乱する都市――資本のアーバナイゼーションと都市の再創造

反乱する都市――資本のアーバナイゼーションと都市の再創造

 

産業の変動、都市と郊外の資本の動き、不動産価格の変動、金融危機… 経済学ではおなじみの理論が都市でどのように人を動かし(いや、反対に都市の人びとがどのように経済を動かし?)、変化に影響を与えていたかを説明するのが第1部。経済予測がうまくいかない理由と、そのうしろにあった政治的な取引等々。

第2部では、実際に起こった都市のジェントリフィケーション(中産階級化・スラムの阻害)や今起こりつつある街並みの変動と住民の運動を説明します。ハーヴェイの本を2冊ほど読んで思うことですが、人間を対象とする場合の解説の規模は群衆または民族的・社会階層的特徴をもつ集団に集中しているように思われます。『資本主義の終焉』はそれなりによかったんですが。

都市社会学と経済学の視点では常に架け橋になってくれるように思いますが(前者はエスニシティに寄り過ぎ、後者は個人や集団を合理的存在だとみなし過ぎているように感じられることがあるので)、繋いですぐに得られるものがあるかと言われるとこの点においては難しかったように思います。社会学の関連書籍を読んでいるから思うことかも知れませんが。

 

8.パラレルな知性(鷲田清一

パラレルな知性 (犀の教室)

パラレルな知性 (犀の教室)

 

数冊前の『「自由」のすきま』と比較して、鋭さのあるいいテーマが選ばれていたように感じます。

こちらは東日本大震災の数ヶ月後からあちこちに寄稿された文章なので、科学コミュニケーションの重要性がそここに要求されています。専門家のみに努力を望むものではなく、ただ口をあけて知識を待つ市民に対してもリテラシーの求めている節が多かったです。

軽く読めますし、擬似科学に手を焼く人も擬似科学と科学の区別がつかない人も読んでほしい…

 

9.系統樹曼荼羅ーチェイン・ツリー・ネットワーク(三中信宏 杉山久仁彦)

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

 

名前と表紙のインパクトが強すぎて、数年前に心の積ん読にした本です。リンネ以前にも以降にも、生物学以外にも観念としての系統樹が存在したことを解説してくれます。

人間はマインドマップを作るのが好きで、それによって概念を整理することができるのだ...と。家系図、学問の系統樹、はてはマンガのキャラクターの分類まで...。

 

10.身体をめぐるレッスン<4> 交錯する身体(市野川容孝 他)

身体をめぐるレッスン〈4〉 交錯する身体

身体をめぐるレッスン〈4〉 交錯する身体

 

自分の既読の中では『知の生態学的転回』のシリーズがまことによかったのでなんとも言えない気持ちになったりならなかったりするのですが...。

序盤には、家庭内暴力の構造とその緩和のための方策について。

中盤に、昨今とくに目立ってきている重度身体障碍者支援の溝の部分にあたるところのお話がありました。障碍者支援の、無償ボランティアー有償ボランティア、障碍者の自立を妨げる要因とスティグマについて。対談形式になる章が多いので、読みやすさと理解のしやすさでいえば高評価であると思います。ただ、自分はなんとなく現場が思い浮かぶので了解可能な部分が多かったものの、実情をそこまで知らない人はどうなんだろうと少し思います。

個人的にとてもよかったのは、生殖補助医療による自分のルーツ探しの動機とその実態、それから(死体・生体両方)臓器移植の同意・非同意の実際。特に後者は絆の破綻した家族とそうでない家族の差が見えて、読んでいてつらいものがありました。特に生体移植においては、子がレシピエントとなる場合に母親がドナーとなる場合が比較的多いようで、なんともいえない気持ちになります。自分もそういう場面に出くわしたことがあります。傷のない体にリスクを負うことに前向きになれればもちろんそれに越したことはないのですが、複雑な家庭環境を背景として無言の圧力がかかるケースも多いと。そしてその葛藤を解消するために割ける時間は多くない。以前著書を読んだことがある春木繁一先生(精神科医・透析当事者)の回診の様子が書かれていました。

HIVの予防と啓発のための教育・広報の話もまあ巷間よく言われている話なので(知らなければためにはなるけれど)あえて自分から指摘することもないかなと思います。

 

雑記

前回から10日前後で10冊を読んだようです。

軽い本が多かったとはいえ、試験からの解放感が大きかったです...。

2019年度前期授業評・結果と院試準備

授業評と結果

今期の目玉は情報系科目が多かったことです。前年度中に登録しましたので、まだ前職に在職するつもりだったのもあり、ゆとりのある科目編成にできませんでした。

 

情報コースー計算科学関連科目

計算の科学と手引き('19)ーB

エキスパートプラン『計算機科学の基礎』を意識して選択した科目です。必修です。

導入科目なのですが結構なボリュームですし、試験もほどほどに難しいです(私にとっては)。あと持ち込み禁止。前年度までの「計算事始め('13)」の後継科目です。新しい年度で出題傾向がわからない可能性はありましたが、教科書の内容がほぼ同じであろうことから過去問も計算事始めのものを使ってぼちぼち対策しました。実際よく似ていたかなという印象があります。

 

授業概要はシラバス通りですが、アルゴリズムとプログラミングの基礎になる部分を履修します。自分が受けた中では、「デジタル情報と符号理論('13)」(現在は「情報理論とデジタル表現('19)」が後継科目です)にもっとも近かったです。符号理論よりももっと「数」と「計算」の性質に寄せた感じです。教科書としてよくできているなあという印象でした。ちょうどPythonをやり始めたところでしたので、双方に理解が深まりました。

 

コンピュータの動作と管理('17)ーC

これもエキスパートプラン『計算機科学の基礎』の必修科目です。が、この科目にかける時間はあまりありませんでした(入門微積自然言語処理、計算の科学に吸われた)

これは!!わたしには難しかったです!!!

あと試験会場で今期試験を受けていたのは私ひとりでした…孤独…衝撃のひとり…

コンピュータに関する信号について物理またはハード面から学ぶ科目です。

仮想OSとか、繁忙待機とか今までどうなっているかわからなかったものの「なんかメリットはあるんだろうな…」と思っていた諸々の中身がわかる科目でしたがいかんせんまったく慣れ親しんだことのない知識なので、勉強に苦労しました。情報コースの専門科目で、持ち込みは禁止です。

 

自然言語処理('19)ーB

最初は『計算機科学の基礎』の選択科目のために取ろうとしたのですが、もともと言語学やプログラミングに興味があったこともありこの科目は力を入れたいと思ってとりました。

 

試験は結構エグかったです(もちろんやりこめばいくらでも対策はできます)。もちろん持ち込み禁止でしたし、19年度に刷新された科目なので特に参考にするものもありませんでした(15年度の過去問は意識しましたが)。また、言語学の基礎を理解できていればまだしも、自主的に本を何冊か読んで輪郭を独学した以外は放送大の科目『新しい言語学』くらいしか頼りになる授業がありませんでした。徒手空拳のようなものでしたが、これも時間を割いて勉強したこともありなんとか単位は取れました…

 

これとは別に趣味の範囲でオライリーの『入門自然言語処理』を使ってPythonで遊び始めていたので、『計算の科学と手引き』同様に相補的な学びとなりました。

それから、自然言語処理を本格的に学ぶにあたりこの教科書はかなりいい参考本になるとのコメントをいただきました(他大学の自主ゼミで使われていたようです)。敷居は高いですがやる意義は大きいと思います。

 

人文コース科目

新しい言語学('18)ーA◯

今回2科目しかなかった持ち込み可能科目です…!

特に目的があったわけではなく、気になる科目が試験日程に合致していたのでとりました。結果論ではありますが、自然言語処理の素地になる勉強をたくさんできてよかったです。

言語学といっても心理言語(認知言語)的な側面も多く、非常にバランスのとれた教科書であったと思います。

 

現代フランス哲学に学ぶ('17)ーB

持ち込み可、その②です。哲学は完全に趣味でとっています。

特に、以前よりベルクソンメルロ=ポンティにもともと深い興味があったのでいい勉強になりました。現代の思想をベルクソンとの対比によって説明していくのですが、自分がドゥルーズデリダフッサールメルロ=ポンティに少し触れたときに感じた「ベルクソンが源流では?」という疑問に合致していてとても学びやすかった印象があります。あとハイデガーをもう少しやるべきという気持ちになりました。

また、日本の哲学には詳しくないのですが、西田幾多郎との対比もありました。単位をとったとて何を理解したとも言えませんが楽しいです。

 

現代の危機と哲学('18)ーB

個人的には結構クセが強いなと感じた教科書でしたが、ニーチェフッサールで問題提起をしたあとにハイデガーアーレントを出して近現代の学問の社会的状況も考察しつつ、それぞれの思想を説明します。それぞれの哲学者の時代ごとの思想的背景もよく学べるので、とっつきにくいなあと思う部分にこそよい教科書と言えましょう。

いきなり東日本大震災の話から始まるのはちょっとだけ面食らいますが、教科書としてのまとまりはよいと思います。

 

生活と福祉コース

看護管理と医療安全('18)ーA◯

さすがにこれは目を瞑っても解けるレベルでないと困る。

学位の取得のため、最低1科目は看護領域から取らないといけなかったので取りました…

 

社会保険のしくみと改革課題('16)ーC

昨年不勉強で落としてしまったのの続きです!今回は大丈夫でした。

これも看護の学位のためにとりましたが、福祉関係は(落としてしまったことからもわかるように)かなり弱いのでやり直しをできてよかったです。

 

自然と環境コース

入門微分積分('16)ーB

きいてください!!!!とりました!!!今期はとりました!!!!!!

今回の試験の中でもっとも時間をかけて(おそらくほかのすべての科目に費やした時間を上回る)勉強しました…全然わからなかったので…前の職場にいたら確実に通らないままだったと思います。試験前の1か月は少ないときで0時間、多いときで4-5時間/日くらい勉強していました。平均するとたぶん1時間くらいになると思うんですけどね...

自分は高校のとき数学でほとんど微分積分をやっていない(というか白目を剥いていたから覚えていない)ので、大学初年次程度までの数学となると逆立ちしてもできないのです。『数学ガールの秘密ノート』の『微分』と『積分』を読んで、心的ハードルを下げて臨みました…。放送授業を聞けばよかったのですが、生活が一変したのもあって気ぜわしく、結局そんな時間を取れませんでした(不勉強め)。

教科書をある程度読んで(わからないところにそこまでこだわらず)、演習問題のAと場合によってはBの一部くらいまで解けるように教科書であったり公式を使う練習をしていきました。なので、試験も持ち込みたいなと思うくらいでした...いや理解がないからそういうことを言ってしまうのですが...。

 

あと勉強にあたってはWeb上の公式集とかもめちゃくちゃお世話になりました。

mathtrain.jp

自分は三角比とか三角関数、指数関数対数関数から思い出さなければならなかったのでもっと基礎の基礎のサイトも参照しましたが、ここにも載っているので、あれこれ悩んでしまいそうであればここだけでよいと思います(難易度も書いてありますし)。

 

 

社会と産業コース

マーケティング論('17)ーD(不合格・再試験)

ほかの科目にかまけて見事に落としました。難易度としては特に難しくはいと思います(じゃあ落とすなよという話ですが...)エキスパートプラン『データサイエンス』の必須科目のためにとったので、当然来期も続けます。

 産業系なぜか苦手だな(『産業とデザイン('12)』も落としたことがあります)

法学入門('18)ーE(不合格・再試験)

これも興味本位で取った科目なんですが、完全に学習が後手に回ってしまいました。「入門」なので、法の持つ「性格」のようなものを題材にしています。慣習法、国際法、法の導入のなりゆき、等々...章のはじめのほうがイスラム法とか古い中国法(法家とかから始まる)のでウワッと思われるかもしれませんが私のように不勉強でなければ特に問題ない科目かと思われます。

 

来期の科目

情報系科目

数値の処理と数値解析('14)・データの分析と知識発見('16)

この2つはエキスパートプラン『計算機科学の基礎』と『データサイエンス』のためのものです。いずれも持ち込み可なので、ぼちぼち取り組もうと思います。試験問題をざっと見た感じも面白そうです。

『計算機科学の基礎』は上記2科目に加えて下記の『入門線形代数('19)』が通れば取得です。

『データサイエンス』に関しても、上記2科目に加えて落としてしまったマーケティング論が通れば残りは必修の『データベース('17)』のみです。今回は『入門線形代数('19)』とかぶってしまうので見送りました。

 

自然科学系科目

入門線形代数('19)

『入門微分積分('16)』と並んで、エキスパートプラン『社会数学』の必修科目です。しかしながら、『社会数学』はあの微積をできないととれないなんて数弱にとっては鬼畜やな...と思います(数学って書いてあるやろが)

線形代数微積も、プログラミングでデータ解析やりたいナ~という御仁には必修科目であることが自分の周囲のありとあらゆる人の口から発せられていたので、エキスパートプランのカリキュラムってよくできているのだろうなあと思う次第です。

 

試験問題を見ているとそこまで難しくはなさそうでしたが、試験スケジュールをカツカツにしなくてもよくなったので存分に準備して取り組みます。

あとこれのために未読の数学ガールの秘密ノートシリーズが『ベクトル』『数列』『行列(未購入)』と控えています。遊んでいこう。

 

人文系科目

経験論から言語哲学へ('16)

哲学は趣味です(真顔)。現代フランス哲学と現代の危機と哲学(ドイツ哲学系)が終わったので、イギリス経験論から英米分析哲学に至る道のりを歩もうと思います。

余談ですが、ここ2年ほどをかけて有志の『知覚の哲学入門』(ウィリアム・フィッシュ著)を読む会に参加しています。

分析哲学の理解を深める意味でも、この科目は楽しみにしていました。持ち込み可。

 

福祉系科目

社会福祉と法('16)

これで看護の学位のための科目は終了です。福祉系科目と法についてはある程度興味があったので、関連科目の中でもマシなものをと思って探しました。

試験は持ち込み可っぽいのでまったり準備をします。

 

産業・社会系科目

教育社会学概論('19)・経営情報学入門('19)

いずれも新規科目です。特に何のためということもなく、興味本位でとります。

再試験:法学入門('18)・マーケティング論('17)

ノーコメント(頑張りましょうね...)

 

面接授業

心理学実験2

昨年度取ろうとしていたのですが、私事で忙しく都合が合わなかったのでやっと取り直しです...

 

所感:前年度までの状況と較べて

病棟看護師としてフルタイム・夜勤ありの仕事をしながら教養学部全科履修生を2年かけて卒業しました。家庭と自分の都合で年度末で離職し、今年度からはクリニック・パート勤務というなんとも気の抜けた(といってはいけませんが)環境になっております。

そのため、昨年度まで謳っていた「フルタイムワーカー・放送大編入チャレンジ」は終わってしまいました。

けれど、お陰で高校のときの記憶がほとんどないような微積もとれましたし、楽しみにしていた計算機系の知らない分野にも飛び込むことができています。自分の中では大学生活も含めて相当に満足いく結果となったといえますが、仕事が楽になった分「うまくやらなければ...」というプレッシャーも相当のものでした。

それから、後述しますが、大学院全科履修生の出願用紙を本日提出してまいりました。受かっても落ちても、その様子はまた記事にしたいと思っています。

 

来期以降の見通しについて

学位・資格関連

看護(学士)・来期で条件を満たす

前年度で科目を取りきれたらよかったのですが、試験時間かぶったり単位落としたりすったもんだあったお陰で長引いてしまいました。ようやく来期で科目を取り終えます。

学位授与機構から資料を取り寄せねばならないのですが、これで学修成果のレポートを提出すると学位審査に臨めることになります。院試・大学院生活を優先する予定なのでぼちぼちですが、放送大学で準備できる要件は満たすことになりそうです。

認定心理士・来期で条件を満たす

面接授業以外の必要科目は去年のこの時期までに取り終えていたのですが、面接授業のこり1つだけがなかなか受けられずここまできてしまいました。

あとは面接を受けて、提出書式の様式を埋めて提出するだけですかね...

 

放送大学エキスパート

社会数学(最短で来期)

めっちゃうれしいことに今期微分積分その他の科目が通ったので、来期の『入門線形代数('19)』が終われば申請可能です。

計算機科学の基礎(最短で来期)

こちらも来期がうまくいけばコンプリートです。『入門線形代数('19)』、『数値の処理と数値解析('14)』『データの分析と知識発見('16)』と科目が多いし数学ちょっとありますが、後ろ2科目は持ちこみできるしガチ数学ではないしなんとかなるやろと高を括っております(泣きを見るぞ)。

データサイエンス(最短で来々期)

『数値の処理と数値解析('14)』『データの分析と知識発見('16)』再試『マーケティング論('17)』がそれぞれ必修科目なので、来期がんばります。

これでもまだ試験スケジュール上『データベース('17)』を受けられていないので、来年度も科目履修生で在籍が必要ですね。

 

学部で取りたい残り科目

上記スケジュール以外で残っているものは『記号論理学('14)』ですね...。

社会福祉と法('17)』、『看護管理と医療安全('18)』などと試験日程がかぶってしまいずっと取れずにいますが、1年前くらいからとりたいと思っていました。プログラミングやるにあたってちょっと理解を深めたいというのと、単純にもともと唯一掛け値なしに好きな数学系(数学か?)科目なので。どうせ来年度も半年は在籍する予定なので、履修するつもりです。

あとは『情報・メディアと法('18)』とか『メディア論('18)』も悩みどころですが今回は外しました。

 

大学院進学について

通学の看護系大学院(CNSコースとか)にしようかと思ったりはしていたのですが、一人暮らしからがらっと環境も見通しも変わってしまいました。結局、放送大学での進学がいちばん適切であろうということになりました。

コースをまたぐ研究内容なのでちょっと悩みはあったのですが、指導教員を恃みとして生活健康科学に願書を出しています。

 

院試の英語対策について

試験内容は論述メインで、辞書の持ち込み可能ながら英文の長文読解があります。が、過去問をみるに、特に難解というほどでもないです。

というわけで今期は少しだけアカデミックな英文に慣れたい気持ちがあって、4月から6月にかけてはほとんど英語と微分積分だけをやっていました。というか英語でした。

テーマ別英単語 ACADEMIC [初級]

テーマ別英単語 ACADEMIC [初級]

 
テーマ別英単語 ACADEMIC [中級] 01人文・社会科学編

テーマ別英単語 ACADEMIC [中級] 01人文・社会科学編

 

使っていたのはこれです。なんとなくやろうかなと思って、シリーズ全5冊を数年前に購入しておったのです...レベルとしてはおそらく難関私立だの国公立二次試験レベルなんですが、高校生が読むには、英文そのものよりも「内容」が結構ハードだったかなあと思います(楽しいですが)。人文・社会科学のほうになると、ラッセルとフロイトの往復書簡やらマルクスの解説やら読まされます。

このシリーズのテーマにもありますが、幅広い分野の国際的な動向を知り教養を身に着けることを目指すものなので、これといって対策という対策でもないかもしれません。自分はとにかく、あらゆる苦手意識に対して「心のハードルを下げる」を第一義としているのでその一環ともいえます。ただ、本を読むのがよほど好きな人でないとこの教材が「心のハードルを下げる」ことにつながるとは思えません。もう既にある程度すらすら読める方なら、おまけ程度に読むのはいいかもしれません。リスニングCDもついています。

ちなみに私はこの教材と英単語アプリだけをやって、TOEICで惨敗しました。

院試には語学試験の結果は必要でないので本当に景気づけ程度ではあったんですけど...英語...

 

志望理由書・研究計画書・院試

ぶっちゃけ英語なんておまけのようなものなので、願書提出時に出すタイトル通りの「志望理由書・研究計画書」のほうが200倍くらい大事だと思います。この辺りは普通の大学院と一緒ですね。

研究室を選ぶように指導教員を選択することはできません(希望はできますが)。

なので、専任教員のうち自分がやりたい研究内容の範囲をカバーしていそうな方を指名するようなかたちになります。希望した教員に指導いただけるとも限りませんし、客員教員になることもあるようです。ちなみにネット検索すると、客員教員からほとんど研究を放置されてしまったような悲惨な結果も見ました(こわい)

 

詳細を書くほどでもないのですが、自分は自然言語処理に興味があるので看護分野に対して応用がききそうな内容分析をするつもりでおります。

筆記試験が10月(これは地方ごとに1つ会場あったかな)、それをクリアすれば11月に放送大本部で面接を受けることができます。

 

院試ガイダンス

行けるものは行っておこう、ということで6月中旬くらいに行ってまいりました。事前登録が必要ですが、なしでも行けたかも知れません(資料の数とか聞きたい内容が申し込めるくらい?)

残念ながら生活健康科学の専任教員の話は聞けませんでしたが、大まかな雰囲気はつかめます。

臨床心理学プログラムだけは完全に臨床心理士取得のためのコースなので、詳しい説明があります(倍率もめちゃくちゃ高いし、学修スケジュールも超ハードです...)それでも社会人卒業生がいるのは素直にすごいなあと思いました。

ガイダンスでいわれるのは、募集要項に書いてある内容+一般的なことばかりなので、必要なければ行かなくてもいいかなという印象ではありました。

「研究計画書だいじだよ!!」はここで言われたことですが。

 

研究生活に向けて

そういうわけで、これまでもやんわりと統計科目や社会調査・心理学研究等の科目をぼちぼちとってきたのですが、本格的にやりたいことに向けて動く必要がでてきました。

こういうことはフルタイムワーク・学部科目の履修と並行して進めるのはかなり厳しい印象があります。前職を辞することで心理的な負担は相当にありましたが、労働環境がめちゃくちゃよくなったので体調を気にすることなく好きなことに励めるのはまことにありがたいことです。

 

院生生活は正直送ってみないとわからない(そしてなにより合格しないといけない)ので、確定したことがあればまとめて記事にしようと思っています。

 

では、2019年度1学期試験お疲れさまでした。2学期もよろしくお願いします。