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毒素感傷文

どうしようもなく感銘を受けてしまう日々のあれこれについて。

100冊読破(51-60)

1.物質と意識 脳科学人工知能心の哲学(ポール・チャーチランド

 

物質と意識(原書第3版)  脳科学・人工知能と心の哲学

物質と意識(原書第3版) 脳科学・人工知能と心の哲学

 

 前半は心の哲学の去就について。つまり心についてどの立場から見るとどのように説明され得るか、という学説の分類に徹している感じです。意味論、方法論、認識論について各種の言説を展開して説明する。ちなみに素養のない人間には相当厳しかったです。

 

後半には認知神経科学とか神経生理学的な話になるので、メルロポンティの知覚の現象学とかにちょっと近くなります。事実引用もあったようななかったような。

けど心の哲学と言われる中の、特にハードプロブレムの部分には突っ込まなかったというか、最後の最後で自分の求めている分野への展望がちらりと示されたにすぎないというか。哲学と科学ではアプローチ方法があまりに異なるので、それを接続せんがために書かれたものという印象を受けました。

 

 

2.インフォメーション-情報技術の人類史(ジェイムズ・グリック)

 

インフォメーション―情報技術の人類史

インフォメーション―情報技術の人類史

 

 

むちゃくちゃ分厚い本だったんですが中だるみすることなく読めました 楽しかったです。

なにをもって『情報』とするかの定義からはじまり、情報の発祥とその伝達方法の歴史、暗号化や数学的な記号論の展開を経て現代の情報処理技術の説明に向かうのですが、エニグマの説明とかアラン・チューリングの話が出てくると本当に滾ります 面白かったです

 

 

3.正直シグナルー非言語コミュニケーションの科学(アレックス・ペントラン)

 

正直シグナル―― 非言語コミュニケーションの科学

正直シグナル―― 非言語コミュニケーションの科学

 

 これも面白かったです。どちらかというとコミュニケーションが仕事のメインではない人にこそ読んでほしい本。ちゃちなモテテク本よりずっと役に立つと思います(ひどい)。

 

 

 

4.虐殺器官伊藤計劃

 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

著者の死後にSF大賞を受賞したことで一躍有名になった同書ですが未読だったため読みました。洋画みたいな造りなんですが、スパイものというより国家の謀とかそういう意味あいが強くてどうしても攻殻機動隊を思いだざるを得ませんでした。荒っぽい造りですが好きです。

 

 

 

5.虚無感について-心理学と哲学への挑戦(V.E.フランクル

 

虚無感について  -心理学と哲学への挑戦-

虚無感について -心理学と哲学への挑戦-

 

この人の本はかの有名な『夜と霧』しか読んでいなかったので興味深く読んだのですが、経歴を実はあまり知らなかったのでたまげました。ゲシュタポに拉致される前に既に教職に就くような地位のひとやったんですね…。

近現代の若者の虚無感のありようについて、特に循環気質を挙げていたのが然もありなんという感じでした。今の大学生とかにちょっとお勧めできるような気がします。

 

 

 

6.正義論(ジョン・ロールズ

 

正義論

正義論

 

他の哲学系の本から何度もロールズの名前やこの本のタイトルが出てくるので渋々読みました。ごっつい重かったです(物理的に)。

 

最近ちょっと話題になったマイケル・サンデルの「これからの『正義』の話をしよう」を読んで哲学をやり直そうかなと思ったクチなので、結構ガツンとくるものがありました。

ベンサムとかミルのような自由論、功利主義とか完全に袂を分かつ本ですし。

経済的な自由は幾らでも法によって拘束できますが、法の正義というやつは本当に難しい。他人の身体的自由まで拘束して保障しなけらばならないものは何か、というのを延々と考えさせられます。

 

第一部では功利主義の否定と社会契約説の展開。第二部では実際の法の運用と適用例。第三部ではタイトル通り、『公正としての正義』が幸福をどのように保障するかという話。つまり真の自由を放棄してでも得られる幸福が必要だと説くのにこれだけのページ割いたんかい!という感じではあります。読み疲れました。何回スタバに通ったことか。

 

 

7.雪と珊瑚と(梨木香歩

雪と珊瑚と (角川文庫)

雪と珊瑚と (角川文庫)

 

全体的にホヤホヤした話ですが彼女らしい毒もあってよかったです。そんなにうまくいくわけないやろ感に包まれてはいますが。

 

 

 

8.意識と脳ー思考はいかにコード化されるか(スタニスラフ・ドゥアンヌ)

 

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

 

1冊目の『物質と意識』とよく似てはいますが、哲学に馴染みがない人ならば圧倒的に本書の方をお勧めします。

意識のハードプロブレムに至るプロセスは前者とそれほど差異はないのですが、大脳の構造とか知覚の仕組みについては生物系の人であれば詳しいと思うのでそこに実験を重ねて意識のブラックボックスにアクセスするという手法をとる本書の方が哲学の分類をゴリゴリ進める先の本より理解しやすかったのです。

 

 

9.肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈(黒ダライ児)

 

肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈

肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈

 

この本、装丁が『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』と似ています…

 

中身については完全にエロ・グロ・ナンセンスの芸術、どちらかというと反芸術に関する記述です。大好きな類ではあるのですが、臭いものに蓋をするのもどうかと思って読みました。

所謂美しい芸術、洗練された芸術があるからこそアナーキーなものが芸術として台頭するというところはいつも感じていましたし、美しいものだけを芸術とする風潮もなんだかなあというものがあったのでアングラカルチュアルにも触れておきたいなと思ったのですが触れたらそれは毒キノコだったみたいな読了感。

 

 

 

10.金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか(ハンス・アビング)

 

 

金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか

金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか

 

タイトルに惹かれて読んだのですがよかったです。何より、これがTSUTAYA書店のアートコーナー、つまり『アートの考え方(仮名)』『アーティストになるには(仮名)』みたいな本に紛れて置いてあったのが最高にロックでしたね…

 

芸術と経済の不安定かつ矛盾した関係について、経済学者でもありアーティストでもある著者が論を展開します。面白かったけど、無心にアーティストを目指すような人は多分これを読まないし読んだとしても結局理解できないであろうことが想像に難くなくてなんとも言えない気持ちになりましたです。