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放送大学で認定心理士と学士(看護)を取得する

認定心理士・看護の学位審査の申請を終えました。後者は書類郵送時期が指定されているので実はまだなのですが、手続きが面倒な部分は大体すべて終えたので記事を書いておこうと思います。

以下は看護学校(3年制専門学校、93単位2550時間以上の授業・実習時間をもつ)卒業者を前提として書きますが、その他で認定心理士にご興味をお持ちの方に向けても併記しようと思っています。

 

 

1.認定心理士・学士(看護)取得の動機

あんまりありません(特に後者は)。

身もふたもない表現ですが、認定心理士業務独占資格等ではありません。国家資格でもなく、特に取ったからといって特別に業務が与えられたり給与がアップするものではありません。

自分が進学するにあたり、教養の学位を取得する(大学に編入・卒業する)以外にもちょっとしたスペシャリティのようなものが欲しかったのと、具体的な指標も欲しかったのとで都合のいい資格であったといえます。看護が既に専門分野としてある以上、「教養学部」の「心理と教育コース」を卒業して、じゃあ何を学んだのか?と言われたときに簡単に説明できるものがあると便利だと思ったのです。

看護の学位はほぼ完全なるおまけです。教養学部を卒業するにあたり、大学では62単位が必要です。認定心理士に必要な単位は最低36単位で、残りをどうとるかは興味次第です。看護の学位に必要な単位を貯めるのは結構簡単なので、ついでにチャレンジしようと思いました。最初は修士(看護)を目指していたので必要なかったのですが、途中から長期目標が変わったので、折角だしとってもいいかと思い始めたのが理由のひとつです。

関連分野にあまり興味がなかったのですが、おそらく単位が取りやすいのと多少は仕事につながるような福祉系の科目を取ることにしました。結果としてはけっこう勉強になりましたし、学位もあって損はしないかと思います。

 

ちなみに、日本における3年制専門学校(または3年制短大)卒の看護師と4年制大学卒看護師では、国家資格は一緒です。病院により基本給に差を設けているところが多く、その差は平均8000円程度/月です。これに対して、私立対国公立ですと学費にかなりの差がつきます(卒業時で数百万程度)。経済的理由から私立の4年制大学に行くことを諦め、国公立の3年制専門学校を選ぶ人もいるのではないかと思われます(4年制の国公立看護学部・保健学科等に行けと言われればそれまでですが)。

学位授与機構を用いた学位申請には、全体としてこんな背景もあります。以上は与太話です。

 

2.自分のスケジュールと最短のスケジュール(年単位)

1)認定心理士

  • 自分のスケジュール:3年

1,2年目が全科履修生編入、3年目は選科履修生でした。全科履修生の間はフルタイム病棟勤務、3年目はクリニック非常勤をしながらです。1,2年目はものすごく大変でした(あまり苦にはなりませんでしたが)。

36単位の必要単位内訳のうち、35単位までは2年間で取得し、最後に残った面接ひとつだけを受けるために+1年が必要となりました。

また、卒業単位であるトータルの62単位を満たす必要がありますが、ここに関しては別の授業もたくさんとっていたので(半期9科目18単位ずつ+面接3科目3単位=75単位程度)2年間で卒業しました。看護の学位申請時には大学(学部課程)に所属していないことが必要なので、どちらにしても一旦卒業する必要がありました(後述)。

因みに、卒業時には学士(教養)を得ます。なのでこの3年間で学位は2種類とります。

 

  • 最短(予想):2年

2年の間に必要単位36単位(うち面接授業最低4科目を取る必要があります)をとり、卒業に必要な62単位を取得すればOK(認定心理士の必要単位ももちろん含まれます)です。講義型の授業はすべて1科目2単位なので、2年間半期ごとに8科目16単位ずつ取ると自動的に達成されます。半期の試験と面接のスケジュールを管理できれば十分に可能です。所属コースは、「心理と教育」コース以外だとやや超過に単位が必要となります(卒業のために所属コースから取得が必要な単位数が決まっているので)。

なので、私のようにいかなる学士も持っていない場合、4年制大学の卒業が前提になるので最低2年は確実に必要です。

詳しくはパンフレットをどうぞ。

http://ouj-dp.web-creek.com/pdf/2020_ns_tb_01.pdf

なお、パンフレットをご覧いただくとわかりますように、放送大学での単位」と「認定心理士における単位認定」が異なる場合があります(副次科目としての申請)。

 

また認定心理士は、面接授業を最低4科目受ける必要があります。1科目あたり2日間、各都道府県にある学習センターで開講されます。日程はそれぞれの授業ごとに異なりますが、2日連日or週を跨いで同じ曜日に行われることが多いようです。各都道府県でそれぞれ別の講師により担当されていますし、半期ごとに入れ替わりもあります。私の場合、心理実験科目は大学院博士後期課程〜ポスドクの方でした。心理検査のみ、実務の臨床心理士の方が来られました。

 

2)学士(看護)

  • 自分のスケジュール:1年半

全科履修生の卒業前くらいに突然授業を取り始めました。先述のように進学先が変わったことが影響していますが、いずれにしても全科履修生の在学中は学位の申請ができない(学位授与機構「新しい学士への途」参照)ので、入学当初からトバして取る理由もありませんでした。

看護の学位申請はややこしいですが、私のように「3年制、93単位以上(2550時間以上)」の専門学校卒の場合は「第2区分」に相当する場合、1年以上かけてトータル31単位(放送科目だと16科目以上)の取得が必要です。

内訳として、

①「専門科目(看護の)」1単位以上と

②「関連科目(医療とか福祉とか)」をあわせて15単位以上(≒8科目以上)

③専門・関連科目以外を15単位以上

を取る必要があります。

http://ouj-dp.web-creek.com/pdf/2019-1j.pdf

パンフレットを見るとややこしいですが、7ページ目の「学位申請条件」はあまり気にしなくても大体全部満たしていると思います。学校によっては専門・関連科目以外がもしかしたら満たせない可能性もありますが、大学で何科目か取ると大体満たせます。学位審査の書類を提出にあたって嫌でも全部手入力しなければならないので結局申請前に全部わかります。

心配であれば、卒業校で成績証明書を取り寄せるとよいでしょう。ちなみに、卒業校の取得単位が「専門科目」「関連科目」「それ以外の科目」のどこに属するかは自分で考えなければなりません。カリキュラムが多様なので致し方ないことですが、学位授与機構からも大まかなジャンルしか公表されていません。

自分の場合は編入時に成績証明書を取り寄せて放送大で単位認定したので、そのときに「大体いけるやろ」とざっと確認した程度でした。

最初の半期で5科目+1科目(認定心理士の必要単位なのでもともと持っていた)をとり、残りの1年で半期に1科目ずつとりました。試験時間がかぶっているので取れない科目が実はたくさんあります、注意が必要です。

 

  • 最短(予想):1年

選科履修生で所属すると楽ですが、「夏季集中科目履修」という方法もあるようです。後者は学習センターに出向く必要がある(つまり仕事を休まなければならない)ので、自宅では本当に集中できない方向けかなあと思います...あとは座学の試験期間に休みを取れない方向けでしょうか。しかし夏季集中科目も休む必要はあるので、同じことだと思います。おそらくこちらは、2年制看護学科卒(衛生看護科で准看など)の方が必要単位を満たすための措置だと思われます。

上述しましたが、1年でトータル31単位とればよいので、半期8科目ずつでクリアです。8科目となると試験日程も勉強もそこそこ忙しいので注意が必要です。

ただ、やってやれないことはないなというのが自分の実感です。

 

3)認定心理士と学士(看護)を同時に取る場合

  • 自分のスケジュール:3年

結局トータルでかかった時間は3年ですが、3年目は看護の学位に必要な科目は残り2科目、認定心理士に関しては残り1科目(面接授業のみ)でした。なぜずれ込むかというと、「放送科目の試験時間が被るから」です。これはしばしば起こります。なので、取りたい科目が重複していることを発見したら、優先される(必修の)科目を取ることをお勧めします。試験は半期ごとにスケジュールが変わるので、何度も被るという憂き目に遭うこともあります。面接授業は競争率が高いので、場合によってはランダムの選考になり、落ちます。

  • 最短(予想):2年

認定心理士の方が必要単位数が多いので、どちらかといえば「心理と教育」コースに所属することをお勧めします(卒業に必要な自コースの単位もとれるので)。

双方の資格に必要な単位を最初にチェックしておいて、取れるものからとり、残りの関連以外の科目にも目をむけておけば問題ないと思われます。ただし、最低でも半期ごと8科目(面接を含みますが)の単位を取らなければスケジュール通りに動くことができないので、そこそこ過密です。

 

3.実際にとった単位

1)認定心理士

基本のコンセプトは「認知心理」と「心理学研究・データ分析」です。臨床心理や発達心理にはあまり興味がなかったので(まったくなかったわけではないのですが)、それらを避ける形になりました。

基礎科目:15単位(必要最低12単位かつ必要条件・必修科目有)
  • A領域:4単位(必要単位4単位)

心理学概論(ʼ12)(必修・現在は18年度科目に後継)

教育心理学概論(ʼ14)(選択・現在は20年度科目に後継)

  • B領域:7単位(必要単位はC項目(最低4単位)と合わせて8単位、要するに4単位あればOK)

心理学研究法(ʼ14)(必修・現在は20年度科目に後継)

心理統計法(ʼ17)

身近な統計(ʼ18)(副次科目)

社会統計学入門(ʼ12)(副次科目・現在は18年度科目に後継)

ユーザ調査法(ʼ16)(副次科目・現在は20年度科目に後継)

データの分析と知識発見(’16)(副次科目・現在は20年度科目に後継)落としてしまったので申請単位として使えません

  • C領域:4単位(必要単位4単位)

心理学実験1

心理学実験2

心理学実験3

心理検査法基礎実習

 

選択科目:16単位(最低16単位、かつ5領域のうち3領域で4単位以上を含む)

認知心理学(’13)(現在は『知覚・認知心理学(ʼ19)』に後継)

錯覚の科学(ʼ14)(現在は20年度科目に後継)

  • E領域(生理心理学・比較心理学)4単位

比較認知科学(ʼ17)

認知神経科学(’12)(現在は『生理心理学(’18)』に後継)

発達心理学概論(ʼ17)(教育心理学概論はA領域で使ってしまった)

  • G領域(臨床心理学・人格心理学)2単位

人格心理学(ʼ15)

交通心理学(ʼ17)

社会心理学(’14)(現在は『社会・集団・家族心理学(ʼ20)』に後継)

 

その他の科目:6単位(任意)

音を追究する(ʼ16)

色と形を探究する(ʼ17)

危機の心理学(ʼ17)

 

で、計37単位(認定心理士基準換算)でした。

 

2)学士(看護)

あんまり看護看護した科目を取りたくなかったので社会福祉に科目を寄せました。知っている内容が多いのですが、「社会保険のしくみ」や「国際比較」、あと法律の絡む2科目は内容が充実していて面白かったです。

  • 専門科目(A群)2単位(最低1単位)

看護管理と医療安全(’18)

  • 関連科目(B群)14単位(A群と併せて最低16単位)

認知神経科学(’12)(現在は『生理心理学(’18)』に後継)

地域福祉の現状と課題(’18)

社会保険のしくみと改革課題(’16)

社会福祉実践の理論と実際(’18)

社会福祉の国際比較(’15)(現在は『社会保障の国際動向と日本の課題(’19)』に後継)

家族と高齢社会の法(’17)

社会福祉と法(’16)

 

4.申請までにかかる費用と審査料

気になるところであろうかと思われますので書いておきます。

1)認定心理士(3年次編入・卒業する場合)

放送大学への納入

授業料:1単位あたり5,500円×62(必要単位を含めて)=341,000円

全科履修生入学金:24,000円

他学校での既習単位審査料:10,000円

 

日本心理学会への納入

認定審査手数料:11,000円

認定心理士発行手数料:30,000円

 

以上を合計すると407,000円です。

半期ごとに10万あれば十分なので、時間あたりの負担はそこまで多くはありません。

 

既に学士をもっていて全科履修の編入卒(教養の学位の取得)をしない場合には、全科履修or選科(1年)履修or科目(半年)履修のいずれでもよく、最低限の授業料で済ませるならば

1単位あたり5,500円×36(必要単位)=198,000円+入学金で222,000円となるようです。心理学会の納入と併せると263,000円ですね。勿論この場合、理論上は「半年or1年で必要科目をとる」ということも可能です。

 

2)学士(看護)

「学士(教養)」、「認定心理士」をとらずに看護の学位だけとる場合の金額です。

授業料:1単位あたり5,500円×31(必要単位を含めて)=170,500円

学位授与機構での審査料:32,000円

=202,500円

 

他の科目を履修する場合には上記の授業料は他の授業料に含まれることになるので、認定心理士と学士(看護)、学士(教養)をすべて取得するために必要な最低金額は

授業料:1単位あたり5,500円×62(必要単位を含めて)=341,000円

全科履修生入学金:24,000円

他学校での既習単位審査料:10,000円

認定審査手数料:11,000円

認定心理士発行手数料:30,000円

学位授与機構での審査料:32,000円

=432,000円

 

だそうです。自分は実際にはもっと貢いでいるんですが(あれこれ授業とったので)。

 

5.注意事項

他の放送大関連記事でも書いてきたのですが、フルタイムワーカーにとって最も大変なのは、面接授業や試験日程時の勤務調整ではなかろうかと思います。

複数の科目を申し込むとそれだけ試験時間が増えますし、試験同士の重複(複数科目を同時刻に試験するため)を避けるためには綿密にスケジュールを組む必要があります。

幸いにして自分は勤務希望を(比較的)出しやすい職場でしたし、可動制の夏休みを充てて試験を受けたこともあります(最低限のスケジュールで受けようとしたら夜勤の前後に試験を受ける羽目になり泡を食いましたが)。

 

6.その他補足

学位申請も認定心理士も現在書類提出までほぼ済んでいますが、科目を取ることもさながら書類の準備が実に面倒です。専門学校時代の成績証明書であったり高校の卒業証書であったり放送大の成績証明であったり......

それから、看護の学位審査のためにはこのブログに書いた科目の履修以外にもう2点、学位授与機構へのレポート提出と小論文があります。

レポート提出は大体1万字程度で、小論文は東京ないし大阪まで出向く必要があります。

なのでこの記事の記載時点ではどちらの資格も自分は取得していません。落ちたら笑ってやってください