「なぜその分野に興味を持ったのですか?」と時々訊かれることがあるので、メモを兼ねつつリストアップすることにしました。
とくに、大量に本を読み大学で単位を取りまくるという奇怪な行動についてはその志向性と動機を不思議がられることがありました。そこで、興味を持つまでの各ルートと大きな影響を与えた本、放送大でとった科目を紹介し…ようと思ったのですが、放送大は科目が多すぎるので、「エキスパートプラン」という大学独自のコース横断カリキュラム(目的に合わせて授業をある程度体系立てて取りたい人向けのパッケージ)のみ添書きします。
時系列・経験のルート
小学生~中学生くらい
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『ソフィーの世界』
中高生~専門学校入学前くらい
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マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(規範倫理と公共哲学への興味)
専門学校在学中~勤務開始、100冊読破を始める前後まで
などの分野に興味をもちました。これについても後述します。
その他趣味で読んだもの
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リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』有名だったので読んでみたかった。意思決定理論に興味を持つきっかけに
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ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』『昨日までの世界』先頭から2作は自宅にあったので読んだ。文化の多様性とその拡散、異なる文化の他者の合理性など
ボトムアップの興味・関心
情報科学・数学
中高生から数学が苦手で、専門学生以降は統計に苦心した覚えがありました。自分が手をつけたなかではもっとも優先度が低かった領域で、興味1-2割、残りは義務感です。途中で意思決定理論に興味を持ったため、ベイズなどからモデリングに興味をもち始めています。
最終的にこんな分野に絞られていきます。
統計は実用含めて理解したかったのと、のちに行動経済学に興味を持ったから。高校数学ー大学教養レベルの数学は、単に理解したいと思いつつもやり残していたから。あと、放送大学で適した授業があったので。自然言語処理は、言語学に興味を持ったから、という流れです(後述)。
きっかけになった本は、先述の『インフォメーションー情報技術の人類史』に加えて
- アレックス・ペントランド『正直シグナル』コミュニケーションの認知科学領域
- イツァーク・ギルボア『意思決定理論入門』advanced care planningに興味があったのだが、意思決定にという言葉に惹かれて読んだら完全にベイズですありがとうございしまた
特に後者は統計の中でも認知に関わるもの、事後確率やバイアスといった分野に深く興味を持つきっかけになりました。あとはTwitterでフォローしている人がなぜか情報学系に偏っていき、その方々から影響を受けたところもあると思います。
また、コミュニケーションに関してはもともと自分が苦手としていたのもあり、哲学・言語学・情報学・社会学・心理学など多くの領域からの知識を必要としていました。
貧困に関する社会科学
仕事柄、どうしても被生活保護者はじめ社会的弱者と接することが多かったのがきっかけです。しかしそれだけでなく、僅かな経済格差でも大きく生活を変えてしまうことや、男女差別・学歴格差などにも興味がありました。これに踏み込むには社会学だけでなく経済学方面の知識も必要であると感じ、徐々に読むようになります。
などから入りました。
認知科学
病院で働いているので、安全管理に興味がありました。100%防ぐことはできないインシデントをどのように回避するか、また回避できないものの被害をどこまで小さくするか、それに関わる因子はなにか、など。
先に述べた『システムのレジリエンス』、『誰のためのデザイン?』に加えて
- アトゥール・ガワンデ『あなたはなぜチェックリストを使わないのか?』
特に認知心理には強い興味をもつことになり、放送大学入学時には教育と心理のコースに所属して認知心理関連の科目を大量にとりました。 先述に挙げた本たちから強い影響を受けています。あとは
など。細分化するならば、社会心理学、意思決定、知覚心理などといわれる領域に興味があると思います。
組織論
- スティーブン・ロビンス『組織行動のマネジメント』
- ハッチ『組織論』
など。
このころハマったが、のちに読まなくなったもの
- 建築デザイン
ジル・ドゥルーズやジャック・デリダを読んだものの(心は折れた)、深入りするというより近代哲学へと遡っていきました。表象や記号については、言語哲学や分析哲学に至ります。
- 宗教学
100冊読破をはじめてから
最初に参考にしたもの
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哲学総合本
『哲学用語図鑑』慶応義塾大学出版会『倫理学案内』など。前者は目にとまったので買ったという至極単純な動機です(パラ読みして面白そうだったからというのもありますが)。ここでめやすをつくり、自分が気になる分野・哲学者・キーワードを掘り下げることになりました。後者については哲学の本はそこそこ読みなれてからです。応用倫理と呼ばれる分野の各論に興味を持つようになり、全貌を教えてくれるような教科書的な1冊が欲しいと思い、図書館で借りてきました。
- 世界思想社のシリーズ『~~を学ぶ人のために』
今のところトータル15冊くらい読んでいますが、こちらにも大変お世話になっています。シリーズ自体は100冊規模であったと思うのですが、人文・社会科学系の分野を一般人~専門分野初学者程度に向けて解説しています。どの本も本当にクオリティが高いです。
哲学とその周辺分野への散らばり
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規範倫理への興味
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徳倫理への興味
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ルネ・デカルト『情念論』
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遠藤『情念・感情・顔 コミュニケーションのメタヒストリー』
3で興味をもって2に行き、1を別の文脈で読んだので時系列は逆。3はコミュニケーションについての本をとにかく読みたくて手にとったのだけど、およそ人間の感情の表出が哲学の文脈でどのように扱われてきたかが読めるのでそこから興味をもっていきました。しかし未だに徳という概念がよくわからないので、このカテゴリを徳倫理学というべきなのかどうか正直よくわかりません
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公共哲学への興味
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鈴木健『なめらかな社会とその敵』公共哲学かどうかはともかく(社会システムの未来みたいな感じの本なので、公共全般を扱いますが哲学というカテゴライズは間違いかも)
- ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』
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『知覚』に関する哲学に興味を持ち出す
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ヒューム『人間本性論 知性について』
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カント『純粋理性批判』→ほぼまったく以下略
- 読書会
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ダニエル・デネット『解明される意識』『心はどこにあるのか』
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ジョン・サール『MiND』
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アントニオ・ダマシオ『自己が心にやってくる』
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クリストフ・コッホ『意識を巡る冒険』
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V・S・ラマチャンドラン『脳の中の天使』
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ゲオルグ・ノルトフ『脳はいかに意識をつくるのか』
- スタニスラス・ドゥアンヌ『意識と脳ー思考はいかにしてコード化されるか』
社会科学への広がり
環境工学・都市経済・都市デザイン・建築など
- ヤン・ゲール『人間の街』→人間の都市における回遊行動の観察、都市設計
- 内藤廣『形態デザイン講義』『環境デザイン講義』『構造デザイン講義』
- 江口晋太郎『日本のシビックエコノミー―私たちが小さな経済を生み出す方法』
- 馬場 正尊『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』
都市社会学
- ニール・スミス『ジェントリフィケーションと報復都市』
- ジェイン・ジェイコブズ『アメリカ大都市の死と生』
- 東京大学出版会『メガシティ』シリーズ
教育社会学
経済学
言語学
- 三牧陽子『インターカルチュラルコミュニケーションの理論と実践』コミュニケーション行為におけるポライトネス(気配り、配慮)について
- クラウス・クリッペンドルフ『メッセージ分析の技法ー「内容分析」への招待』
- 安原和也『ことばの認知プロセスー教養としての認知言語学入門』
などでしょうか。
言語哲学からのアプローチとしては