毒素感傷文

院生生活とか、読書の感想とかその他とか

2019年映画あれこれ

1.蹴る


『蹴る』予告編| KICK - Trailer HD

予想よりずっと興味深かった映画です。

医療従事者であればこの映画に描かれていることがどれほど難しいことかよくわかると思います、ぜひ観てほしいと思いました。

神経疾患は進行性のものも多く、そういった場合に治療は対症的であり、じわじわと容赦なく体の自由が奪われていきます。医療的に必要なケアが多くなり、当然本人の負担も命に関わるものとなります。それでもスポーツをやりたい、戦いたいという気持ちはまぎれもなく選手のそれです。

それぞれの生活にも密着しますので、ADLの違いによる生活の違いやヘルパーとの関係もよくわかるかと思います。この関係は非常に複雑で、健常者(便宜上こう表現します)との関係も難しいです。詳しくは本編に出てきますのでここで述べることは避けますが、そういった微妙な心のやり取りがよく撮られています。

関連書籍として、「身体をめぐるレッスン4 交錯する身体」と「知の生態学的転回」という本を良書として挙げておきます。

身体をめぐるレッスン〈4〉 交錯する身体

身体をめぐるレッスン〈4〉 交錯する身体

 

 

 

 

知の生態学的転回2 技術: 身体を取り囲む人工環境

知の生態学的転回2 技術: 身体を取り囲む人工環境

 

 

 

 

 

2.ブラック・クランズマン


映画『ブラック・クランズマン』特報

(色々と)激しい映画でした...笑えるシーンばっかりなんですけど、厳しい人種差別とそれに抵抗する人たちの実話なので重たいテーマです。

 

3.北の果ての小さな村で


映画『北の果ての小さな村で』予告編

人類学とか興味ある人に是非観ていただきたいです...!

自分はなにかの折にこうした土地のことを調べたことがあるんですが、産業らしい産業がないので、経済面と教育・福祉をほとんど国の援助に頼っています。

しかしこれを観ると、土着の文化を理解せずして援助は為しえないことと、「経済的援助」という表面の傲慢さを痛感します。それから、非常に映像が美しいです。

いろんな場面がはしょられているので、いつのまに村人と仲良くなったのかわからない部分があったりしますが...いつ仲良くなったの....。 

 

4.僕の帰る場所


映画『僕の帰る場所』予告編

ベトナムから日本に移住している家族のドキュメンタリーです。

こちらも、集団の間の文化の差異と経済その他の支援とは何かを迫られる作品です。あと予告でもわかると思うのですが、子供の泣き声や怒る声もそのままに入っているので、苦手な方は飛ばし飛ばし観るほうがよいのかもしれません。

ベトナムの町の雰囲気、景色も音もありのままに入っていて美しいなと思いました。お母さんお父さんの葛藤が実に苦しいです...

 

5.ガール

youtu.be

緊張感が絶えない映画でした。重い。つらい。踊っているシーンは本当にきれいなんですけどね...

ビクトール・ポルスターとても美しいです...

 

 

6.ビューティフル・ボーイ


映画『ビューティフル・ボーイ』海外版ロング予告編

観終わるまで実話と知りませんでした。

薬物依存をテーマにした映画はいくつか観てきましたが(レクイエム・フォー・ドリームとか太陽の目覚めとか)これがいちばんリアリティも希望もあったかなぁと思います。『君の名前で僕を呼んで』は結局観ないままになってしまっているのですが、同じ役者さんで非常に美しい(顔が)。

 

7.ブラインド・スポッティング

youtu.be

全体的にノリがめっちゃいいです。気づいたらラップになってるし。

白人と黒人のアイデンティティのなかで、オークランドは黒人のコミュニティの中に白人が受け入れられるかのように同居しているようにみえます。スラングなんかもそう、でもその中には現状の文化より先に根強い差別の歴史があることを感じます。町の独特さは全然わからないんですけどね....

これも緊張感が抜けずに観られる映画です。若干流血シーンが多めなので痛いのが苦手な方はご注意ください。

 

8.ヒンディーミディアム


『ヒンディー・ミディアム』予告編

インド映画です。

貧富だけでなく、それに伴う言語や暮らし、教育の格差をテーマにしていて、テーマそのものは重いのですが、総じて明るい調子で進みます。あとインド映画なので、多少ながら歌って踊ります(偏見)(あながち間違いではない)音楽もポップスばかりではなくて大変よい。

久々に、手放しの王道ハッピーエンドでよかったなあと思えた映画でした...

 

9.新聞記者


松坂桃李&シム・ウンギョンW主演! 前代未聞のサスペンス・エンタテインメント/映画『新聞記者』予告編

全体的に低予算で作られている印象のある映画でした(コレッ

シム・ウンギョン演技うまい...松坂はこの映画においては爽やかすぎる気がしました(もっと陰気な人にやってほしかった)

 

10.エクス・リブリス ニューヨーク公共図書館


『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』予告編

3時間半に及ぶ長大なドキュメンタリーですが、自分は全然飽きずに観れました。

リチャード・ドーキンスの講演から始まる、ほとんど全編を通してBGMのない映画です。日本では高い能力を有しながら待遇のよくないことで知られる図書館司書の多岐にわたる仕事、図書館という巨大な組織で絶えず更新される図書館としての機能には驚かされます。

分館では教育を十分に受けられない市民へのネット利用に関する支援や小児の指導(しかも手厚い)まで、“公共”の名を冠するにふさわしい工夫がそこかしこにみえます。

たびたび会議が開かれるのですが、そこで議題に挙がる内容についても、公的組織でなくとも参考になる(というか耳が痛い)内容が多いのではないでしょうか。

 

長いんですけどイチオシです....この10作の中で、『蹴る』と1、2を争うオススメ具合です...