お待たせしました。今回はちょっと題名を変えて、「もっと気になる」あなたへのおすすめ。どんなジャンルなのか、どんな方におすすめなのかも書いていきます。あまりにも読みづらい本は基本的にいれていません。どれもこれも、読んで考えるのはどちゃくそ楽しいゆえにおすすめとなりました。哲学・思想多め。
知覚の哲学・神経科学から3冊。
1.知覚と判断の境界線:「知覚の哲学」基本と応用(源河亨)
前回フィッシュの「知覚の哲学入門」というものをご紹介したかと思いますが、こちらも読みやすくて面白いです。「心の哲学」でなくあえて知覚の哲学と書いたのは、「認識・認知」というものをピックアップすることで、とくに心の哲学の議論においては「意識」のうちの大部分を占めていることもある「他・我」のはなしを抜きにしていることが多いからです。そのため単純明快に現状認識を進めることができます。
認知科学全般や認知心理学、神経生理を一通りしたあとで「哲学はどんな議論が展開されているの?」と思ったときに読める本ですね。反対に、哲学畑でテキストと取っ組み合ってこられた方にとっては非常に斬新な1冊ではないでしょうか。
2.脳はいかに意識をつくるのか(ゲオルク・ノルトフ)
こちらは、哲学のうちでもかなり臨床に寄ってくれた哲学です。
むしろ哲学畑の人には状況が想像しづらいかもしれません(統合失調症の知覚、てんかん、脳損傷などの話がでてくるので)。臨床の人にはうってつけの1冊です!
哲学の考え方を知りたいけどハードルが高くて・・・という方には網羅的に変遷を追うことができる、しかも具体的ケースつき、という感じです。
3.意識を巡る冒険(クリストフ・コッホ)
こちらも哲学というよりは完全に科学ですね。最小意識状態とはどういうことか?どこまでが「意識」と呼べそうか?閉じ込め症候群の人たちとコミュニケーションはできるか?・・・と、臨床の人なら「あるある」内容ですが、むしろ哲学の方たちに是非手に取ってみていただきたい1冊です。
経済学から2冊
4.人にやさしい医療の経済学ー医療を市場メカニズムにゆだねてよいか(森宏一朗)
人にやさしい医療の経済学 ―医療を市場メカニズムにゆだねてよいか (現代選書24)
- 作者: 森宏一郎
- 出版社/メーカー: 信山社
- 発売日: 2013/12/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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臨床の人におすすめ1冊。薬価の問題や高齢社会の福祉について軽めの本にまとまっています。どういう問題があって、解決策としてどんなものがありそうか?何をやってはいけなさそうか?というお話ができます。医療・福祉の経済政策に興味あるけど、何読んでいいかわからない方にはこれをオススメしたいです。事前知識なしで読めます。
5.モラル・エコノミー(サミュエル・ボウルズ)
こちらはちょっと事前知識あったほうがいいです。経済の基本的な考え方をおさえたうえで、では「道徳」はほんとうに実行可能か?という話です。ちなみに答えはNoです。
経済における倫理を実践するとこういうことが起こるよ!という意味ではマイケル・サンデル「それをお金で買いますか」でもいいのですが、あれはお勧めしなくてもご興味がある方は皆さん読まれるのではないかと思いまして、こっちにしました。こちらの方が経済の本として特化しています。
哲学・思想から3冊
6.デリダ 脱構築と正義(高橋克哉)
事前知識はもしかしたらなくても読めるかもしれませんが、デリダが大好きなことが条件に挙がるかもしれません。ジャック・デリダという風変わりな哲学者について、その生い立ちと思想の原点、実際の議論の内容をまとめた本です。デリダのテクストはかなり難解だと言われていますが、de-constructionの概念、差異と差延、発話と言語行為などなどデリダならではの考え方が整理されているので「デリダ勧められて読んだけどちんぷんかんぷんでした!」という諸氏におすすめです。そんなやついるのかと思うでしょう?私です。
7.「いき」の構造(九鬼周造)
というわけで大陸哲学をやったあとに九鬼です!いやーなんだこれはこんなの哲学でいいのか、みたいに思うくらいです。街場の哲学、考えることを純粋に楽しみたいときにこういう本を読んでおくと面白いと思います。ファッションや文化が好きな人、アングラカルチャーが好きな人、哲学なんて読んだことない人、ガチガチの分析哲学やっている人、いろんな人に読んでみていただきたいです。ぺらいです。
8.重力と恩寵(シモーヌ・ヴェイユ)
こちらも完全な思想ですね。ヴェイユは19世紀初頭の思想家で、若くして亡くなりました。その生涯をつらぬいて神経性の食欲不振があり、常に虚弱に悩まされていたようです。彼女の言葉は瑞々しくて非常によろしい。自分はこのくだりでちょっと笑いました。
頭痛に襲われて痛みがひどくなる途上で、ただしいまだ最悪の状態には達していないときに、だれかの額のきっかりおなじ箇所を殴って、その人を苦しめてやりたいという烈しい願望をつのらせたことがあるのを、忘れてはならない。ーシモーヌ・ヴェイユ「重力と恩寵」
歴史もの
9.微生物の狩人(ポール・ド・クライフ)
生物系の人だと面白いかもしれません。小学校~高校で理科が嫌いでなければ楽しいと思いますし、嫌いだったとしても「人」を中心に読めるので面白がれると期待しています。本書は微生物の発見から感染症との戦い、最初の抗生物質の開発までにかかわった「ひと」の業績と、実際にどのようにそれに携わったかを描いていきます。物語調で書かれていないので、専門書はちょっとキツいけど、という方におすすめです。
都市計画・ランドスケープ
10.メガシティシリーズ(村松伸 他)
最後の最後に「それ1冊とちゃうやんけ!」とかいってはいけない。これはもう本当に本当に面白いですが、かなり広範な分野を扱うのでガチ専門書です、むしろめっちゃ読みやすい専門書と思っていただければいいかなと思います。
メガシティの定義は人口1000万人以上の都市なのですが、世界に点在する「都市」の特徴、成り立ち、経済構造などを横断的にみます。環境問題も貧困についても当然あげられます。このあたりが1-3巻。4巻以降では、ジャカルタで実際に都市開発を行ったグループのことを取沙汰します。まあなんだ、何が好きな人にオススメかといわれると私もよくわからないのですが、こんな記事を最後まで読んでしまうような人にはオススメできるかもしれません。
では次回の100冊までごきげんよう。