毒素感傷文

どうしようもなく感銘を受けてしまう日々のあれこれについて。

100冊読破 4周目(61-70)

今回はシリーズものばかり読んでいたので、まとめて書いていこうかなあと思います。

 

ミネルヴァ書房「講座ケアー新たな人間-社会像に向けて」シリーズ全4冊

1冊目の、「ケアとは何だろうか」だけ読んでいません(すみません)

1.ケアとコミュニティ:福祉・地域・まちづくり(大橋謙策) 

自殺、介護の抱える構造上の問題と機能上の問題、在宅での育児・介護・看取りその他諸々、人口統計上の問題も扱うし地域活性の問題も扱うので福祉の運営までをカバーしています。これのゆるいバージョンとして「日本のシビックエコノミー」「エリアリノベーション」があるか。元熊本県知事が記載しているページなんかもありました。福祉に関する諸問題を地域特徴も含めて取り上げたような感じです。

 

2.ケアと人間:心理・教育・宗教(西平直)

介護とか生死病死というよりは教育と死にスポットライトのあたった巻でした。共感が不可能であった時にケアが発生するという話が結構よかったです(納得はいく)これが一番、現場のケアワーカーや学生が実際に生身の人間と接するときに必要となる本のような気がします。

 

3.ケアと健康:社会・地域・病い(近藤克則) 

シリーズの中でこれが一番好きでした。分野としては社会疫学とか公衆衛生にあたるのでしょうが、公衆衛生の視点に欠けがちなのは経済的な側面と地理的な要素かなあといつも思います。いや欠けてはいないのでしょうが、あまり重視されていないというか。個人や集団単位での健康のために必要な要素って単なる医療のインフラや個人の収入だけでなく、個人の環境・遺伝的背景を加味したり都市のアクセシビリティや行動を測定してみるといいよっていう内容です これ1冊で相当楽しめます。

 

そういえばこのシリーズを読んでいたとき、特に生産年齢人口以降のNPO参与がかなり大事だなあと思わされたのですが、放送大学は市民教育に力を入れているのでそういうところやろうなあと思います(彼らに問題解決能力やニーズの発見ができれば話はとてもはやい)

移民問題とか人口減少の解決には必要と思われる、文化的な多様性の受容というのはアッパークラスのひとにぎりの人間の意志決定や選好による問題というより、むしろ地方や既に産業から離れた生活者の能力にかかっているとよく思います。救われる集団でなく自己修復できる組織になれば強い。人間は働く以前に住んだり食べたりコミュニティを築いたりして、その中で病んだり死んだり生まれたりするわけなので。

 

4.物語の哲学(野家啓一

物語の哲学 (岩波現代文庫)

物語の哲学 (岩波現代文庫)

 

物語り論の観点からは、世界は事物thingの総体ではなく、出来事eventのネットワークである。ー野家啓一

 

事実(実体)概念としての「物語」についてなら、その内容について「真/偽」、「善い/悪い」あるいは「事実/フィクション」といった二分法的な価値評価も可能であろうが、方法概念としての「物語り」に対してそうしたカテゴリーを適用するのは、単なるカテゴリー・ミステイクにすぎない。「物語り」について言えるのは、他の方法概念と対比しての「優/劣」のみである。そして方法としての優劣は、個別領域におけるその成果に即して争われねばならない。

(中略)方法としての物語り論は、空疎な倫理的裁断によってではなく、まさにこのような現場における具体的試行の中でこそ、その真価を問われるべきなのである。ー野家啓一

 

第1部では哲学でルソー、ヴォルテールヘーゲルを中心に「歴史哲学のおわらなさ」を、第2部では柳田國男を主題にしながら「物語の主体」について(のちにフッサールメルロ=ポンティも巻き込み現象学を取り込む)、第3部ではおなじみ分析哲学を援用しながらナラティブの可能性を説きます。「言語行為の現象学」を読んだときにはまだそれほど分析哲学や科学哲学に興味を示していなかったころなんですが、ここで言語哲学分析哲学の流れを緩やかに無理なく「物語り」という現象に結びつけたことに大きな功績があると思います。カルチュラル・スタディーズだと時代と共に消えそう。ヴィトゲンシュタインを読んでもやもやきていたのがちょっと解消されたのと、フッサールを理解するにはもうちょい数学・物理の基礎的な知識が必要だったのだと気づいたのが収穫です(遅い

 

東京大学出版会「メガシティ」シリーズ全6冊(村松伸

5.1 メガシティとサステイナビリティ

メガシティ1 メガシティとサステイナビリティ

メガシティ1 メガシティとサステイナビリティ

 

1巻なので導入という感じですが、都市の定義とメガシティの定義、そのエネルギー消費や特有の社会構造、経済と消費のシステムの簡単な紹介があります。それぞれの都市の歴史もちょっとだけ書かれています。都市社会を論ずるに自然環境、住環境、経済の活性と福祉の充実は欠かせない要素やと書かれているのですが、都市間でこれを共通の指標で測定する方法がなかったっていうのがちょっと驚きでした たしかに国を超えるとないのかもしれない。

 

6.2 メガシティの進化と多様性

メガシティ2 メガシティの進化と多様性

メガシティ2 メガシティの進化と多様性

 

都市の史学編という感じです。都市の規模を横断的に測定する。歴史についてのかんたんなまとめも付録についています。メガシティの定義は人口1000万人以上となってはいるものの、人種の多様性が頭打ちになるのが400万人くらいで、100-400万人くらいの都市がそれぞれ近傍にどれくらい発展しているかによっても影響しそうっていうのは面白かったです というか都市の比較って楽しいです。日本史、世界史問わず歴史が好きな方ならここから入るとかなり楽しいと思います。

 

7.3 歴史に刻印されたメガシティ

メガシティ3 歴史に刻印されたメガシティ

メガシティ3 歴史に刻印されたメガシティ

 

ジャカルタDKIについての歴史的考察。つまりジャカルタという圏が今のような巨大都市になるのにどのような経緯があったかという感じですね…2巻のうち、ジャカルタに限って経済活動や政治的動向を500年ほど追います。

 

8.4 新興国の経済発展とメガシティ

ジャカルタに特有の経済の構造と、環境問題が経済発展によって本当に解決できるのかという話が出てくる。3巻もそうでしたが完全にジャカルタ都市圏を(3巻は歴史中心に)解読する本です。マイクロエコノミクス、マイクロファイナンスを支援しようみたいな話になっていました

 

9.5 スプロール化するメガシティ

メガシティ5 スプロール化するメガシティ

メガシティ5 スプロール化するメガシティ

 

これを最初に手に取ったのですが、ジャカルタDKIについてそのランドスケープの構成を分析したものです。緻密に経済や熱環境、住民の構成分析などなどあって充実の一冊でした。最後には都市開発モデルを提示しますが気候が体感できないこともありちょっと想像つかない。都市の排水や湿度・熱のコントロールを植生に合わせて行うというの、なかなか面白かったです。都市の一部を郊外化するという感じ

 

10.6 高密度化するメガシティ 

メガシティ6 高密度化するメガシティ

メガシティ6 高密度化するメガシティ

 

こっちはスラムの経済発展と環境問題を実際にどのように解決するか、プロジェクトの一部もまじえて解説していきます。スラム化を免れない構造を「消す」のではなく、もとあるものを利用してうまく彼らの幸福度に還元できないかという試みですね。こちらは建築系の方には是非読んでいただきたいなあと思うなどしました