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毒素感傷文

どうしようもなく感銘を受けてしまう日々のあれこれについて。

映画感想『ネオン・デーモン』『ロブスター』

ネオン・デーモン


映画『ネオン・デーモン』予告編

 

監督とか役者とか演出が誰かとかわたくしあんまり覚えることができないですしネタバレも勿論しません。なんというかアングラカルチャー系の映画ですが、好きでした。60席しかない映画館の、10席くらいしか埋まらない中でみましたよ。

 

全編通して、なんというかシュルレアリスム的世界観があって自分はとっても好きでした。音楽もストーリーも必要最小限しかない、物語というよりは写真/絵画のような映画。

 

映像の美しさ・人間の美しさはかなり近接距離のものですが、「ムード」「空間」の演出がものすごくいい。暗闇の中で金粉を少女のうなじに塗り付けるシーンとか、ショーでウォーキングするシーンとか。

 

似ているなあと少し思ったのは、邦画の『ヘルタースケルター』ですかね。でもあちらは人情や心性みたいなものによりウェットに肉薄しようとしていたのに対して、こちらはあくまで構造美とかを追求したような。ヘルタースケルターは良くも悪くも猥雑な感じで、俗悪でかわいらしいんですよね。こっちはもっとヴィヴィッドな感じ。

個人的には最後の撮影シーンがとても好きでした。あとエンドロールの、肌にスパンコールを散らしていく撮影。

写真を撮る人なら、それも人間を撮る人なら楽しみがわかるような気がします。

万人にはまったくお勧めできない映画ではありますが、私は結構好きでした。

 

 

ロブスター


映画『ロブスター』予告編

 

人間は必ず誰かとつがいでいなければならないのだろうか。そうでなければ、必ずひとりでいなければならないのだろうか?・・・とか、考えさせられます。

 

予告編には皮肉で面白い、みたいなことを描かれていますがふつうにいい映画だと思います。ただ人は選ぶ。

映像がとにかく美しいです。最近の映画だからとかでなくて、人物を美しく撮るすべが全部詰まっているというか。些細なシーンでも光の当たり方とかよく考えられているのです。先述のネオン・デーモンは美がテーマなのでさもありなんといった感じなのですけれどもね。スローモーションになるシーンとかちょっと面白かったりするんですけど、映像が美しすぎてやや笑うのも忘れます。というか何度も言いますがこの映画、全然笑えないです。誰だ笑ったやつは!みたいな映画。

 

主人公が男性だからか、男性性のありかた/男性の性のありかたみたいなものも垣間見えてきます。女性性に関しては些か放置気味ですが、この映画においてはそんなことは放っておいてよいでしょう(ウーマンリブな映画はいまどき溢れすぎていて食傷気味)。

 

全編通して通底されている『恋に落ちなければならない』という脅迫は、ある種現代社会への強烈な皮肉だなあと思います。もちろんそれを指して作られているのでしょうけれど、夫婦円満でなくてはならないとかセックスをしなければならないとか、嘘があってはならないとか。嘘があっちゃいけないんですか?相手や自分を守るための嘘であっても?という疑問がすぐわいてくるようにできている。

そんな強制された状態で恋愛できるかっていうと、まあ、当然できませんわな。

 

でも問題はその先にもあって、『独りを選んだらずっと独りでいなければならない』。これ、今の社会にもわりとあるんでないかなあ、という気がします。

つまり恋愛を楽しむ人類と楽しまない人類で二分されていて、その間を自由にいったりきたりするのが非常に窮屈なのですよ。映画本編とはまったくかけ離れますが、『非モテ』『非リア』って集まりたがるじゃないですか。揶揄であっても、カップルが成就しようものなら村八分にしてみたり。それが映画本編のなかではもっと強烈なかたちで出てくるのですけど、そういった雰囲気、そういえば現代社会にもあるんじゃないかなあとふと思ったんです。

 

あと、偽装夫婦のシーンで出てくるホームセンターのシーンがすっごく好きでした。ものすごく気を遣って生活用品を購入するのですが、街に出ていくのにこれくらいの精神的負担を負って出てきている人っているんじゃないかな、という気持ちにさせられました。この気持ちはうまく言い表せないのですが、「よそに出ていてもおかしくない人間」を装いながら生活の用を足すのがめちゃくちゃハードルの高い時期が自分にはかつてあって、そのことを思い出したんです。野生動物をスーパーマーケットに連れてくるみたいな感じ。おそるおそる周囲をうかがいながら生活する。

 

それでもひとりではいられないときもある

映画を観ての感想なのでこれはなんともいえないのですが、なにせ勧めてくれたのがわたしの姉だったので色々思うところはありました。なるほど、好きそうだな、と。

 

わたしたちはいつも「社会に所属していなければならない」し、そうでなければ安定できないようにできています。映画みたいな理不尽なルールは徹底されていないだけで、真綿のように首を絞められている人たちもいるわけです。

夫婦でなくてもいい、恋人にならなくてもいい、ほんとうに気の合うひとを必要とするあいだだけ一緒にいることも可能だろうなあと日々自分は思っているので、まさにそれを皮肉のかたちで描き切ってみせた「ロブスター」は自分のなかでは名作(迷作?)となりました。