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毒素感傷文

どうしようもなく感銘を受けてしまう日々のあれこれについて。

医療・福祉従事者のひとにオススメ10冊(1-200冊のなかから)

できました!臨床のひとにおすすめ10冊。

とはいえ他のところで出した本はあえて計上していないので、結構これは臨床の人にも強くおすすめだなあという本が普通の「オススメ10冊/コアなオススメ10冊」の方に隠れています。というわけで、あえてそこからもれてもなお「普通の人にはそこまででも、臨床の人になら・・・!」というものがここにランクインしております。

 

1.「承認」の哲学ー他者に認められるとはどういうことか(藤野寛

ずっと本屋の哲学・思想の棚にあったので読もうと思っていたのですが、結構まじめな本でした。SNSとかやっているとよく見る『承認欲求』とかいうものがなんなのか、と思って手に取ったのですがどちらかといえば他者の受容とか、他人に対する寛容について考える本です。心の狭い人向け(私も心が狭い)。

 

2.「聴く」ことの力:臨床哲学試論(鷲田清一

「聴く」ことの力: 臨床哲学試論 (ちくま学芸文庫)

「聴く」ことの力: 臨床哲学試論 (ちくま学芸文庫)

 

臨床哲学については、私からは鷲田教授がもっともおすすめです。

基本的には対人援助職すべての方にうなずいて読んでいただけるかなあと思いますし、何より言葉が平易でとっつきやすいです。大学受験用の模試の問題なんかにもこの方の評論はよく出てきていました。ですので、もともと哲学に触れたことのないような自分の同業者、介護職の方が臨床哲学にふれるにあたって適切かなあと思ったりします。

 

3.死すべき定め(アトゥール・ガワンデ)

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

 

この本は読みにくくはないのですが内容が重たいです・・・。老年者のスティグマ、倫理、生活様式の再考、死への旅路をいかに整えるか、というペンディングされてきた問題を突き付けられます。実際病院で働いていると、そういうことに無頓着になってしまうなあと大変反省させられました。

これは職種を問わずぜひご一読いただきたい本のうちのひとつですね。

 

4.スティグマ社会学―烙印を押されたアイデンティティ(アーヴィング・ゴッフマン)

スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ

スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ

 

うってかわってこちらは社会学の本。哲学と臨床の両輪を回しておられる方からプレゼントとしていただきました(気にはなっていたのでいつか読もうとは思っていたのですが)。

医療者、病院で日頃働いているのでわりと社会の出来事に無頓着になったり偏見を持ちがちなので、あえて医療・臨床といった視点を一度離れてメタ的な視座を持つことも面白いだろうかと思って選びました。慢性疾患を抱えるひとなんかとは、特にこういった視点をもってかかわっていきたいものです。我々は結局身体的にも精神的にも社会的にも危機状態になってしまった相手をケア・キュアしていかなければならないので・・・

 

5.知の生態学的転回3 倫理:人類のアフォーダンス河野哲也

ご紹介する本の中で、これだけちょっと割高になっちゃいましたね。

実は全3巻あるのですが、1、2巻よりも3巻だけ読む方がいいとこどりできるかなあと思ってこうしました。「倫理」というほど生命倫理なんかの話ではなく、人間が人間に対して行為することそのものについての検討といった感じです。言葉自体はそこまで難しくはない(哲学の本よりは)。ただ、難しい本はちょっと・・・という方には最初からオススメはできないかも知れません。

 

6.貧困とはなにか―概念・言説・ポリティクス―(ルース・リスター)

貧困とはなにか―概念・言説・ポリティクス―

貧困とはなにか―概念・言説・ポリティクス―

 

スティグマ社会学に続いてオススメの1冊。

貧困、という問題に、医療や福祉に携わっているとどうしてもぶち当たります。そういうときに偏見を持ちたくないし、仕組みを理解したいなあと思って読んだ本。

難しくないですし、さわりの一手としては最良だと思います。

どちらかといえば社会福祉方面の方におすすめできる本ですが、医療従事者が読んでもまったく損のない一冊です。見識を広めたいときに是非。

 

7.いのちの生成とケアリング:ケアのケアを考える(丹木博一)

いのちの生成とケアリング: ケアのケアを考える

いのちの生成とケアリング: ケアのケアを考える

 

これは明らかにケアに携わる人向けですが、対人援助職ならば誰にでもおすすめできるかと思います。むしろ直接身体に触れることの少ない薬剤師さんとかどうでしょう。

我々ケアワーカーが日々行っていることの分析に近い本で、正直自分としては目新しいものはなかったのですが、「あんまりたくさん本読むと疲れちゃう」って人にこの一冊。気になる人名がたくさん出てくると思うので、もし気になったらその先も読んでいただけたらと思います。

 

8.魂にメスはいらない(河合隼雄谷川俊太郎

魂にメスはいらない ユング心理学講義 (講談社+α文庫)

魂にメスはいらない ユング心理学講義 (講談社+α文庫)

 

対談本ですが、心理学の大家河合先生とかの有名な詩人谷川俊太郎氏という面白い組み合わせです。真面目そうに見えて洒脱、軽妙に見えて沈着。ふたりの人間という存在に対する愛情が前面ににじみでていて、私は大好きです。

河合先生の本をどれかひとつと思ったのですが、浅学にしてこれくらいしかおすすめできるものがありませんでした。読みやすいので、心理学とか精神科系のケアが好きな方には一度読んでいただきたいかなと思います。特に児童心理学・発達心理学。

 

9.質感の科学―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―(小松英彦)

質感の科学 ―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―

質感の科学 ―知覚・認知メカニズムと分析・表現の技術―

 

この10冊の中で最もイレギュラーな本。科学というか、工学・物理学を用いて認知神経科学にアプローチする本。

認知心理学とかの本はおすすめ10選なんかでも出したのですが、この本はもう一歩進んで展開していて、たとえば「粘稠度の表現」とか「光沢の表現」みたいに、CG表現とかもどんどん取り入れていてすごく面白いです。最終章ではオノマトペの解析にも踏み込みます。

ありとあらゆる方面から質感を眺める本ですが、如何せん理系の知識がないとかなり厳しい。自分は結構四苦八苦しながら読みました。

誰にオススメ、というわけでもないのですがある意味臨床の副読本として面白いんじゃないかなという気はします。

 

10.蘇る変態(星野源

蘇える変態

蘇える変態

 

フランクルの1冊でもいれとけ!と思ったのですが「虚無感について」はもうおすすめに入っていたのでした。

というわけで、有名人かつ外側のキャラクターもある程度知られた人間の『闘病記』をひとつ、出してみたくて。これがいいとか悪いとかどうこうでなくて、孤独な人間が内面との闘いを迫られた時の葛藤があっさりと描かれていてやっぱりこのひと魅力的だなあと思ったのです。まあ、読み物として、息抜きにどうぞ。たまにはしゃっちょこばらずに。