毒素感傷文

どうしようもなく感銘を受けてしまう日々のあれこれについて。

100冊の中からオススメ5選/超絶コアなオススメ5選(101-200の中から)

200冊目は、指向性ある読書をしていた気もするので『万人へのおすすめ』がかなり探しにくかったです。なので、それぞれ気になるジャンルのある方は恐れ入りますが個々の書評を読んでいただきたいです。というわけで今回は5冊ずつ。

10冊分ごとの書評に加えて、「なぜ読んだか」「なぜおすすめか」「どういう条件・状況の人におすすめか」をもうちょっと加えた仕上がりにしております。

 

100冊の中からオススメ5選

1.ことり(小川洋子

ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)

 

多分自分から進んで読んだのではなくて、現代小説の趣味が似通っている父から渡されて読んだのでした。

小川洋子、代表作といえば『薬指の標本』とかでしょうか。ああいうエロティックな雰囲気はちっともなくて、どちらかというと『猫を抱いて象と泳ぐ』のような静謐でかなしみのある愛情深いおはなし。

それにしても小川洋子の文学にはよく『やまい』が出てくる気がします。疾病としての病気ではなく、文脈上、あるいは人生のうえでの『病み』みたいなものが、病気としてではなく、生活の一部として当然のように出てきて、誰もそれに対して不満をいったり、嘆きかなしんだり、怒ったり、しないのです。たとえば死にたいしてもあまりにも静謐で、彼女の卓越した死生観に思いをはせずにはいられなくなる。

長編ですが短くて、すぐに読めると思います。心が疲れたときにどうぞ。もっと苦しくなります(いい意味で)。

 

2.いま世界の哲学者が考えていること(岡本裕一郎)

いま世界の哲学者が考えていること

いま世界の哲学者が考えていること

 

カフェ併設の本屋に置いてあって少し気になっていたのですが、確か図書館のオススメ本にもなっていた気がして読みました。6章だてで、宗教やIT、環境問題などなど『哲学』というよりは倫理面の問題に肉薄します。ダイヤモンド社なので目当ては普段哲学に興味のないビジネスマンなのでしょうが、それくらいの軽い気持ちで手にとれますし、平易な文体で書かれているもののよくまとめられている良書だなあと思います。

特に『宗教』の項目でダニエル・C・デネットの『解明される意識』を出してきたところになんとなく自分は著者の本気を見ました・・・

 

3.愛するということ(エーリッヒ・フロム)

愛するということ

愛するということ

 

帯がなんだかフワフワしていますが、決してフワフワしていないことは彼の他の著作である『自由からの逃走』などをお読みいただければわかるかと思います。たまたま今回はテーマが『愛』なのでフワっとしていますが。本屋にずっと置いてあり、読みたいなあと思いながら読めていなかったので。

著者は社会学精神分析学・哲学を主に専門にしているので哲学の本を読みなれた人には平易でしょうが、おそらく少し読みづらいです。けどまあ、心惹かれる部分だけ読んでもまったく問題ないくらいの名著。これでフロムいける!と思って『自由からの逃走』読んだら間違いなく挫折すると思います。

愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。愛とは信念の行為であり、わずかな信念しかもっていない人は、わずかしか愛することかできない。ーエーリッヒ・フロム

なかなか厳しいでしょう?

 

4.自己が心にやってくる(アントニオ・R.ダマシオ)

自己が心にやってくる

自己が心にやってくる

 

認知神経科学の本です!というとめっちゃ堅苦しいですが、翻訳されている方が結構さくさく文章を平易にしてくれる人なので読みやすいです。ただ下記紹介文にもあるように、解剖生理の知識が少しないと厳しいかも知れません。あと用語はやっぱり医学系の専門用語が多少は出てきます。けどまあ、非医療職でも間違いなく楽しい。こういう本を読みながらだと最近のSFはかなり楽しく読める気がします。

streptococcus.hatenablog.com

ここの8冊目に詳記あります。

 

5.ハーモニー(伊藤計劃

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

 

 <emotion></emotion>形式でつづられる文章の美しさ。

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実は自分は中高生のころこうやって手書きでhtmlを書いて遊んでいたのであの文体に抵抗は全くなかったのです。カッコ書きの中の書体も見慣れたもので、文章冒頭の宣言はウェブページの『表題』みたいなもの。あと信頼性の提示ですね。htmlは言語の中でもかなり人間に寄ってくれている言語なので書きやすいですし読むだけで意味もわかりやすいです。まあそんな与太話はともかく。

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本書は『健康(な意識)』とは何か、を問う本であったなあと思います。

虐殺器官でもたびたびいわれていた、『精神が適切にメンテナンスされる』ということへの恐怖が本書では主題にもなっていて、健康でいることが義務づけられる社会で『意識をやめる』ことについての展開がある。一気に読み切りました。

そしてこの本、おそらく病床で書かれていたものだろうと思ったのですがやはりそうで、著者ご本人が肉腫の再発のなかに残されたものだったと。

この感覚は他の職のひとと共有できるかどうかわからないのですが、自分はこういう作品を読むと、人間の尊厳というか存在のありようの豊かさに、思想と思考の自由さに頭をぶん殴られたような気になります。横たわっていても、向精神薬を飲んだとしても人間には『健康』な部分があり、それは絶対的にうつくしいのだと思わされる。

SFとしてというより、本当に作品としてうつくしかった。いやーよかった。

でも若いのでやっぱり情緒に訴えかける文章かどうかいわれると微妙です(笑)。好きだから色々言えます。

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超絶コアなオススメ5選 

1.なめらかな社会とその敵鈴木健

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

 

これなんだろう。何のジャンルだろう・・・

数学者の考える社会学、みたいな感じですかね。あるいは政策論理?

読んでいてものすごく近未来感のある本でした。今はまだ実装されていませんが、多かれ少なかれ遠くない未来にこうなるような気がします。

公共性とか都市論について考え始めた当初だったので面白く読みました。

誰におすすめ?・・・誰にもちょっとおすすめはできないですね・・・面白いんですけどね。

 

2.解明される宗教 進化論的アプローチ(ダニエル・C・デネット

解明される宗教 進化論的アプローチ

解明される宗教 進化論的アプローチ

 

大本命デネットです!うえのオススメ本にも解説されている良書なのですが、如何せん取り扱いジャンルがあまりにも万人にオススメはできないので。宗教哲学の本です。

streptococcus.hatenablog.com

これの6冊目で紹介しています。

 

3.暴力の人類史(スティーブン・ピンカー

衝撃を受けすぎて書いた記事がこちら。下巻の巻き上げが凄まじかった。しんどい。

streptococcus.hatenablog.com

 

 

4.八本脚の蝶(二階堂奥歯

毒みたいな本でした。若くして自殺した女性編集者のブログをまとめたものです。

自殺したからこそ際立って価値があるのではないし、彼女の生き方がどうこうというつもりもない。ただ、本に埋もれるようなその25年(実際に埋もれていたのは20年くらいでしょうけれど)が、他の人の生きる知恵に代わってほしいなあとは思います。

というわけでこれを読んだ時の感想を置いておきます。

streptococcus.hatenablog.com

 

5.ゲーデルエッシャー、バッハーあるいは不思議の環(ダグラス・R.ホフスタッター)

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

 

これはもう誰におすすめしていいやらわかりませんが美術と音楽と数学の本です。

と思いきや「ほとんど全部数学の本」です!!!つらいッ!!!私は数学が得意じゃないんだ・・・・っ!!

ここの2冊目で紹介しています。

streptococcus.hatenablog.com

いやもうどうしてくれようかレベルで意味のわからない本でした。エッシャーとバッハをある程度知らなかったら詰んでいた。読め、とはいわないし決してオススメしないけど、読むというなら止めないし読んだ人とはお話ししたい。わけわかんないよね?理解できなかったといってくれ・・・