1.美の歴史/2.醜の歴史(ウンベルト・エーコ)
- 作者: ウンベルトエーコ,Umberto Eco,植松靖夫,川野美也子
- 出版社/メーカー: 東洋書林
- 発売日: 2005/11
- メディア: 単行本
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- 作者: ウンベルトエーコ,Umberto Eco,川野美也子
- 出版社/メーカー: 東洋書林
- 発売日: 2009/10
- メディア: 単行本
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醜の歴史を先に読んでしまってものすごく食傷したことを先にお伝えしておきます…。
『薔薇の名前』で有名な小説家であり、記号学の教授でもあったウンベルト・エーコの美学/反美学史。図録のような感じなので読破に入れるかはちょっと迷いますが圧倒的な情報量なので入れておきます。
本書はそもそも美醜において西洋的価値観を基盤にすると明言しており、それというのも他の文化を解釈するに美醜の価値観がわからんようになってしまって単に西洋からの『オリエンタリズムへの偏見あるいは羨望』が混じる可能性あるからやめとくね!っていうスタイルは好感は持てます。ただ西洋的な美醜の判断って宗教的な善悪の価値観と近代までほぼ同じなので、醜の方は読んでいてなんとなくしんどくなるのです…
文学作品、映像・絵画など多岐にわたって調べ尽くしたからこそ書けるものなのでしょうが、しかし観念論的転回は追っていると面白いのは面白いです。値段はもちろん高いです。
個人的には美の歴史のほうにある、『中世は暗い歴史だと思われがちだが絵画においては決してそうではなかった』みたいな記述がとても好き。優れた作品がたくさんうまれたのも中世ですから。時代の揺籃の時期はあるものです。
3.know(野崎まど)
Twitterで人に勧められて読みました。突然のSFラノベ。
着想は悪くないんだけど。ただ書いている本人が若く(精神的に)、メンタルの経験があまりないのだろうという印象を受けた。漫画の原作としては悪くないと思う。文章表現で知覚を扱うなら、文章力は絶対に必要。
あと単純に語彙と構想が未熟な印象を受ける。電子葉という発想や、クラス分けによる社会格差なんかは面白いけど、10年後には読めたもんじゃない気がする。アニメにできるならいいかも。
4.責任と判断(ハンナ・アーレント)
- 作者: ハンナアレント,ジェロームコーン,Hannah Arendt,Jerome Kohn,中山元
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/08/08
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アーレントといえば『人間の条件』『全体主義の起源』のイメージがあるけどそっちにあまり興味がなかったので『活動的生』に続いて本書を読んだ。成る程、倫理学と公共哲学について彼女は本当に感覚的に優れた問いを身の内に持っていたのだなあと思わざるを得ない。
凡庸な悪について、フランクルも似たような厳しい意見を持っていたのを思い出した。勿論振る舞いとしてはカントの定言命法的なものがすぐれているとしても、社会的生命としてどういうダイナミクスが可能かというのは往時の社会の条件に照らし合わせるとかなり難しいのだろうとも思う。
行動における思考の役割を考察する場合には、想像力が大きな役割を果たすことになります。この能力は、まだ起きていないこと、思考の中での行為を思い浮かべて、自分がそれを実行すると想像する能力です。…何よりも政治的な能力である行動の能力は、多数で多様な形態のもとにある人間のコミュニティのうちでしか、実現できないのです。ーハンナ・アーレント
5.意味への意志(ヴィクトール.E.フランクル)
- 作者: ヴィクトール・E.フランクル,Viktor E. Frankl,山田邦男
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2002/07
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これはフランクルの講義録。意味への意志、ほとんど『幸福への意志』とかに似たものを感じるし、『おれは絶対的に幸福になるぞ』的なやっていきを感じる。いやまあ、意味づけってそういうものだと思っているんですよ。
6.偶然性・アイロニー・連帯ーリベラル・ユートピアの可能性(リチャード・ローティ)
- 作者: リチャードローティ,Richard Rorty,斎藤純一,大川正彦,山岡龍一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/10/26
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タイトル、サブタイトルともに顔が渋くなってしまうようなものではございますがいたって真面目で面白い本でした。ちょっと引用が長くなりますが、この文章が1番本質的だと思うので。
多くの人々が二つの問いー「われわれが信じ欲していることをあなたは信じ欲しますか」という問いと、「苦しいのですね」という問いーを区別することができるようになった。…こうした問いを区別することによって、公共的な問いと私的な問い、苦痛についての問いと〔個々の〕人間の生の核心についての問いを区別することが可能になり、リベラルの領域をアイロニストの領域から区別することが可能になる。そうした区別をおこなうことによって初めて、一人の人間が同時にリベラルでありかつアイロニストであることが可能になるのである。ーリチャード・ローティ
公共哲学と実存の哲学について、溝を埋めるような本でした。難しいけど、おすすめではあります。
7.政治の美学ー権力と表象(田中純)
タイトルというかテーマがなかなか挑戦的だが、中身本当によかった。自分程度には到底追いつかない文化への理解というかセンスがある 本書自体はそれぞれの文化表象に宿る政治の解釈についての評論、という感じなんだけど身体性について-権力-結社-建築ときて結社の解釈難しかった…けど政治的なあれこれを理解したければ権力だけでなくて地下水脈を理解しなければいけないとは思う しかしこの本書いたひとの底力というか教養にはほんと脱帽するしかなかった他の本も是非読みたい…
途中民俗学も人類学も出てくるし遡っては紀元前から現代はデヴィッド・ボウイまで。
表象論やってる人には是非おすすめしたい
8.ハーモニー(伊藤計劃)
新版じゃないのが見当たらなかった(真っ白な表紙がよかった)。
虐殺器官のアンサーブック的な位置づけかもしれんけど、個人的にはこれは虐殺器官よりずっと良作です。
感情、観念、知覚のコントロールとその公共性に訴えかける本でもあるし、自己意識を問う本でもあった。最初だけはあの書式に慣れなかったけどすぐ読めるようになりました、なにせ昔書いてましたし。
いやーこの本は…オススメだ…!あとで別に記事を書きたいくらい。
9.オープンダイアローグとは何か(斎藤環)
フランクルの提唱しているロゴセラピーの、現代版かつ地域での実践という感じ。ありがたいのは読みやすいこと。これを医療職のひとが読んでどう思われるのかはきになるところではある。読みやすいけれど典拠もはっきり書いてあるし、検討が必要なところはそうと書いてあるしわりと良書なのかもしれない。が、英語論文読める人には不要かも
10.不和あるいは了解なき了解ー政治の哲学は可能か(ジャック・ランシエール)
- 作者: ジャック・ランシエール,松葉祥一,大森秀臣,藤江成夫
- 出版社/メーカー: インスクリプト
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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自分の中では完全に奇書の類だった…政治の美学、よりは政治寄りだけどそもそも政治とはなにか?っていう定義が結構文学寄りな気がするんですよね…あまり好きではなかった。うーむ。