1.病いと人-医学的人間学入門
- 作者: ヴィクトーアフォン・ヴァイツゼッカー,Viktor von Weizsacker,木村敏
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2000/03/30
- メディア: 単行本
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なにせ結構古い本なので、前半の症例についてはヒステリーがまた病名として存在した頃の名残のようなものも感じます。
なんというか、今からすれば非倫理的なようにも少し思えるのですが、当時のナラティブアプローチというのは実はこういうものかも知れないなあと思いました。なんというか、臨床『医学』哲学、という感じの本です。臨床哲学ではなく。
2.黒こげ美人
古本でちょいと買ったものなんですが岩井志麻子わりと好きなのでまあまあ良かったです。彼女にしては多少中身が軽いかというくらい。なんとなく夢野久作を思い出しました。
3.コーヒー哲学序説
これを一冊と数えるか迷ったのですが、まあKindleではそういう換算でしたしそういうことにしましょう。
後で読んだ『波紋と螺旋とフィボナッチ』を読むと寺田寅彦が出てくるのですが、なんとなく繋がりを感じられて良かったです。珈琲飲みたくなります。
4.もうすぐ絶滅するという紙の書物について
- 作者: ウンベルト・エーコ,ジャン=クロード・カリエール,工藤妙子
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2010/12/17
- メディア: 単行本
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これは…良かったです!装丁が見事なんですが、私は図書館のものを読んでしまったのでアレなことになっていました。頁の腹が青い塗料で塗られているんですよ。
読むべき本は一生かけても読めないことや、名著についてはすべて原著を読むわけでなくても私たちは内容を知っている というくだり、ちょっとだけハッとさせられました。勿論原著を読むことは楽しいことなんですが、それに固執して楽しさを見失うことはないなと思わされます。
5.ジェントリフィケーションと報復都市
ジェントリフィケーションと報復都市: 新たなる都市のフロンティア
- 作者: ニールスミス,Neil Smith,原口剛
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2014/06/04
- メディア: 単行本
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タイトルが気になったというそれだけで買った本なのですが、中身はとっても面白かったです。都市デザインや建築デザインを読むだけでは得られなかった過去-現在-未来の都市がもつ特性と都市に住む人間が選びたがる特性について実に鮮やかな手際で整えられていて、これから街に行くたびに新しい目で色んな場所を見ることができる気さえします。まあそんなことはないのですが。
これを読んで思い出したのは『ズートピア』ですね。あれは福祉とか差別問題のテーマというよりは自分にとって地方政治と都市論の映画やったのです。またズートピア観たい。
6.裸性
現代思想ちゅうことで読んでみました。いや、どちらかといえば完全にタイトルに惹かれたのですが。カフカについての話とかはカフカをほとんど読んでいないものであまりついていけなかったのですが、表題でもあるヌディタについては非常に面白かったです。
衣類脱ぐことで、本性は皮膚を剥き出しにしても見えないことやら衣類は最早皮膚の一部となっていること(この辺りの検討は鷲田清一著『てつがくを着て、まちを歩こう』『見られることの権利「顔」論』なんかが面白いと思います)が表れる、という点とてもよかったです。自分が脱ぐ理由にも似ている。
7.波紋と螺旋とフィボナッチ
これは数学とか物理の苦手な人にこそ読んで欲しいかも知れない…!ところどころお寒い話が含まれますが全容としてとても楽しいです。何より途中の小噺、というか閑話休題がよい。
動物の模様がなぜそのようなのか?というお話ですね。わりと真剣に生物学の話も出てきます。この本に寺田寅彦が引用されていたのですよー
8.セックスの人類学
これも面白かったです。文化人類学と生物学の癒合という感じ。霊長類の研究ってあまり日頃触れないので、霊長類における振る舞いがときどき人間の、それも現代日本人のそれに似ているときなんかは興味深いものがあります。
自分の性のあり方に悩んだら、ジェンダーとかかなぐり捨てて性そのものに立ち返るのもそれはそれで楽しいのかも知れない。
9.なぜふつうに食べられないのか:拒食と過食の文化人類学
これは読んでいてなかなか魂にクるものがありました。自分にもしんどい時期があったのですが、摂食障害とはあくまで表象であり抽象や障害された部位はもっと奥に潜んでいるのやなあと思わされます。そして同時に、健康なんて所詮相対的なものに過ぎず、楽に生きていけるならばそれが一番やとも思えます。それが救いだったかも知れない。
10.変容する死の文化 現代東アジアの葬送と墓制
人の死に関わる仕事をしていながら、典礼としての死にはなかなか関わる機会がないので読んでみました。なるほどアジア全域でみると、よりそれぞれの問題がくっきりと浮かび上がるので『典礼としての喪の作業の落とし穴』がわかるのが面白いです。私たちはあくまで個別のエピソードの死と向き合っているのですが、こうして社会的なエピソードを眺めるのもときには深い反省になるなあと思ったり。